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第18話 初耳なんですけど

 ニナールの発言の意味を理解した時、その場にいるギルド職員たちが反応した。


「何言ってんですか! あんた昨日まで病人だったんですよ! そんな人を町の周辺の探索の指揮官に? やめてください!」

「そうですよ! そもそも今日から仕事してる時点でおかしいですから!」

「せめて、もう一日休んでください!」


 ギルド職員たちがブーブー文句を言い続ける中、肝心のニナールは笑い出した。


「はっはっは! な~に言ってんのよ! こんなに元気になったんだから、これ以上休んじまったら逆に毒だよ! 心配すんなって!」


「「「なっ!?」」」


 職員たちは絶句する。確かに元気そうに見えるが、昨日は意識を失ってしまうような状態だったのだ。心配しないほうがおかしい。


「「…………」」


 そんなやり取りを見ているゼクトとミエダは、ちょっと不思議に思っていた。二人もニナールの元気すぎる姿がおかしく見えるのだ。


「なあ、治したのと同時にあんなに元気になるように回復魔法をかけたのか?」

「そこまでは……。確かに病気で体力が低下してるだろうからと回復魔法をかけたけど、ちょっとだけよ?」

「ちょっとだけ、ね」


 この時の二人は、ギルドマスターについて別々の考え方をした。


(ミエダの『ちょっとだけ』だということは結構な効果を持つ魔法になるのかな?)

(あのギルドマスターさんって人望だけじゃなくてすごい身体能力があるのかしら?)


 実は二人の見解はどっちも正解だった。ミエダの魔法は常人通りもずっと高い効果も持っているし、ニナールもギルドマスターに選ばれるだけあって高い身体能力があるのだ。昨日はだいぶ危険な状態だったが治ればどうということはないらしい。


「そこの二人もどうだい? 一緒に見て回ってもらえないか? 恩人にこんなことを言うのもなんだが、人手が足りてないんだ。頼める?」


 ギルドマスターに話を振られたふたっりは顔を見合わせる。お互いに頷くとゼクトのほうが口を開く。


「それなら喜んで受けます。俺達も気になってしまったから調べてみようと思っていたところなので」

「そもそも、病魔が原因という所から異常なのよ。私が見たところだと大きな魔獣がいそうな環境じゃないのにね」


「おお! 手伝ってくれるか……今なんて? 魔獣?」


 ミエダの『魔獣』という言葉にニナールが、ギルド職員が、隣にいたゼクトまでもが一瞬固まてしまった。ギルドの人間であれば魔獣がどんなものかがすぐに理解できるからだ。


「魔獣ってどういうことだ!? 病魔と、流行り病と何か関係があるっていうのかい!?」

「嘘でしょ!? 大型の魔物のことでしょ!? そんなもんがこの町の周辺に!?」

「馬鹿な! それならもっと目だあっはずだ、ありえない!」

「ふざけないでくれよ、そんなもんいるわけないだろ!」


「おお~い、相棒! 俺も初耳なんですけど!?」

「まあ、あくまで私の推測なんだけどね……」

 

 この場にいた誰もが驚く中、ミエダは自身の推測を述べた。


「私が魔法で詳しく病魔の原因を調べてみた結果、魔物の毒素みたいな感じなのよ。それも魔獣並みのね。でも、この辺りでそんな気配は感じられないのよ。本当にどういうことかしらね」

「それ早く言って欲しかったんですけど!?」


 ゼクトが叫んだことは、その場にいるミエダ以外の全員の気持ちだった。


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