第15話 愚かな大男3
「お、落ち着けよ! ていうかいい加減離せ!」
「これが落ち着いてられるか!」
グロンショは乱暴に掴んでいたオラウの胸ぐらを放した。オラウは乱れた服を整えながらも、悪態をつきながら弁明を始める。彼は冒険者ではないのだ。グロンショ達に暴れられたら敵わない。
「くっ、ギルドマスターの件は俺のせいじゃないだろ! 悪いのはあの女を治しやがった例の二人じゃないのかよ!」
「! ……そうだ、そうだったぜ。あいつらのせいでこの町での俺の天下がパアになっちまったんだ!」
グロンショの脳裏に今度はゼクトとミエダの顔が浮かんだ。自分を嘲り笑う二人の子供の顔、自分を笑いものにした憎たらしい子供の顔、グロンショはそれを滅茶苦茶にしてやりたいという気持ちになった。誰が何と言おうとだ。
「あいつらは絶対に許さん! オラウ、何かとんでもない魔道具か武器はないのか!」
「おいおい、その前にギルドマスターはどうすんだよ」
「あいつもぶっ飛ばす! それかもう一度病気にしてやる!」
「「「「「お、親分……」」」」」
グロンショの狂気すら感じさせる気迫にオラウも子分たちも引いてしまった。ヤバい、どうにかしないとマズい。そんな気分になっていた。
「そ、それならちょうどよさそうなものがあるんだが……」
「何! それは何だ!」
「ここにはない。物置にあるんだ。ついてこい」
オラウは急いで物置に向かう。その後にグロンショと子分たちもついて行く。
物置。
物置の扉を開けたオラウは、中に入ってあるものを取り出した。厳重に保管された『箱』のようだが、この中身が目当てらしい。
「おい、この中にに何が入ってんだよ。魔道具か何かか?」
「いや、それよりももっとヤバいものさ」
「ヤバいもの?」
「「「「「?」」」」」
「封印された魔獣さ」
「魔獣!」
「「「「「!?」」」」」
「魔獣って、あの魔獣か!? 魔物のでっかい奴だろ!?」
「ああ、多分その魔獣であってる」
「「「「「「!」」」」」」
ここに居るオラウ以外の全員が驚いた、と同時に距離を取った。オラウの言う魔獣とは、超大型の魔物を指す存在のことで、その多くがランクSを超えるとされるのだ。多くの冒険者や兵士に戦士が一緒に戦ってやっと倒せると言われているのだ。
「おいおいおい! 何でそんなもんがあるんだよ! ヤバすぎだろ!」
「実のところ、俺も半信半疑なんだよな」
「はあ?」
「これを売ってくれた相手が素性の分からないやつだったんだ。病気の入った毒薬もそうだったんだが…………まあ、毒薬のほうは本物だったけどな。面白半分にこれも安く買い取ったんだが、今となっては本物の可能性が高い」
これは事実だった。病気の毒薬も本物なら利用できると軽く考えて買ったものだったのだが、思っていた以上に病気が酷いものだったことを知って、一緒に買い取った『箱』も危険なものである可能性を考えて物置に保管したのだ。
「へえ、面白そうじゃねえか。早速使わせてもらうぜ」
「お、おい、ここで開けるなよ! この屋敷が壊れる!」
「分かってんよ、こいつは切り札としてあの二人の前で使わせてもらうからな! ははははははははは!」
「「「「「は、はははは……」」」」」
「ついでにあのギルドマスターも潰してやるよ、ははははははははは!」
「…………」
『箱』を受け取ったグロンショは機嫌がよくなって大笑いする。子分たちは仕方なさそうに笑っている気もするが……それを眺めるオラウのほうは心の中でホッとしていた。二つの意味でやっかいごとが解決したのだ。一つはグロンショの機嫌がよくなったこと、二つ目は危険極まりない『箱』を他者に押し付けることができたことだ。『箱』に関しては取り扱いが難しかったため、手放せて本当に良かったと思っているのだ。
しかし、世の中そんなに甘くはない。オラウはこの時、売った相手から『日光にあててはいけない』と言われたことをグロンショに伝え忘れていた。後にこれがとんでもない騒動を起こしてしまうことになる。




