第24話 VSジャイアントスコーピオン
ニナール達を振り切ったゼクトとミエダは、一直線に魔獣の元に向かった。ハンタージャンプを繰り返して進んでいるため、あっという間に魔獣の目の前に着いた。
「でけえな……」
「ええ。成体のジャイアントスコーピオンね。でも……」
「でも?」
ミエダは魔獣を見て不思議そうな顔をする。気になったゼクトは訊ねると、いい返事が返ってきた。
「この魔獣、なんだか元気がないみたい。弱ってるっていうのかな? 本来ならもっと動き回るはずなのに……」
「そ、そうか?」
ミエダに言われてみてゼクトも観察してみるが、元気がなくて弱っているという印象がわかない。ゆっくり動いているようにしか見えない。しかし、それでもミエダのほうが知識があるのは確かだ。彼女がそういうならそうなのだろう。
「理由は分からないが、弱ってるのは都合がいいな。思ったよりも難しくもないかもしれないってことだな」
「あら? 理由も分かるわよ。あれ見て」
「え? あれって?」
ミエダが指さしたところを見てみると、魔獣の背中(?)に文字は書いた札が張り付いていた。破れてボロボロになっているあれが原因らしい。
「あの札……まさか『封印札』?」
「多分ね。あれはつい最近まで魔獣をうまく封じていたんじゃないかしら」
「つい最近? てことは、あいつは封印されてたけど封印が解けて復活したってことなのか?」
「その通りよ。弱ってるのは封印が解けたばかりだからでしょうね」
「なるほど、しかも魔界じゃなくて地上で復活したから慣れない環境に放り出された気分ってことか……」
ミエダの分析を聞いてゼクトも分析する。どれだけ封印されていたかは分からないが、その影響で弱っているなら先手必勝。すぐに叩いたほうが早く済むだろう。逆に時間を与えれば元気になって取り返しがつかなくなるかもしれない。やはり、二人がここまで来たのは正解だったようだ。
「いきなりチャンス到来ってわけか、ならさっさと倒してやろうぜ!」
「そうね!」
ゼクトとミエダは魔法を放つ構えを取った。二人から魔獣に向けて殺気が放たれる。それが二人の失敗だった。
「キシャアッ!!」
その殺気に魔獣が気付いた。サソリの特徴的な尾を二人に向けて毒針を放ってきたのだ。
ドドドドドドドドドッ!
「「なっ!?」」
バッ! バッ! ドスドスドスドスドスドスドスッ!
二人はうまくかわした。ゼクトは右にミエダは左に避けたのだ。
(くそっ、引き離されたか!)
(ちっ、殺気を出しすぎて気づかれたか!)
魔獣の攻撃はそれだけではなかった。
「キシャアアア!」
サソリの特徴は長い尾と大きなハサミ。今度は左右のハサミを二人に向けてきたのだ。器用に左右同時にハサミを扱ってくる。巨大なハサミが二人に迫る!
「うおっ! チェイサースラッシュ!」
「このお! ファイヤーシューティング!」
ザシュッ! ボオオオオオオッ!
「キシャアアアアアッ!?」
しかし、返り討ちに合った。魔獣のハサミは片方が切り刻まれ、もう片方は焼き尽くされてしまった。魔獣のほうがダメージを負ってしまっていた。結構な大ダメージだったようだ。
「キッ、キシャアアアアアッ!」
ドスドスドスドスドスドスドスッ!
魔獣は興奮して暴れ始めた。尾の毒針を四方八方に放つのだ。ただし、移動速度はかなり遅い。複数の肢を動かしてデタラメに動き回るかと思われたがそんなことはしなかった。
(あれだけ肢があるのに、早くは動かせないのか? 元気がないからか?)
(それならこっちが有利ね! まずは!)
ミエダが魔獣の肢のほうに移動する。その様子から察したゼクトも同じように肢に迫った。何をするか分かったからだ。




