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9話




○チュートリアルルーム 草原


鮮血が舞う。


そして俺自身も宙を舞っている。


死んだな。


自分の状態を察しそんなことを考える。


アルブトーラムの攻撃を右腕で防ごうとした結果その右腕ごとその一撃を受け、爪により身体を抉られている。


ただの体当たりで死にかけていたんだ、そんな攻撃受けて死なないはずがない、数メートル飛んだ後、地面に打ち付けられて終わりだ。


そんなことを考えてしまう。


数メートル飛ばされる、その数秒間が随分と長く感じる。


俺は目を閉じその時を待つ、


………。


…………。


……………。


……………こない。


目を開くと、太陽の光による逆光の中AIの少年ディルクが見える。


ディルクはニカッと笑ってこちらをみて手を振っている。


幻覚まで見え始めたか、なんと言う恐ろしい技なんだアルブトーラム。


そんなことを考えもう一度目を閉じようとする、


「ちょっと!なんでまた閉じようとしてるのおにーさん!」


そんなソプラノボイスが聞こえてくる。


「なっ、幻覚じゃない、だと…」

「何を寝ぼけたことを言ってるのさ……。ここはゲームの中だよ」


やれやれと呆れたようにそう言う。


「わざわざ空間内の時間を止めてまで来たのに…、なんだか僕がバカみたいじゃないか」

「ん?俺は負けて死に戻ったんじゃないのか?」


そう言われれば、天候も暗雲のままだし身体も傷だらけのままだ。


宙に待った状態のまま周りを見渡すと、アルブトーラムが俺を攻撃した状態で固まっている。


俺自身もHPが削れ、無くなる寸前で止まっている。


「本当に、止まってるみたいだな」

「だからそう言ってるじゃないか…」


更に呆れたようにディルクが言う。


すごいな、どうやって止めているんだろうか、ゲーム全体の時間感覚を伸ばして止まっているように見せているのだろうか、それともこのフィールドの俺たち以外を止めているのだろうか?


つい気になりそんなことを考える。


そして、考えるのをやめ体を動かそうと力を入れようとする。


体を動かそうとするが、首から上しか動かせず目の前のディルクに視線を戻す。


「何か考え込んでると思ったら、急に体を動かそうとして…おにーさんは忙しい人だなぁ」

「身体は動かせないのか?」

「あぁ、この空間の動きを止めたからね。本来なら僕以外動けない状態なんだけど、今回は……てっ、そうじゃないよ!」


そう言ってディルクは自分自身にツッコミを入れる。


「僕は、アルブトーラムのことで話しに来たって言うのに、なんで空間のことについて説明してるのさ!」

「ディルク…なんか忙しそうだな」

「おにーさんのせいだよ!」


ディルクがそう叫ぶ、ハァハァと息を切らしてる。


俺はただここに横になっているだけなのになぜ怒られるのだろうか。


俺はそんなことを考える。


「ハァハァ、おにーさんといるとペースを乱されるよ」

「まるで俺が悪いみたいじゃないか」

「それはおにーさんがっ……!はぁ、もういいよ…本題に戻すよ。さっきも言った通りアルブトーラムについてだよ」


呆れ切ったようにそう言うと本題について話し出した。


「わかってると思うけどアイツを呼び出したのはルシュトールだよ。まぁ、無理矢理このフィールドをねじ込んできたから相当な弱体化を受けているけどね」

「あれでも弱体化されてたのか、本当に化け物じゃないか」


俺がそう言うとディルクは驚いた様にこちらを見ると大声でで笑い出す。


「あはははは!そりゃアイツはそこら辺のボスとは違って、ネームドだからね。弱体化されてただけでレベル5のプレイヤーが張り合えるわけないじゃん、ははっ!止めたのに誰かさんは止まらなかったからね!」

