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増殖する思考

 

「成程、遂には『天魔騎士』に縋るとは…」



「ほざけ!例えこの俺を倒す事は出来ても、この天魔騎士達を倒す事など出来ぬ!」




 もうやめてくれよ、まるでわざとと言わんばかりに悪いフラグがビンビンに立ちまくっているよ。




 大体、異世界系のアニメや漫画でこう言う展開になると大体フラグを立てた奴がボコられるのがよくあるオチだ。




 自分の命に危機が訪れたので、強いモンスターを召喚するだとか、召喚したからお前らに勝ち目は無いとかって基本的に負ける奴が言う事だ。



 所謂、負けフラグってヤツ。



 ショウマはあまりの滑稽さ、そして漫画やアニメのみで見ていたありふれた展開が本当に起こってしまった事に対して、思わず面白可笑しく思いながら、軽い笑いを浮かべていた。



 笑う事は仕方ない。だって面白いんだもん。


 本心、心の中では現在進行形で爆笑中だ。これ以上変なフラグ立てられたら、もう吹き出しそうだもん。




 何とか頑張って笑う事を堪え、ギリギリ軽く笑うのみで済ませているが、更にテンプレ展開が続けば流石に腹筋崩壊レベルの爆笑を起こしてしまうだらう。




 まず、最初に言っておくが巨大化又は凶暴化、強い幻獣やモンスターの召喚による主人公勢との対決は、異世界ラノベ系における負けフラグの一角と言っても過言では無い様に思える。




 例えば、巷では圧倒的に強いモンスター数十体を主人公勢達に差し向けると言うのが一例だろう。




 他にも、これを使って貴様に勝つ!とか言って、明らかにヤバい薬を大量に飲んだり、注射器を腕とかにぶっ刺したりして自分が化け物になるのも典型的な例だ。




 そして、今回の場合は負けそうになったから天使の軍団を召喚して、僕の事を殺そうと嗾けてきたのだ。

 何とも負けフラグの匂いしかしない。



「フッ……」



 ショウマはあまりのテンプレ展開に、腕を組みながら思わず鼻で笑ってしまっていた。





 異世界系のアニメや小説を読んでいたり、見ていればこんな展開何度も見てきた話だ。



 勿論、それはフィクションでの話であり本当に起こった事では無い。




 しかし、今回起こっているのは紛れもない現実での出来事だ。


 まさか本当に起こってくれるとは思っていなかった。嬉しさと同時に謎の面白さが込上がってくる。




「何を笑っている!余裕でいられるのも今の内だ!行けぇ!」



『天魔騎士』それは天使の存在の一つであった。



 この世には、前にも話したかもしれないが魔族と言う種族が存在している。


 それに相対するかの様にして、更に存在する種族である『天族』と言う種族が存在する。


 天族、それは言わば天使や神の使いの総称であり主に天使等に使われる事が多い。



 天に仕える者である為、彼らが崇拝するのは基本的に神だ。




 つまりで言うと、天族は基本的に神やそれに準ずる者の味方と言う訳だ。



 言い方変えると、僕の敵。邪魔な存在って訳。




 そして今自らの目の前に現れ、現れたと同時に折角使った結界をバラバラにぶち壊しながら現れたのが、その天族の中の一つである『天魔騎士』と言う存在だ。




 自分よりも圧倒的に大きな体。全身フルプレートの純白の甲冑に身を覆う、神の手先。





 え、しれっとカッコイイ名前の結界壊されてんじゃねぇよだって?



 仕方ないだろ、これまだ試作段階なんだよ。チート使えるって言ったかもしれないがそこまで何でもかんでも出来る訳じゃない。



 言っておくが、この『掌握者(グレンツェオブ)の檻(エクシア)』はまだ完全に完成した訳では無い。



 言っておくならまだβ版と言った所であろう。




 技術進歩とは簡単に事が運ばない。何度も失敗を繰り返す。


 トライ&エラーを何度も繰り返し、それを乗り越えた上で新たなる力と言うモノは完成する。


 掌握者(グレンツェオブ)の檻(エクシア)は確かに結界内の敵に対してバッドステータスを与える事の出来るデバフエリアを展開出来るのが魅力の能力だ。



 しかし、今の所はまだ未完成。仮の段階の存在だ。



 まだこの結界は完全に完成したと言う訳では無い。

 

