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無害である者程危険性を秘めている

 

 いつも僕は思っている。人とは何故に他者を迫害したり、弱き者がそこに居れば貶したり、軽蔑する様な言葉をかけるのだろうか。

 まぁ理由は至極単純であり、あまり難しい理由では無い事だろうと容易に推測が出来る。




 そもそも人間とは自分よりも下に誰かが居ないと安心出来ない習性がある。他者より先へ、他者より上へそれが人間の主な考えだ。



 それが故にイジメや陰湿な陰口が蔓延する事になるのだ。




 考えてみれば、クソッタレだ。何もかもがクソッタレで下らないの一言に尽きるしかない。

 邪魔であり、卑しさの塊で諸悪の根源としか言い様が無い様な、まるで社会のゴミの様な存在でしかないと感じていた。






 そんなゴミは滅ぼしてしまいたい、邪魔だから。残念な事に自分自身は別にカッコよく解決したい訳でも無かった。




 先生に言うだとか、家族に相談して解決してもらうだとか、そして被害者の前で泣きべそをかかせながら謝らせる。そして解決。




 だがこんな茶番劇の様な展開は一切望んではいなかった。



 望むのは徹底的な『死』と言う存在でしかない。一方的な痛みと恐怖と屈辱を与えてやりたい。

 それが純粋な自分自身の願いだった。




 しかし今自分が暮らしている世界はそう簡単に事が運ぶ世界では無かった。


 世の中には法律が蔓延っており、少しでも怪しい動きを見せれば自らの人生が完全崩壊する事となってしまう。







 そうなれば、こっちの人生がオシャカになってしまう。


 そうなると考えれば世の中も自分の流れになっていないとしか思えなくなっていた。





 自分の思い通りにいかないのは悲しく虚しい事だと感じていた。


 殺しても逮捕されるのが、容易に予測出来るオチであり結果であった。



 逮捕されて永遠に豚箱送りや首に縄をかけられて宙ぶらりんも、彼にとっては一番回避したい結末であった。


 今の自分が欲する物、それは単純だ。



 自らを虐げる者を骸と化させる事とこんなクソッタレな世界に永遠の別れを告げる事だ。




 何も両方難しい事では無い。殺したいのであれば、殺せば良いだろうと。






 いつもの様に学校に行って…。



 殺意を異常な程に輝かせて…。



 何度も刃を相手の身に突き立てて殺してしまえば良い…。


 殺す事なんて然程難しい事では無い。人なんて簡単に痛みを感じて、死に落ちる様な生き物だ。適当に家にある包丁一つでも取り出して刺してしまえば、痛みに苦しんで失血死するのがよくある未来だ。



 もし包丁で何度も突き刺すのが嫌だとしたら、階段から突き落とすだとか、強固な素材で作られたバールだとかスパナとかで殴打するだとかすれば良いと思っていた。




 しかしそう簡単にはいかないだろう。確かに人身は脆く、傷付きやすい。だが人体は強い再生能力を保有している。




 たとえ、人体の一部が機能しなくなる程の怪我を負ったとしても、いずれは回復し全治してしまう。






 結局また振り出しに戻る事になってしまった。自分はただ普通に生きていたいだけだったのに。

 成る可く目立つ事はしていなかった様に記憶している。


 ただの大勢の一人、モブEぐらいの立ち位置に位置して、何事にも無関心で何も変わる事のない平穏で代わり映えのない日々を送っていたいだけであった。



 日常に退屈なんてしていない。



 別にダークヒーローの様に裏の顔がある訳でも無い。




 ただの無個性で特徴も一切無くて、マトモに人と話す事も出来なくて、勉強もロクに出来ず、大した努力もせずに生きていただけ。


 体も普通で見た目の普通、特筆する点も存在しない。友達も彼女もいなくて未だに童貞。



 そんな何の面白みも無い人生が自分の送る日々であった。


 寝て起きて、食って、学校に行って、アニメを見て漫画を読んでゲームをして、寝る日々を送っていただけだった。




 だが自分にとっては、逆にこんな代わり映えの存在しない人生で良かった。





 別に変わらなくて良かった。だが、自分と違う人間はまるで自らの生き方を捻り潰して否定するかの様に、自らの前に立ち、只管になって邪魔をする。




 しかし昔からそうだった。



 ワクワクして初めて行った小学生の時も。



 やり直せると感じた中学生の時も。



 友人が一人も存在しない場所でリセット出来ると考えた高校生の時も。





 全ての期待は打ち砕かれて、儚く切り刻まれるかの様にして水の泡と化していた。

 どんな時にも自らを邪魔する存在がいて、常に進路を妨害するかの様にして絡み合ってくる。



 現在18歳になっても昔と考えが変わる事はなかった。

 さっき彼は今まで、ずっと日々が変わらなくて良いと言っていた。彼はただ自分に言い聞かせていただけだった。



 ―――何も変わらないままでいい。



 これはただ自分に言い聞かせている偽の言葉に過ぎなかった。

 言い聞かせでもしないと、自分の底に昔から眠り続けている憎悪と不満が爆発してしまうからだ。



 ただこの言葉を胸に刻み、鬱憤を晴らす為に何かする事もなかった。



 格闘技で発散する事もせず、ただ虚無で現実味の無い事ばかり考える日々を送る。


 しかし胸に刻んだ言葉が唯一のストッパーとなって不満が爆発して行動に走る事はない。





 だが、結局の所逮捕されたり迫害される事を恐れていつまでも行動に移せない自分が居るのもまた事実であった。

 目的なんて現実味が一切ない様な存在だ。



 一つ:イジメてきた奴らをぶっ殺す



 二つ:世界がクソッタレなので滅ぼす




 二つ揃って現実味が無さ過ぎた。まるでまだ世の中の事なんてロクに知らない小学生が考えた様な低脳且つ馬鹿な思想であったのだ。



 高校生にもなって、こんな願望を未だに持ち続けている自分が存在している事に対して、最近になって呆れてしまう程であった。



 殺す勇気も無いクセにぶっ殺すだとか言うな。




 世界を一人で滅ぼすなんて現実的に考えて絶対無理。


 こんなの誰でも普通に考えれば分かりきった事だろう。しかしそんな事自分自身だって分かっていた。

 殺す勇気があるか?と純粋に聞かれれば、彼は首を横に振るだろう。




 殺す殺すとボヤいているが、本当に人を殺す時の感覚なんて知る筈もない。まずもって誰も殺した事が無いからだ。


 誰も殺した事がない奴が殺すとボヤくのはただの負け犬の遠吠えに過ぎない。

 世界をその手で滅ぼすなんて、客観的に見れば小さな子供の無垢な思考と同義であった。




 ◇◇




 だがある日はまるで吹っ切れているかの様な感覚に陥っていた。自分の意思は存在しない様で、まるで誰かに遠隔で操作されているかの様な気分になっていた。




 その時はまるで自らはロボット、モビルスーツの様な気分になり脳に誰かが乗り込んで、自らを動かしているかの様だった。



 気が付けば、部屋にあるパソコンを開いていた。ネクラでオタクで陰キャであった彼はありとあらゆるオタク知識に精通していた。



 銃等の様々な兵器の構造等、オカルトチックな内容やライトノベルやアニメの知識等、その情報は様々であり、山の様な程に積み上がる程であった。






 そしてその中には裏の世界、言わばダークウェブの存在すらも認知している程であった。彼は既にダークウェブへのアクセスを可能としていた。


 そこからの流れは早く、まるで死に急ぐ戦士の様であった。



 彼は専用のツールを使ったパソコンを起動するなり、ダークウェブにアクセスして、片手でも扱う事の出来るハンドガンと高い殺傷能力を誇る手榴弾を購入していた。


 ハッとしていた頃には、もう購入ボタンをクリックしていた。初めこそ、身が若干ではあるが震えていた。



 確かに狂的思考を回転させていたかもしれない。昔からずっと狂気的で他人には話せない様な考えと思想ばかり抱いていたが、それを行動に移す事は殆ど無かった。


 しかし今回はまるで誰かが意図的に誘導したかの様な手付きで狂的行動の下準備を行っていたのだった。


 ◇◇


 気が付いたら、彼はいつもの様に教室の前に立つと、鞄の中に隠していた手榴弾を二つ、教室に投げ込んでいた。



 安全ピンを何の躊躇いも無く引き抜いて、巻き込まれる事を覚悟していつも自分をイジメていた奴らの所に一つ、もう一つは陰キャで日陰者だった事を理由に自らを虐げていた女共の所に投げ付けてやったのだ。


 最初は玩具(おもちゃ)だと思っていた。どうせボールが転がる様にしてコロンと転がり、適当に陽キャの男子かイジメていた男子共か女共が拾い上げて笑いの渦を作ってしまうのだろうと。



