身構えてる時って死神は来ないのだろうか?
うーん…今回の演奏会も非常に素晴らしい結果を残す事となった。
僕が奏でるギターも勿論の事なのだが、ヴェイザーのギターとボーカルもとても素晴らしかった。
彼女の歌声は賞賛に値する程の価値を持つ程だ。
それに嵐の如く鳴り響く激しいビートや派手なパーカッションのドラムの音も耳を引き裂く勢いで拠点の中に鳴り響く。
ディープのドラムやジャックのベースの響きも脳を強く震撼させる程だった。
紫苑の三味線や雪貞の尺八は、激しくけたたましく鳴り響く音の中でまるで静けたる音を醸し出し、激しく早弾きな音に塗れる中で落ち着いた音となっており、和風ロックとしての良い感じを出せていた。
ニクスのビープ音によるビートボックスも他と同じ様にして実に素晴らしい出来であった。
他の誰にもする事の出来ない、ニクスのみに許された特別な音色。ニクスも居てくれなくては、このバンドは成立しない。
鳴り響く音が全身が強く刺激されて、最高に飛んでいる様な気分にもなれた。これはとても良い成分だ。
今回も観客数0人のライブは大成功、それだけは言わせてもらう。
だが、観客は少しばかりではあるが欲しい。
◇◇
そして今、僕は椅子と言う名の玉座に座り込んでいる。
まるでゲームのラスボスの様に頬杖を着いて、足を組みながら左手に魔力を高圧縮させて、まるでプラズマボールの様にバチバチとした雰囲気を持たせて、まるで自分が圧倒的強者の様な雰囲気を出している。
別にこの魔力自体に特別な力は無いのだが、何か強キャラ感って感じが出てて、僕は愛してやまない程だ。
まぁ、暇潰しの一環であり威厳を保つ為の行動の一つだ。別に深い意味は無い。
「総帥殿、偵察完了だ」
「助かった、それで……どうだった?」
「これを見てくれ」
ディープはそう言って僕の前に右腕を差し出した。第一関節部を曲げると同時に腕の真ん中辺りをごにょごにょすると、腕の上に小さなモニターが現れたのだ。
そこには、恐らくディープが記憶したであろう映像が映し出されている。
ディープは元々偵察型のオートマトンである為、偵察用の記憶用カメラアイや諜報が可能なボイスレコーダー等を搭載している。
「数は全部で百以上ぐらいだね。今は洞窟みたいな所で張り込んでるらしい」
「百か……そこそこと言った所だな」
「隊長格とかもいるらしいし注意だね。どうする?」
「取り敢えず、全員出撃だな。ミディアと僕覗いた全員は正面から行け……」
「了解。それで総帥殿、君は?」
そんなの一つしかないだろう。
「背部から陣形を崩す」
真の掌握者は基本的に表には姿を見せないモノだ。
他の者は見せても構わないと思うが、僕の場合は例外だ。全てを掌握する者は、死にゆき口を開く事の出来ぬ者の前にまるで死神の様にして現れるのだ。
死すその僅かな時間の前に、命を刈り取るかの様に闇を纏い、静かに現れる。
因みにだが、言ってみたかっただけ。
死神とか、死ぬ前の一瞬にだけ姿を見せるだとかこう言うの本当に言ってみたいんだよ。
前の世界でこんな事をボヤいていていたら、間違いなく変人扱いされてしまうからね。
◇◇
さて、今日の夜が襲撃の時となる。
暇潰しと粛正の為の大きな晴れ舞台だ。全員いつも以上に気合いが入っている。
何気にこれが我々CRISISの初陣でもある。やっている事はただ単に異端審問隊を一方的にボコるだけの事なのだが、初の虐殺と言う事もあって皆、何故か殺気立っている。
作戦もそこまで大層に考えた訳でも無い。ディープと紫苑が勝手に考えてくれていただけだった。
ディープが皆に説明していたが、僕は聞き流していた。
話し終わった後に、一応適当に賞賛の言葉を送る事はしてあげたが。
一応耳に入ってきた作戦としては、ディープが偵察を行い、ジャックと雪貞が強襲を仕掛けて戦力を分断。
そして分断した所を紫苑とニクスが全て掃討すると言った所だ。
最後に残党及び逃げた敵は全てヴェイザーが処理すると言った所だ。
話を聞く限りでは穴は多分無いだろう。ジャックと雪貞の攻撃なんて普通に考えて受け切れる訳が無いだろうし、ニクスの前では人は肉塊になってミンチより酷い目に遭う事になる。
ミディアは戦闘を得意とはしていない為、今回は不参加となった。
自動ミサイル迎撃システムや、超高高度からのレーザー照射砲とか作って自分も戦闘に参加するとか言ってたけど―――。
普通に考えて、出来るのか?
記憶にはあるし、彼女の底知れぬ探究心と技術力を持ってすれば可能かもしれないが、今は出来ても………どれぐらいなんだろうか。
僕は基本的に彼女の実験や開発には関わっていない。ただ資料と情報を提供しているだけだ。
だってミディアの話、専門用語多過ぎてよく分かんないもん。ミディアと話すぐらいならヴェイザーとお茶して雑談するかジャックと拷問について語り合ってる方が余っ程マシだよ。
って何の話してるんだ僕は?
「さて、行くとするか……」
そうニヤリと呟きながら言うと同時にジャックは左耳にワイヤレスイヤホンを埋め込んだ。
それはショウマも同じくであった。
殺人任務を遂行するのに音楽が存在しない等、絶対に有り得ない話だ。
脳と第六感を強く、まるで針を刺すかの様にして強く刺激させる。
アドレナリンが異常な程に吹き出す様な気分になる。
全身に強い殺気と興奮を行き届せるかの様にして、ショウマとジャックはより狂気的な思考を加速させる。
そしてもう一つ。普通、こう言う戦闘時ってカッコイイBGMが無くては盛り上がらないだろうと僕は考えている。
アニメや特撮番組を見ていていつも思っている事だ。
例えば、主人公が強敵と対峙し、剣を抜いて戦いを始める時、そして銀閃が空を裂いて飛び交う時、互いの思いを叫び、決着を着けようとする時、アニメにはBGMが付き纏うだろう。
どんなカッコイイシーンにも、基本的にカッコよく、まるで魂を強く揺さぶるかの様なBGMが使われている。
今回もカッコイイと言えるかは分からないが、貴重な初陣の戦いだ。
闇に潜んで敵を狩る者達とは言っても、それはまたダークヒーローらしさがあって、非常にカッコイイ代物となる。
その為には脳を斬り裂く様な激しいBGMや音楽が必要だと感じていた。
ショウマとジャックはそれに強く共感した者であった。
紫苑や雪貞は周囲に気を配れなくなると言っていたし、ディープとニクスに至ってはオートマトンである為、耳が無い。
ヴェイザーは音楽鑑賞はとても好きではあるが、いつの時も好き好んで聞いている訳でも無い。
なので、所謂『アニメ等の戦闘時に流れるカッコイイBGMは自分で聞く』と言う、ちょっと何言ってるか分からない的な理論は二人にのみ理解が通用した。
二人揃って戦闘時に聞く曲も中々に派手だ。
ショウマは最大限の和風ロックを好み、激しく衝動的なビートや殺人的な程の早弾きの中に混じる古風たる美しい音色を耳の中に最大限流し続けながら戦闘を行うつもりだ。
無論、最大音量で周囲に音漏れがしていまう程の音量でだ。
ジャックは重厚なディストーションと鼓膜を突き破る程の大音量のパーカッションが奏でるエネルギッシュでスリリングな曲を好み、本当に鼓膜を突き破る勢いの音量で聞いている。
ショウマも、鼓膜が本当に破れて音が聞こえなくならないか心配する程なぐらいだ。
「さぁ……始めようか…!」
ショウマはそう軽く叫ぶ様にして呟くと同時に、彼の顔は黒色の死神たる仮面に覆われた。
フルフェイスの仮面を顔に被り、ロングコートに付けられたフードを頭に被り、その姿は正に命を刈り取り、闇から現れる死神と同じであった。
手に着用した手袋をより深く着用し、また強者を漂わせる行動を見せる。
狩るべき敵はまだ身構えていないだろう。誰も逆らわず、誰も抵抗しない。
完全に調子に乗っているだろう。身構えている時に死神は来ないと言うが、今敵は身構えていないだろう。
そんな時に、死神が必ず訪れる事となるだろう――――。




