第8話 一件落着/上等
~~ブラックサイド~~
ブ男が床に這いつくばる姿は滑稽に見える。最低野郎ならなおさらそう見えるわね。
「ハンドサンダー、って生活魔法だよね……?」
「それであの威力? どういうこと?」
「何言ってんだよ、あれが生活魔法なわけないだろ」
……ん? 何言ってるのあの人たち、確かに私は若干威力が大きいけど生活魔法を繰り出しただけよ。
「て、てめえらぁ!」
ブ男が立ち上がる。まだ吠えるだけの気力があるみたいね、好都合だわ。人間相手に戦うとき、どう加減すればいいか実験できる。
「よく聞きなさい。お前はこの私が一人で叩きのめしてあげるわ」
「そういう話だ」
「「「えっ!?」」」
「ええっ!?」
「は、はぁ!? 何言ってんだ!?」
あら? そんなに驚くことかしら? 女の子だからゼクトより弱そうだと思われてたのね。
「……な、舐めやがって! いくら何でもそんな小娘にこの俺様が負けるかあ!」
どう見てもか弱い女の子にしか見えない私にまで殴りかかるとは、本当にどうしようもない。じっくり痛めつけられる。
「ハンドフリーズ!」
まず、足を凍らせる。おっと、膝まで凍っちゃった。
「ひ、ひえああああ!! あ、足冷て、てええええ!!」
うるさいから顔に一発当ててみる。アニキの技だけど。
「ハンマーパンチ!」
「ごぼっ!?」
顔が変形したかしら? 思ったより弱そうね。まともにしゃべれなくなったわ。実験は続けられそうになさそうね。さっさと退場してもらおうかしら。
「ハンドファイヤー!」
床ごと凍ったから、そこから溶かしますか。
「……う、うええええ!!」
ブ男は足元から火が出たぐらいで叫びだす。……うるさいわね、悲鳴ぐらいは上げられるのか。もうギルドの出入り口から出ていってもらうわ。
「ハンドウォーター!」
「ぶっ……!?」
ブ男は魔法の水流に流されてギルドの外にぶっ飛ばされた。これで火も消えたから、火事にもならない。一件落着ね!
~~ホワイトサイド~~
ミエダはあっという間に大男を倒した挙句、水流を出してギルドの外にぶっ飛ばしてしまった。……は、ははは、やっぱり強いよな、流石は俺の相棒だ。つーか、いつの間にか子分たちも居なくなってるし。
「し、信じられない……あのグロンショをこんな一方的に倒すなんて……」
「あの男は魔法耐性もあったはずなのに、魔法で撃退するなんて、すごすぎる……」
「や、やっぱり、生活魔法なんて嘘だ……や、やらせに決まってる……!」
……うん。ギルドの職員さんたちの意見も分かる。どう見ても生活魔法に見えないよな。でも、そんな風に見えちゃうのはミエダの魔力がでかすぎるだけなんだ。っていうか、あの大男に魔法耐性なんてあったんだな。それでもあの威力か。……俺は、もう慣れたけどな。
「す、すごいです! お兄さんお姉さん! あの悪い人たちをあっという間にやっつけちゃうなんて、かっこいいです!」
「い、いやあ、それほどでもないぞ、ははは」
「それほどでもあるでしょ、ふふふ」
ルルが目を輝かせて称賛してくれる。なんか昔を思い出すな~。かつて俺も周りに期待されてた頃はこんな目で見られたことあったっけ。……まあでも、もう彼らにはそんなことは望まないけどな。
「いやいやいや、驚いてる場合じゃないぞ! 君たち、なんてことしてくれたんだ!」
「「え?」」
あれえ? 男の職員がなんか焦った様子でいるけど、「なんてこと」だと? どういうことだ? そういえば、見ているだけで怯えて何も言ってこなかったな。何かあるのか?
「あのグロンショはこの町の領主と繋がりがあるんだぞ! どうして領主とあんな奴が繋がってるか知らんが、このままだと君たちは、それどころかこのギルドは領主を敵に回してしまうんだぞ!」
「そ、そうだったわ!」
「マズいことになってしまった!」
おいおい、領主って貴族のことだろ? そんなのとあんな男が繋がってるだって、なんだそりゃ? あんな奴と懇意にしてる貴族って頭おかしいだろ。ルルのこともあるしほっとけなさそうだな。
「領主を、貴族を敵に回す? 上等だ!」
「つまらない奴が私達の前に立ちふさがっても意味ないことを教えてやろうじゃない!」
「「「ええーっ!!」」」
職員の皆さんが大いに驚いてくれる。まずは彼らから事情を聴かないと始められないな。直接だろうと、間接だろうと。
「詳しい話はギルドマスターから聞こうじゃないか。呼んできてくれるか」
俺がそういうと、職員たちは何故か暗い顔になった。おや? 雲行きが怪しいな。




