戦う意思2
戦う意思を決めたゼクトとミエダは、ニナールに近寄って質問を始めた。
「ギルマス、ちょっといいか? あの魔獣は初めて見るのか?」
「何か記録が残ってるなら対処の参考になるんだけど」
ニナールは吐き捨てるように答えた。
「あんなもん、私が生きてきて始めて見るバケモンだよ!」
どうやら、本当に初めて経験するような未曽有の危機だったようだ。さっきはうまく的確な指示を出したギルマスでも恐怖といら立ちが隠せなくなったようだ。冒険者たちの編成がまだ終わらないからだ。彼らも人、恐怖と向き合うのに時間がかかる。
「ギルマス、俺たち二人が最初にあの魔獣を引き付けておくから、その間にここに居る全員で町の住人の避難を優先してほしい」
「な、何い!?」
「さっき言ってた二手に分かれて行動する作戦だと編成に時間がかかる。流行り病のせいで動ける冒険者も少数。そもそも、魔獣相手に囮になろうという人も更に少ない。それなら、Sランクに匹敵する強さを持つ私達二人が出向いたほうがいいわ」
「な、な、な……」
ニナールはそんな提案をしてきた二人に驚愕した。そうしてくれるなら助かるのだが、ニナールは首を縦ではなく横に振った。
「そんなこと頼めるわけないじゃないか! あんたたち二人はこの町に来たばっかりだし、何より私やあの子の母親の恩人だ! そんな無茶のこと頼めるはずがないだろう!」
「そうだよ、君たち二人のような若者にそんな危険のことを託せるはずがない」
「編成はもうすぐ終わるから一緒に避難を手伝って!」
ニナールは二人の提案を承諾しなかった。彼女だけではない。ギルド職員全員からも留まるよう説得されてしまう。だが、二人の意思は変わらない。
「ギルマス、俺達に興味持ってるんじゃないか? 職員の人たちから俺達がどんな魔物を換金したか分かるなら、おおよその実力が分かるはずだ」
「ランクA・Bの魔物にドラゴンの一部、あなたも確認したんじゃあないの?」
「……それは」
二人の言葉にニナールは言いよどんだ。二人はこの反応を図星だと思った、本来のニナールならこの程度のやり取りならはぐらかすだけなのだが、状況が状況なだけに反応してしまった。ニナールは少し考えてから言葉を吐く。
「……そうだねえ。あんたらの持ってきた魔物を見せてもらったけど、見事な手際だと思ったよ。ドラゴンらしき素材を見ても、確かにSランクに行きそうな手練れだと判断してもいいほどだ。ルルを町まで送り届けたり、ギルドで暴れた馬鹿を止めたり、病気を治してくれたりと悪い奴でもなさそうだ。頼まれてくれるなら大助かりだ」
「それなら……」
「だが!」
ゼクトの言葉を遮るようにニナールは区切った。大事なのがここからだ。ニナールはゼクトに真剣に語る。
「そこにいる、ミエダっていう子は流行り病……病魔を治せるんだろ? あんたは分かんないけど、そんなことができるのはこの町でその子しかいない。そんな子を一番危険なところに行かせられるわけがない」
「俺達は強いですよ」
「こっちも治す方法が確立されてないんだ。どうか、分かってくれ!」
ニナールは引き下がらないようだ。職員たちはそんな彼女の真剣な態度に驚いているようだ。
(確かに、今この町で病魔を治せるのはミエダだけだ。この町の人にとって現れた唯一の希望と言ってもいい。ここは従うべきか?)
ゼクトも考える。この町の人々の気持ちを考えれば、ニナールの言うことが正しいのだ。初めて町に来たゼクトとミエダに最前線で戦わせることのほうがおかしいかもしれない。
「あの~、病魔のことなんだけど……」
ゼクトとニナールの会話にミエダが割り込んできた。
「病魔を治す薬、出来てるわよ」
その内容はその場にいる全員が目をむくものだった。




