表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
76/264

第七十四話 瑞花咲けり【中】

「お待ちしておりました。さぁ遠慮はいりません、この胸へおいでなさい」

「ちょっと待て、ばあちゃん」

「あら小風(シャオフォン)、なんですの?」

「いきなりすぎるだろ。梅梅(メイメイ)が引いてんぞ」


 いきなり熱い抱擁をかましてきたあなたがそれを言うのか、と思ったりもした早梅(はやめ)だが、ややこしいことになりそうなので空気を読んだ。


「ひどいですわ。愛情たっぷりにこの母が抱きしめるのは、道理ですのに」

「お気持ちはわかりますけれど、ごあいさつもまだですからね、王母(おばあ)さま?」

「まぁ(わたくし)としたことが、うっかりうっかり!」


 晴風(チンフォン)の言葉にほほをふくらませていた少女が、静燕(ジンイェン)にたしなめられて飛び上がる。


金王母(こんおうぼ)さま」


 そこではじめて、早梅の後ろに控えていた黒皇(ヘイファン)が歩み出る。

 黒皇は胸の前で右のこぶしを左手で包み込む拱手(きょうしゅ)によって、少女へ礼を示した。


「うふふ、おかえりなさい、小鳥(シャオニャオ)。そしてはじめまして、愛らしいお嬢さん。さぁ、こちらへどうぞ」


 黒皇、次いで早梅へと新緑のまなざしを移ろわせた少女は、笑みを浮かべて手を差し出す。

 そこでようやく、晴風が早梅を地面へ下ろしてくれた。行け、ということなのだろうか。


 早梅は差しのべられた少女の手を、ためらいがちに取る。

 早梅よりも低い目線で、少女のまばゆい笑みがはじける。その少女に腕を引かれたかと思えば。


「……えっ?」


 たちまちに目前へせまった石碑を、早梅はすぅ……と透過していた。


(通り抜けた? なんで? どうやって?)


 いまだ理解をなさない早梅の頭上に、晴風の声が降る。


「この石碑こそ()()()。ばあちゃんがゆるしたやつしか、通ることはできねぇ」

「入り口って……えっ!」

瓏池(ろうち)があるのは金玲山(こんれいざん)の麓さ。いいかい梅梅、よく聞きな。天上天下(てんじょうてんげ)三界十方(さんかいじっぽう)、仙として登った女子は、例外なくみな金瓏聖母(こんろうせいぼ)──金王母元君(こんおうぼげんくん)のあずかりとなる」

「妾はここ金玲山に住まう、すべての母です」


 早梅よりも見目の若い可憐な美少女が、金玲山のあるじ。悠久の時を生きる聖母にして、女神。


「そなたはみずからの足でこの地を踏み、道を得ました。歓迎いたしますわ。ぜひ『王母(おばあ)さま』とお呼びになって?」


 女仙(にょせん)を統べる女王に認められること、それはすなわち。

 仙として天へ召し上げられる、ということだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