第17話 病魔
起床したゼクトとミエダは朝食を食べた後、町の様子を見てみた。昨日の遅い時間に町に入ったため、普段の町の様子を見ようと思ったのだ。
「これは、ちょっと……」
「……思ったより人がいないわね」
流行り病が出回ってると聞いてはいたが、あまりにも外に出ている人が少なかったのだ。子供が外で遊ぶ光景すらない。商店でも閉めている店が多い。これではゴーストタウンに見えてしまいかねない。
「なあ、相棒。ギルドマスターやルルの母親は治ったんだよな?」
「ええ、バッチリよ」
「それなら、病気の詳しい原因も分かるんじゃないのか、予防法とかも」
「そうねえ、あれは病魔ね」
「病魔?」
ゼクトは聞きなれない言葉を聞いた。「病魔」とはミエダの知識に入っているらしいが、今の時代を生きるゼクトが知らないということは、それは厄介なものだろう。
「病気を巻き散らす目に見えないほど小さな魔物だったり、病気を発症する魔物の胞子の総称ね。この町の流行り病の場合は魔物が吐くような毒が原因よ」
「おいおい! 魔物が原因ってことかよ! ていうか毒ってことは……」
「そういう魔物がこの町の近くにいることになるわ」
「!?」
ゼクトは驚いた。毒を巻き散らすような魔物がいれば、ギルドが真っ先に討伐対象に指定した冒険者を集うことになっているのだ。しかし、
「……だけど、それはおかしいぞ。ギルドの掲示板を見たけど毒を吐いて巻き散らすような魔物の討伐以来なんて無かったぞ。それにそんな魔物が出たって話もこの町じゃ聞かないし……」
「う~ん、毒を吐く魔物も種類があるけど、だいぶ目立つタイプが多いわよ? この時代は分からないけどね」
「俺もそこまで魔物の詳しい種類とか知らないから、専門家にでも聞かないと……そうだ!」
「何? どうしたの?」
「後でギルドマスターに聞いてみようぜ。昨日、仕事仕事って言ってたしな」
「そうね、色々なことが知れるだろうしね」
ゼクトとミエダは、町を十分眺めたらもう一度ギルドを訪ねることにした。ちなみに、ゼクトが病魔について気になったのは、ギルドマスターとルルの母親が苦しんでいる姿を見たからだった。二人は治ったのだが、まだ苦しんでいる人がいると思うと何とかしたいという思いがこみ上げていたのだ。この辺りはいかにも勇者の息子らしい。
(ルルの母親や町の人達を苦しめる病気。何か力になれるなら何かしてやりたいからな。ルルとは知った顔だし)
一方、ミエダもルルのことを考えて病気のことを気にかけていた。ルルのことを気に入っているため、万が一にもルルが病に罹ることを危惧していたのだ。母親が罹れば娘にうつってもおかしくない。
(この病魔、過去の知識だけど覚えがなくもないわ。でも、そんなことが……?)
二人は一人の小さな少女のために、町に救う病魔に立ち向かう気になったのだ。
ギルド
「ふうん、毒を巻き散らす魔物ねえ」
ゼクトとミエダはギルドマスター・ニナールに病魔のことで相談している。本来なら、よほどのことでもない限りギルドマスターに面会できることはない。だが、二人はギルドマスター個人の恩人ということもあって簡単に面会できた。
「私も罹った病気の正体が病魔、つまり魔物の仕業か。この辺りにそんな魔物がいたなんて話は聞かないが、ギルドも職員の半数が休んでるしねえ」
「どこかの土地からやってきたということはないでしょうか?」
「ふむ、その可能性もあるな」
ニナールは二人から聞いた話を頭の中でまとめて考え出した。そして、ソファーから立ち上がり、やる気に満ちた顔で宣言した。
「よし、町の周辺でそれらしい魔物がいないか探索しよう。この私が指揮官になってね!」
「「「ええ!?」」」
「「!?」」
その場にいた誰もが驚いた。職員もゼクトとミエダの二人も声にこそ出さなかったが、目を大きく見開いた。