「……ッ!しょうがないだろプライドの問題だ」


恥ずかしくなりそう言い訳する。


少し笑い続けるとはぁ、と一息ついて落ち着いたかと思うとこちらを見てまだ少しニヤニヤしながら話し出す。


「ああ見えて本来の1割くらいしか能力を出せてないんだよ、全くスキルを使わなかったのがその証拠さ」


そう言われれば全く使ってなかった気がする。


ボスオオカミですらなんらかのスキルを使っていたのに、確実にその何倍も強いであろうアルブトーラムに関しては最初の咆哮以外見ていない。


だが、それ以上にあれで1割程度であることに驚く、自分がまるで手も足も出なかったのに相手は全然本調子ではなかったことに圧倒的な力の差を感じる。


「その明らかに倒せない敵を出しておきながらルシュトールのやつ"これは試練なのだ、この程度でねをあげていては話にもならん"なんて言い出すんだ勝手に人を試練にかけておいて何を言ってるんだって話だよね」


そう言って同意を求めてくる。


だがしかし、ディルクの言わんとすることもわかる。


いきなり割り込んできておきながらそんな言い方をされれば、


「確かに少しイラっとくるな」

「でしょっ!だから少し僕がおにーさんに手を貸してあげる。そしてアルブトーラムを倒してルシュトールをギャフンと言わせようよ!」


そう話すディルクの姿はまるで面白いいたずらを思いついた子供の様で、ルシュトールを出し抜いたときのことを考えているのか楽しそうにニヤニヤと笑っている。


確かに俺自身も負けたままでは癪なので今回はディルクの案に乗ろうと思い返事を返す。


「よしそうと決まれば早速話し合いだ。まずアルブトーラムの能力について話そうか」


ディルクが話し出す。


ディルクの説明でわかったことは全部でこんな感じだ。


アルブトーラムについて

・ユニークボスモンスター【鮮血の餓狼】がいくつもの戦闘を繰り返し、そこにルシュトールによる眷属化が加わったことで進化した個体。


・弱体化した現在使用できるスキルは、最初に使用した[餓狼の咆哮]の他に[影の牙]、[餓狼の矜持]と言った三種類。


・[影の牙]は対象の影に干渉し、そこから対象に攻撃を加えるスキル。アルブトーラムと一定以上距離を取ると使用してくる。


・[餓狼の矜持]は自身のHPが25%を切ると発動し、[飢餓]状態になるがステータスが100%上昇する。ただし[飢餓]状態であるため、1秒毎に1%HPが減少する。


アイテムについて

・スライムジェル、ベタベタしていて手にくっつく、透き通る水色をしている。調合の素材として使われる。


・汚れた布、何に使われていたかは知らないが泥だらけで汚れている。ひどい匂いがし、そのまま素材として使うことはほとんどない。


・王毒袋、川に一滴流すだけでそれより下流の生物は死滅するとまで言われる恐ろしい猛毒。国によっては持っているだけで捕まりかねない。


・死蛇の剣尾、デットリーサーペントの尻尾。剣状に尖っており、その切れ味は鋭く石を割く。武器作成の素材として使われる。


・死蛇の黒燐、デットリーサーペントの鱗。その硬度は並の武器では傷つけられないほど硬く、防具作成の素材として使われる。


ディルクからの手助け

・先程あげたアルブトーラムの能力の説明。


・アイテムの説明。


・HPとEPの回復と状態異常の軽減により[骨折:中]から[骨折:小]へ、最後に受けた傷による[出血]や[毒]はなくなった。


と言った感じだ。


なぜ状態も全回復しなかったかと言うと曲がりなりにも試練ではあるのと、骨折が全回復していてはルシュトールも疑問に思うだろうからだ。


「ルシュトールに勘付かれないで済む限界はこの程度だろう。あとはおにーさんにかかってるからね」

「わかっている」

「本当に頼むよー」


そういって念押しする様に告げる。


「それじゃあ時間を動かし始めるからね」


ディルクはそう言うと俺の視界から消えていく。


消える直前に「頑張ってね」と言うとフッと消え、そして止まっていた時間が動き出し、またアルブトーラムとの戦闘が始まる。

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― 新着の感想 ―
[一言] これ、後で運営に苦情案件だよね 初心者のチュートリアルに出ちゃ駄目な奴
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