地味な先生とイケメンな先生は大体裏切りキャラ
「え――皆さん、初めまして。本日よりこのイージス魔法学校、一回生3組の担任をさせて頂く『サガル・マゲドニア』と申します。気軽にサガル先生とでも呼んでください。それでは宜しくお願いします」
暫くの間教室で椅子に座って待っていると案の定、先生が教室にやって来た。
教室の中に入ってくるなり、皆に座る様に呼びかけると同時に教壇の上へと上がり、自己紹介を行った。
何と言ったら良いのだろうか、裏切りキャラ感が凄く否めない。
見た目の地味さからして、明らかに途中で裏切りを行いそうな見た目をしている。
黒色の髪にストレートヘア、少し童顔に物腰柔らかめな優しげな表情。
如何にもって言った所だな。
こう言うのもよくあるテンプレパターンだ。
何故なのかは分からないが、異世界系の学園や学校には『ほぼ必ず』と言って良い程、裏切りキャラや敵組織のスパイが隠れている事がある。
見た目イケメンで主に女子生徒に強く慕われている先生とか、メガネとかかけて地味っぽさを出している先生は大概裏切りキャラと言っても良いぐらいだ。
目の前の教壇に立っている『サガル・マゲドニア』と名乗る男も、何処となくその雰囲気を出している。
見た目は普通に落ち着いている先生に見えるが、異世界の学校の先生は見た目で判断してしまうと大概ろくな目にあわない。
基本的には警戒態勢で接している方が余っ程安全だ。
確証は無くても、先生が裏切る可能性は十分にある。
それに、裏切るタイミングも見極めなければならない。
大体は生徒同士の決闘中にこっそりデカい魔物を召喚して送り込んで両者共々ぶっ殺しにくるとか、学校に謎の組織が武力介入してきた時にその仲間として登場するとか。
または、後半から出てくる敵組織のスパイとして出てくるパターンが多い気がする。
取り敢えず、計画の支障になると判断したら裏切る裏切らない関係無しに早めに始末した方が良いだろう。
方針に横槍を入れられるのも正直な話、腹が立つ。
「それじゃ、皆に自己紹介してもらおうかな。これから一年間過ごす仲だからしっかりとしてくださいね」
(先生、思いっきり裏切りフラグが立ってますよ?)
勿論、このショウマの声は誰にも聞き届いていない。彼の心の声である為、仕方ない。
それじゃここから僕以外の自己紹介編だ。
取り敢えずこの先活躍しそうな、主役級ネームドキャラみたいな人だけ覚えておいた。
僕と同じみたいにモブっぽい人は覚える必要が無い。
誰が主人公ポジションに建てる様なキャラなのか見ているのが楽しみだ。
「初めまして『シンリ・シラヌイ』と申します。まぁ皆さんは名門貴族筆頭だと言ってますが、そんな大層な者ではありませんので。どうぞよろしく」
はい、来たよ主人公ポジションっぽいキャラ。
黒髪黒目ストレートヘア、見た目は異世界系主人公としては満点だ。
言動もかなり流暢かつ落ち着いている。
まさかとは思うが、転生者か?
勝手なバックストーリー
ブラック企業で過労の末に、転生トラックに容赦無く撥ねられて異世界に転生した件。
しかも転生したのは超名門貴族の家で目の前には超美人な姉と可愛い女の子?
みたいな感じじゃないかな?
勝手に考えただけなんだけど。
まぁ観察していくか。
「皆さん初めまして。『シャルティ・ディア』と申します。気軽にサテラとお呼びください、どうぞお見知り置きを…」
ネクスト、あの主人公っぽいシンリとか言う奴の隣にずっと座っている紫髪ポニーテールと言うヒロイン要素を詰めたかの様な女の子。
名前はシャルティ、普通に良い名前だ。
彼女は恐らく被害者となるだろう。まだ保留で構わなさそうだ。
「諸君、初めましてと言わせてもらうわ!」
(え?)
「あたしは『アタランテ・ガウエル』誇り高きガウエル家の長女よ!特別に、皆と仲良くしてあげるわ!」
う、嘘だろ?
まさか実在したと言うのか?
あの、ツンデレ系筆頭?
き、金髪ツインテールだ!
ツンデレ系キャラクターにおけるテンプレート。
金髪、ツインテール、ツンデレ。
この三つは基本的にセットになっている。
ツンデレ、それは過去の時からヒロインの性格の代表例である。
基本的には主人公に棘の様なツンツンとした態度を取っており、辛辣な言葉を放り投げてきたりする時がある。
しかし、時折見せるデレデレっぷりやそのいつものツンツンした口調からは考えられないギャップ等からいつの時も支持を集めている。
だが目の前の金髪ツインテールの女の子はその要素を明らかに詰め込んでいる。
口調、立ち振る舞い、そしてその少し鋭い目付き。
関わるのは間違いなく悪手だ。ツンデレも嫌いな訳では無いのだが、どうも僕は好きになれない。
ツンデレ好きな人には申し訳ないのだが、僕はそう言う考えを持っていると言う訳だ。
そこは承知してほしい。
そして彼女のインパクトの強い自己紹介に対して、周りの反応は非常に冷ややかだった。
先生はどんな反応をして良いのか分からず、明らかに困惑の表情を見せている。
そしてその他の僕を含めた生徒達もどう反応して良いのか分からなかった。
ただ普通に拍手を送る事すらも、誰一人として行おうとしない程だった。
まだ誰もが顔馴染みでもない、赤の他人同然である中での行動。
場は明らかな程の沈黙に包まれ、しぃーんとした雰囲気が教室を包み込んだ。
あー気まずいヤツだよこれは。
ウケを狙ってやったつもりが思いっきりスべってしまって、反応に物凄く困るヤツ。
「あ、ありがとうねアタランテ君。それじゃ、次お願いできるかな?」
先生よ、ナイスフォローだ。
そして先生よ、何で僕を指名した?
やめてくれ、僕の自己紹介なんて絶対に何のメリットもない。
確かに全員やらなくてはならない事ではあるが、それとはまた話が別だ。
間違いなく無個性過ぎる自己紹介になってしまう。
まぁそっちの方が良いんだけど。
間違って、
―――我の名はMasterMind!
とか口走らないと良いんだけど。
こんなの遅咲きの厨二病も良い所だ。
しかし先生に指名された以上、断ると言う選択肢も存在しない。
結局ショウマは少しだけ重い足取りで、教壇の上に立った。
しかし、彼の自己紹介は非常に淡白な感じであった。
別にカッコつけず、変に着飾る様な事もせずにただの1人の生徒として平凡な自己紹介を行った。
「は、は…初めまして。しょ『ショウマ・フィフティール』とも、申します。こ、これから一年間、宜しくお願いします」
あくまでも普通の自己紹介だ。
案の定、変に場が静まる様な事も誰も反応に困る様な事はなく、皆は普通にショウマにむけて拍手を送った。
全員が初対面も同然なのだ。ショウマを嫌う理由も存在していなかった。
拍手が送られた事で、ショウマはそれに応えるかの様にして数回会釈を行うと元の席に戻って行った。
「ふぅ……」
いつの時になっても、例えそれが犯罪組織の狩猟となろうと人前で堂々と話すのは昔から苦手だ。
ショウマはまるで気が抜けたかの様にして溜め息を着いた。
さて、これからの学校生活。
どんな風になっていくのやら。




