第3話 テメジハの町
ルル、ゼクト、ミエダの3人は、ルルの住む町についた。その頃には日が暮れる直前だった。3人は町に入る前に各々の理由で門番に問いただされるだろう。最初はルル。
「ん? 薬草を積みに行った嬢ちゃんじゃないか、やっと帰ってきたのか!」
「はい、あの、心配してくれたんですか?」
「当然だろ、こんなに小さいんだし。薬草は採れたのか?」
「もちろんです。見てください、こんなに採れたんです!」
ルルは自慢げに薬草を門番に見せつける。門番は手籠に入ったたくさんの薬草を見て少し苦笑いする。
「は、ははは、これだけ摘んできたのか。そりゃあ、時間はかかるわな……」
「はい!」
「はいじゃないよ、まったく……。もう少し遅かったら人を集めて捜索に行こうかって本気で考えてたんだぞ?」
「そ、そうなんですか! ごめんなさい……」
「まあ、今回は無事に帰ってきてくれたからよかったよ。今度からは暗くなる前に帰って来なさい」
「はい……」
門番は今度は真剣な顔をしてルルを叱る。本気でルルを心配していたようだ。そこにミエダが口を挟む。
「『少し遅かったら』ですって、もっと早く捜索するべきではないの?」
「「え?」」
「あ、相棒?」
「な、何だ、そこの二人? この町に来たのか?」
「その前に私の話を聞いて。その子、ブラックフォックスって魔物に襲われてたのよ?」
「何だって!? 本当か!?」
「もちろんよ。それを私とアニキが助けたのよ」
「!」
ミエダは門番を睨む。睨まれた門番はミエダを見て思わずひるんでしまう。だが、ルルが魔物に襲われていた事実を聞いて、真剣に事情を聴いた。
「まあ、弱かったけどな」
「お、お姉さん……?」
「……嬢ちゃんは森の奥まで言ってたのか?」
「奥っていうほどではないけど、3頭の魔物に襲われてたのは事実よ」
「それを俺が倒したんでよ。これがその証拠だ」
ゼクトはミエダの合図で、倒したブラックフォックスの皮で包まれた肉を見せた。魔物の肉は食材に、骨や皮は素材にできる。倒したブラックフォックスは血抜きをして皮をはぎ取って、その皮で肉を包んだ状態にしたのだ。ちなみに運んだのはゼクトだ。
「……マジか。本当にブラックフォックスかよ」
「ここじゃ珍しい魔物なのか?」
「少なくとも、森の奥のほうにいるはずなんだが、そんなことが……」
「門番さん、こんな小さい子が戻ってくるのが遅い時点で捜索に出るべきではないですか、危うくこの子は食べられるところだったんですよ?」
「そうだったのか、すまない。俺がもっとしっかりしていれば……」
「あ、あの、私のせいです! 門番さんは何も悪くないです!」
門番は思ったよりも悪いことが起こりそうだったことに落ち込んで、ルルに謝罪した。ルルは慌てて門番をかばうが、ミエダは本気で怒っていた。ここで今度はゼクトが口を挟む。
「まあまあ、そのくらいにしてやれよ、門番の人も反省してんだからさ」
「アニキ……それは……」
「私は無事なんですから、もういいと思います……」
「……まあ、もう暗くなるから、その件はもういいか」
「「ほっ」」
ルルとゼクトは安心した。特にゼクトの安堵感が深かった。実力を知っているからこそ、怒らせるわけにはいかないのだ。
「……それで二人は嬢ちゃんの恩人でいいんだよな」
「はい」
「ええ」
「この町には初めて来たようだが、何しに来たんだ?」
今度はゼクトとミエダが問いただされる番になった。
「俺達は旅をしてるんだ」
「その途中で森に迷ったところでルルちゃんに会ったの、襲われてたところを助けたのは偶然ね」
「ほう。まだ若いのに二人っきりで旅か。大したもんだな、この町に来たのは旅の途中で立ち寄ったってわけか」
「その通りです」
「森に迷ったから人里を探してたら、ルルちゃんの案内でここについたんだけどね」
「ちょっ、おおい! 格好つかないから……」
「ははは、そうかいそうかい! ようこそ、『テメジハ』の町へ」
「ようこそです!」
「……ど、どうも」
「お邪魔しますね」
こうして、ゼクトとミエダは、ルルと門番に歓迎されながらテメジハの町に入っていった。