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存在している理由は大体分からない

 

 薄暗い地下道と、薄気味悪いジメジメとした空間。


 僅かにだけ光る明かりは、視界を照らすのではなく余計に不気味さを強調させて膨大と化している。


 まるで悪魔や化け物が巣食うかの様な空間であり、普通の人間ならこの場に本意で近付きたいとは思わないだろう。


 しかしこの暗く、時折天井から水が垂れ、水音が響くこの不気味な地下道の中を歩く者がいた。



「今日の捕獲人数は?」



 暗い道を歩きながら一人の人物が口を開いた。口から聞こえる声は低く、男性の声である事が簡単に理解出来た。


 口を開いた人物は白いローブを身に纏い、全身を隠している。


 ローブの下に見えるのは、鍛えられた体躯に僅かに髭を生やした口元とギロリと睨むかの様な見た者を強ばらせてしまうかの様な鋭い眼差であった。


 歳は見た所、40手前と言った感じだろうか。頭髪は浅黒く短い髪であった。



「はっ、今日はざっと二十と言った所です」



 地下道を歩く男の脇を歩く一人の男が落ち着いた口調で話す。簡単な報告だ。


 同じ様に白いローブを身に纏っており、姿を完全に視認する事は出来ない。



 そして地下道を歩いていた二人組は、やがて根城にしている場所の中で一番広い場所に辿り着いた。



「異端者共め、すぐにでも殺せると言うのに」



 男の見つめる先には、まるで骸の様になった人々が地面に転がっている。

 勿論ではあるが、全員死んでいる訳では無い。



 死んでいるのではなく、強制的に眠らされているのだ。検挙時に飲ませた薬によって、強制的に眠っているだけだ。



 彼ら異端審問隊は異端を取り締まり、駆除をする事を目的とした、言わば憲兵、警察の様な存在だ。


 神を信じず、無神教を貫こうとする者や彼らが信仰する存在以外の存在を信じようとする者を一人残らずとして取り締まるのが彼らの役割であった。



 勿論ではあるが、異端審問隊が拘束した神を信じぬ者。それが行き着く末路は絶望的だ。

 あまり口に出して話すのも恐ろしいぐらいだ。



 まず、この世界ではこの世界そのものを生み出し、命を作り出し、大地と海を生み出した全知全能の神『ゼニス』と呼ばれる存在がいた。


 人はゼニスの手によって作られていた。世界はゼニスと呼ばれる神の手によって生み出されたのだ。


 無論、この理論がまかり通れば、人は神であるゼニスに作られた事になる。


 そして、この世界の人間の多くは過去の時代から神の存在を強く信じていると同時に、強く崇拝している。

 神の手によって、人は命を受け取り、世界と富が生み出されている。



 その不安定であり、真実かどうか不明な考えを過去の時から多くの人間が信じてきた。

 最早、全てを生み出した神であるゼニスを信じる事は当然であり、当たり前と言っても過言ではないのだ。


 生まれた時から、まだ理解力の薄い子供の時から信じる様にと教え込まれる。


 まだ小さな子供とは無垢である為、大人の言う事は簡単に信用してしまう。



 そうなれば、あら不思議。


 信じる、と言う事が当然となり皆、崇拝する様にして信用して、崇拝してしまう事となる。


 最も、僕の場合は数少ない例外ではあるが……。



 そうした結果、今この世界は神を強く崇拝しており、権力も権威においても全てにおいて頂点に立つのは『神』と言う存在だった。


 世界の中でも強く大きな権力を持つ、貴族、王族、帝国等の存在も神には屈服している程だった。


 それに準ずる存在がこの『異端審問隊』と言う存在だ。神なんて実際は肩書きに過ぎない。

 本当の目的は他に存在している事を知っている為、異端審問隊と言う存在は、


 神を信じぬ不届き者を粛清する為に存在している


 ではなく、



 圧倒的権力を奪う可能性がある反乱分子を潰している存在。


 そんな反逆者を潰している組織に過ぎないのだ。


 実際、このCRISISに所属している一部の人物は異端審問隊からお尋ね者として手配されている者も存在しているぐらいだ。




 そして今回、暇潰し兼実験の為に異端審問隊の一部の破壊を行う事にした。

 

 別にこの異端審問隊に、理不尽な理由や言い掛かりで拘束されてしまっている人達を助けようなんて思ってはいないが。


 我々は人々を助ける勇者では無いのだ、我々は世界を掌握する者。


 人を助ける為の善的活動を行っている訳では無い。





 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇




「た、隊長ぅ!」



 隊長格の人物である「マッセル」異端審問隊の一つの中隊の隊長を務める人物であり、部下達からの信頼も厚い人物だ。


 しかし、それって所詮は表向きの評価に過ぎない。



 彼もまた、神と言う名の偶像を信じ続けており、無様にも弱い人間を狩り続けている哀れな人間であった。



 そして隊長であるマッセルがこの地下道の中で唯一、整備がされて非常に整えられていた部屋の中で報告書を書いている時であった。


 突如として、その部屋の扉が蹴り破られる勢いで開いたのだ。


 扉の外からは、まるで人の凄惨な遺体を目の当たりにしたかの様な酷く怯えた形相を浮かべ、息を切らせながら部下の男がやって来たのだ。



「んっ!?何事だ!」



「し、侵入者です!」



「何!?侵入者だと、数は?何人だ!?何処の所属だ!?」



 まだ部下の男は冷静さを取り戻していないにも関わらず、マッセルは連続して質問を投げてくる。


 勿論の事ではあるが、部下の兵は最初こそ慌てており、息を切らしながらまともに話せる感じではなかったのだが、マッセルが「落ち着けぇ!」と喝を入れた為、兵は落ち着きを取り戻した。



「数はまだ不明です!それに敵が強過ぎて、我々では全く太刀打ち出来ません!」



「何だと!数も分からんのか!?」



「現在確認出来るのは、まだ四人です!」



「えぇい、喧しい!私も出る!」

 


 そう叫ぶと同時に、マッセルは椅子から立ち上がると、立て掛けてあった鞘に納められた長剣を握り締めると同時に仲間の兵と共に部屋を去った。





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