 傍から期待なんてしていなかった。家にちゃんと届いた所で驚きはした。注文通り、手榴弾二つと弾が込められたハンドガン一丁が自らの手元に。


 手榴弾もハンドガンもずっしりとした重さであり、本物の様な質感であった。


 どこか鉄臭く、まだ使われていない筈なのに、使い古された感じが強く、粗悪な感じが否めなかった。しかし銃には弾が込められ、手榴弾には安全ピンがしっかりと刺さっている。



 どうせ不発に終わるか、偽物だろうと思っていた。



 結局はただの下らない憂さ晴らしに過ぎない。またもや、失敗と苦渋の中に悶えて終わるだけだった。





 しかし不発に終わる事は無かった。勿論それは偽物ではないと言う事も。



 嘘では無い事が今分かった。




 次の瞬間、自らの視界は閃光に包まれ、光り輝く閃光と同時に耳を引き裂く様な程の轟音が鳴り響いたのだった。

 特に音の勢いは凄まじく、嵐が轟くかの様であり、それと同時に自分が今まで聞いた中で一番大きな音であった様に思えた。



 驚き、喜び、恐怖、後悔、歓喜様々な感情が脳裏に過ぎっていた。グチャグチャで不規則で統一性を持たない様な感情が入り交じり、彼はどんな表情を見せれば良いのか分からなかった。




 一瞬こそ、驚きのあまり口を開けたままその光景を呆然と眺めていた。周囲の人間は慌てふためき、いつもなら写真を撮るはずなのだが今回は突然過ぎた出来事に焦り過ぎたのか、その場から全員離れてしまっていた。



 皆、一目散に我こそ先に逃げようと恐怖の表情を見せながら、情けなく背中を見せて逃げ果せていた。

 しかし彼だけは、彼だけはその場に留まっていた。呆然と立ち尽くし、その光景を見つめ続けていた。




 その目を見開いて、口を開けた驚きの表情は徐々に本心の表情へと切り替わっていた。




 目元からは塩の様な味のする液体がボロボロと雫にはって零れ落ち、強い哀しみに暮れている様だった。




 口元はニヤリと微笑み、歯を剥き出しにして、身を持って実感するかの様な程に歓喜に満ちていた。





 両手を広げ、まるで救いの神が舞い降りたかの様な喜びを感じている。



「ハハハ……」



 最初は小声だった。しかし小声だった小さな笑い声は気が付けば、周囲に簡単に響く程の大声になっていた。



 最早、その笑いは狂気とも言える程であった。

 



「ハハハハハハハ、アハハハハハハッッハハハハ!!!!!」



 大声で歓喜的に、そして狂気的に笑い、悲しむ様に目元から止めどなく涙を流す。あまりに美しくて残酷でまるで煌びやかに、まるで一輪の花が咲く様な世界がそこにはあったからだった。



 今までに無い希望に満ち溢れている。自らの探していた答えが目の前に存在している。



 美しい、素晴らしい、実に理想的な光景だった。




 黒焦げになって、まるで原型が残らない程にバラバラになったクラスの人間。それは美しい以外の何物でもなかった。四肢は砕け散り、顔面が崩壊する。

 以前のカッコよかっただとか可愛いだとかの顔はもうそこには存在していなかった。



 治っていたとしても、もう元の顔には戻らないだろうと目に見えて分かりきっていた。



 そして自分自身も、幕を下ろさなければならない事を今理解していた。




 これ以上、この世界に留まる意味は無い。




 興奮が全く覚めあがらない中、彼はズボンのポケットに格納していた一丁のハンドガンを取り出した。



 グリップを握り締め、引き金に指をかける。そしてハンドガンの銃口は彼の頭部に向けられていた。

 それは誰かに向けられていたと言う訳では無く、自分自身の意思で、自らの手を用いて向けられていたのだった。




 もうこんなクソッタレな世の中に用は無かった。誰ともロクに関わらず、何の面白みも無いこの世界に自分の存在価値は無いに等しいだろう。


 このまま死んで地獄に落ちる方が、まだ彼にとってはマシであった。




 狂気的な笑いが止まらぬ中、彼は躊躇なく自らの頭に押し付けた銃の引き金を()()()


 即死。



 一瞬の事で恐怖も痛みも感じなかった。全身の力は抜け、頭を真っ赤な血の雨で染めながら、その場に崩れ落ちる様にして倒れていた。


 その手に銃を握り締めたまま、安らかな死に顔を浮かべ上げながら、そのまま彼が息を吹き返して目を覚ます事は二度となかった。





 10月15日10時43分「國崎翔真」死亡確認。


本日より投稿させて頂きます。


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