 まず展開可能範囲がお世辞にも広いとは言えないのだ。



 精々数mが限界と言った所だ。まだ狭いドーム状にしか展開出来ない上に、デバフ効果を発揮出来る事を代償として、耐久力も普通の結界と比べると脆い。



 これはデバフ効果を展開する為に常に魔力を流す必要がある為、耐久力とデバフ効果のバランスをまだ調整出来ていないからこうなっている。




 現在の所、デバフ効果を通常よりも強化して耐久力を多少犠牲にしているが可能なら両方の効果をカチ上げたいと思っている。



 まぁ、今の僕じゃ無理だけど。


 しかし、また改良すれば良い話だ。それに手はまだ残されている。



「それで、その鎧騎士様達を我に差し向ける気か?」



「38体もいるんだ、貴様に勝ち目は存在しない!行けぇ!」



 38体、なんだそれだけか。




 それならもう一つ見せてあげる必要性があるな。



 数の差で戦局が覆るとは限らない。無限の想像力と技術力は、そんな数の差は簡単に破壊してしまう。



 世の中魔法だけってのもつまらない。




 面白い物を見せよう。




「広域戦闘制圧兵装システムを使用する」



 現在地空間を完全に把握。思考回路全面を空間認識に集中する。




 縦、横、斜め、上、下、立体、x軸、y軸、z軸、背後、敵の数、急所……。




 全ての完全な位置及び立体の把握。



 広域の戦闘区域を制圧、完全な掌握に近付く為には何を使用するかなんて決める余裕は無い。



 例え過密的な情報量に押し潰されて、脳が焼き切れてしまって構わない。



 何を犠牲にしてしまっても構わないだろ、それぐらいの覚悟も持たずに世界等掌握出来るものか。



 しかし、脳が焼き切れてしまえば、僕は死んでしまう。



 だからこそ、脳の思考は増殖する。




 一つだけでは足りない。一つだけでは脳が焼き切れてしまう。



 それなら、増殖させる。凶悪ある力と誰もが跪く様な圧倒的脅威。

 


 ―――思考は三ツへと分身する


 

 ―――ただ渇望する者へと授けられ

 


 ―――手の届く場所に現れた時



 ―――それは弱者への手向けへとなる




「……増殖する思考(ツヴァイルナティック)



 脳の思考回路が擬似的に三つへと増加した。

 ショウマの脳内思考回路は無限の如く回転し、常人では考えられない程の情報が圧倒的速度で処理されていく。


 まるで高速で最適解を導き出しているかの様だ。



 一つだけの思考回路で処理しきれない情報が、三つに擬似的に増加した思考回路によって余裕で処理出来る様になる。




 武器を構える間も無いまま、天魔騎士達はその煌びやかで神々しい甲冑を纏いながら、手に握られた自らの全長すらも追い越す美しい装飾が施された剣や槍を用いて、襲いかかってくる。







 だが、三つに増殖した思考回路はその圧倒的情報処理能力により敵の攻撃はまるでスローモーションで動いている様にしか見えない。



 全て色褪せて、ゆっくりと動いているかの様に。



 三つの思考回路は敵の動きを簡単に計算、予測し避ける為の道を簡単に生み出してくれる。




 MasterMindはまるで素早く吹く風の様にして、天魔騎士達の攻撃を余裕で交わし続ける。




 剣の斬撃や、槍の刺突は僅かに彼の肉を斬り裂いたり、抉る事は無い。



 全ての攻撃は呆気なく見切られてしまい、最低限の動きのみで避けられてしまう。




 天魔騎士も命令で動かされているとは言っても、一応自らの自我は存在している為、まるで苛立つかの反応を見せている。




 38体と言う数で囲んで攻撃しておきながら、一向に攻撃が命中しないのだ。



 それに敵は天魔騎士達からすれば、ただの鼠と何ら変わらない様な小さな人間だ。




 それなのに仕留められない。


 更に、攻撃を回避していく様はまるで他者を軽蔑するかの様であり嘲笑う様にして攻撃を華麗に避けていく。


 天魔騎士達は明らかに怒りを示す様な雰囲気を醸し出していた。




「何をしている!?たかが子供1人に何を手間取っているんだ!?」



(じゃあお前も攻撃に参加しろよ……)



 思わずツッコミたくなってしまったが、今はギャグパートではないので自重する。



増殖する思考(ツヴァイルナティック)



 この力もまた、彼が生み出した力の一つであった。


 脳は本来、人間には一つしかない。

 しかし一つだけでは足りないのだ。



 凡人の域を越えられないのが人間。例え、長い時間を費やしたとしても、越えられない域と言うのは存在している。




 だからこそ、その域を僕は超越する。






 脳を擬似的にではあるが、二つ増加させるのがこの『増殖する思考(ツヴァイルナティック)』だ。


 脳を増加させるとさせると言うよりかは、思考回路を複数生成し、圧倒的情報をその増加させた思考回路で処理させると言う能力だ。




 今から使う新たな装備は、圧倒的な空間認識能力と情報処理能力が必要となるので僕の一つだけの小さな脳みそでは、情報処理し切れずに脳が焼き切れる可能性がある。



 所詮、僕だって元々は普通の人間だ。スペックだって何ら普通の人間と変わらない。





 なので、そのスペックを僕は超える。自らの開発した能力でそして超えると言う欲望を持って、僕は凡人の域を超える。




「行け!……」



 MasterMindの背後から異空間と言う名の(ゲート)が現れる。





 それは新たなる力の目覚めと絶望の開幕だった。


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