表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
21/27

第21話 戦う意思

 ゼクトとミエダ、それにギルマス・ニナールと職員たち、冒険者たちが目にしたのは、町にゆっくりと迫ってくる巨大なサソリの姿をした魔獣だった。


「キシャアアアアアア!!」


 ニナールと職員たちの後方で、ゼクトとミエダも魔獣の姿を確認して驚愕してしまった。ゼクトは隣にいるミエダにも確認する。今見ている魔獣の正体……ではなく、これが夢か現実かを。


「なあ相棒。これは夢じゃないよな?」

「ええ……。私も自分の頬をつねったけど夢じゃないわ」

「そうか、残念だ……」


 ゼクトは頭を抱える。ミエダは目を細めて魔獣を睨み続ける。


「何でジャイアントスコーピオンがこんな場所に出てくるんだろう?」

「ジャイアントスコーピオン?」

「魔界で有名な魔獣の一種よ。結構強いほうの魔獣だったから、魔王軍でも遭遇したら苦労をかけさせられる程度の強さなんだけど……」

「ええ!? そんなヤバい奴が……」

 

「キシャアアアアアア!!」


 ゼクトの言葉を遮るほど大きな雄たけびを上げるように鳴く魔獣。大きな屋敷二つほどの大きさの巨大なサソリが迫ってくる光景は誰が見ても恐ろしかった。それは冒険者どころかギルドマスターですら例外ではない。誰もが青ざめている。もしくは恐怖で震えている。


「な、何なんだあれは! どこからやってきたんだ!?」

「どう見ても魔獣じゃねえかよ!」

「どうすりゃいいんだ!?」

「倒せっこねえ! この町はおしまいだ!」


「しっかりしろ!! 冒険者ども!!」


「「「「「!!??」」」」」

 

 冒険者たちが恐怖のあまり叫びだすが、ここでいち早くニナールが正気に戻って冒険者たちに大声で一喝して指示を出す。


「まずは二手に分かれるぞ! 一方は住人の避難を優先し、もう一方は私と共に魔獣の注意を引いて町からできるだけ遠ざけるんだ! 決死の覚悟を決めたやつは私についてきな! それ以外は住人を守れ!」


 流石はギルドマスターというだけのことはある。的確な指示を出してこの事態に挑もうというのだ。指示を聞いた冒険者たちは話し合ったり口を閉じて俯くなどして考え始める。その間にゼクトはミエダに話の続きを聞く。


「流石はギルマスだ。……ところで話はそれちゃったけど、魔界の魔物なんだよな?」

「ええ。本来ならこんな場所に現れるなんてありえないわ。もっと暗い場所やエサが豊富な場所を好むはず、そもそも人間の世界に出てくるはずがないのに……」

「どうしているのかは、この際後で調べればいい。今重要なのは、どうやって倒すかだ」

「……ギルマスたちに協力するの?」

 

 ミエダがゼクトに試すように質問する。それに対してゼクトはニヤリと笑みを浮かべる。そして、闘争心あふれる笑顔で答えた。


「当然さ。乗り掛かった舟ってこともあるが……俺達はすでに暗い闇の底でヤバい状況を切り抜けただろ?」

「…………」


 それはミエダが封印されたダンジョンのことだ。二人は偶然出会い、二人で協力し合ってダンジョンの奥の魔物を倒して攻略し、外の世界に足を踏み入れたのだ。


「そして、今は新たな目的のために新たな闇の底に挑もうとしているようなもんだ。違うか?」

「アニキ……」


 二人の目的は、初代魔王に関わるダンジョンを巡ることだった。おそらく、最初のダンジョンのような、もしくはそれ以上の困難が舞っている可能性があるということだ。


「俺達はそのための旅を始めたばっかりなのに、こんなところですぐに逃げ出すなんて格好悪いと思わないか?」

「……ふふ、そうねえ」


 今度はゼクトがミエダに試すように質問する。それに対してミエダは獰猛な笑みを浮かべる。そして、獲物を狙い仕留めるような目で魔獣を見ながら答えた。


「私達の行く手を阻む存在は何者でも許さない。たとえ魔獣でも排除するわ」

「決まりだな」


 魔獣に対する二人の方針が決まった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