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8話




○チュートリアルルーム 草原


俺が呆然と立ち尽くす中、ボスのポリゴン状の粒子が空へ登っていく。


そんな中大狼がこちらを向いた。その瞳はまるでおもちゃを見つけた子供のように爛々と輝く。


そしてドサリドサリとその大きな身体をこちらに向け、ニヤリと笑い


「グオオォォォォォオン!!」


大狼がそう吠える。


それは、先程までのオオカミの様な物ではなくその咆哮だけで草原に風が吹き荒れ、大気がビリビリと震える。


空には暗雲が立ち込み、ところどころ雷がなっている。


《※緊急事態》

《ユニークボスモンスター:【歴戦の隻狼アルブトーラム】が強制乱入しました》

《これによりフィールドの天候が晴天から、暗雲:雷に変更されます》

《スキル【餓狼の咆哮】により、状態:[恐怖][空腹]が追加されます》

《※フィールド:チュートリアルルーム 草原内では乱入モンスターは弱体化されます》

《※尚このモンスターからは逃げられません》


そうシステムからの報告が来る。


状態異常の欄に[恐怖]と[空腹]が追加されていて、HPとMPゲージの下にEPという新しいゲージが現れていて、すでに三分の二ほど無くなっていた。


そしてまたシステムの音声が聞こえて来る。


《状態異常[恐怖]により会心率が低下します》

《状態異常[空腹]によりEPが大幅に減少し、行動時のEP使用率が150%上昇します》

《EPの残量が40%を切りました。これにより全ステータス−20%されます。また、EP残量が0になってしまうと[飢餓]に陥ります。注意しましょう》


確かに少し気だるさを感じる、これが[空腹]によるステータス低下なのだろう。


そうやって自分の状態を確認する。


「あきらかな化け物を相手にこれはないだろ……」


先程まで厳しい戦いをしていた相手を一撃で倒してしまうと言う理不尽な敵を前にかかったデバフに対してロイドの口から自然と声がもれる。


[恐怖]によるものだろうか、さっきから震えが止まらない。


ヤツと目があった途端、その恐怖はさらに膨れ上がる。


あぁ、ここから逃げ出したいそんな考えで頭の中はいっぱいになってしまう。


そんな俺を見て目の前の大狼はニヤリと笑みを浮かべ、たれ続けるヨダレを止めることもなくゆっくりと歩み寄って来る。


大狼のその行動は俺の恐怖をより一層煽り、心臓が異常な速度でバクバクなり出す。


動かないと、いやさっきまでみたいにすんでのところでよければいい、無理だ、なら逆に近づくか?出来るはずがない、様々な考えが頭の中をよぎるが、[恐怖]により体を動かすことができない。


俺が考えている最中もゆっくりと大狼は近づいて来る。


考える。


動かない動かない動かない動けない、なんで?


ゆっくりと大狼が近づく。


さらに考える。


動けないのは状態異常のせいだ、[恐怖]をどうにかすればいい、どうすればいい?


大狼の足音が次第に大きくなって来る。


さらに考える。


[恐怖]に打ち勝つ何かがいる。


痛みだ。


そうだ痛みだ!


その考えにたどり着くと俺は手に持っていた短剣を戸惑いもなく自身の右足に突き立てる。


「グッ……!」


その痛みに叫びかけたがなんとか抑え、自身の状態を確認すると状態異常の欄から[恐怖]が消えていた。


それを確認すると目の前の大狼、アルブトーラムに視線を戻す。


アルブトーラムは俺の行動に少し困惑するが、すぐさまその意味を察しまたニヤリと笑う。


そして、少しかがんだかと思うとーーー次の瞬間俺は数メートル先まで吹き飛ばされていた。


「ガハッ……⁉︎」


俺は草原に転がり込む、いきなりのことに一瞬理解できずにいた、が一瞬で9割近く減ったHPを見るに攻撃を受けたのだろう。


さらに状態異常の欄には[右腕骨折:大]まで加えられている。


さっきまで剣を握っていた右腕に力が入らない、

剣を構えていた結果、前に出していた右腕が攻撃された時に折れてしまった様だ。


「弱体化されてこれかよ……」


HP回復ポーションを取り出し飲む、HPが少ないので全回復する。


[骨折]は大から中に下がってはいたが依然として力が入らない、だがここで二個もHP回復ポーションを使うわけにもいかない。


「右腕はダメか」


右手で持てず落としてしまった短剣を左手で拾い、その場で一、二回ふるってみる。


少しぎこちないが、スキルのおかげで振ることはできる。


構え直しさっきまで俺が立っていた位置でなぜか座っているアルブトーラムを見つめる。


アルブトーラムはまるで俺が準備できるのを待っていたかの様に立ち上がる。


そしてまた少しかがむ、俺はそれを見るとすぐに横に飛んで避けようとする。


だが、避ける手前でアルブトーラムは攻撃を突進から爪による攻撃に変更し俺に当ててくる。


俺はとっさに短剣で受けようとするが受け切れずダメージを受けてしまう。


「グッ…!」


そのちょっとした攻撃だけで俺のHPのほとんどを持っていく、そのまま少し距離を取りながらHP回復ポーションを飲む、が今回はアルブトーラムはその足を止めることはなくそのまま次の攻撃を加えてくる。


それに短剣で対応するがあと少しのところで対応しきれず力で押されてしまいジリジとHPを削られていく。


「くっ……」


せめて[空腹]によるデバフがなくなればいいんだが……。


そんなことを考えているとアルブトーラムの前足によるはたきで飛ばされてしまう。


そしてまたHP回復ポーションを取り出そうとメニューを操作していると一つのアイテムに目が止まる。


「これならもしかしたら…」


そう小さく言うとアイテム欄からHP回復ポーションとそのアイテムを取り出し、食べる。


《生の肉を食べた為、状態異常[毒]になりました》


そんなシステムの音声が聞こえるが俺はそのまま取り出した"兎の肉"をたべ続ける、するとまたシステムの音声が聞こえてくる。


《EP残量が60%を上回ったことにより状態異常[空腹]が無くなります》


「よしっ!」


賭けに成功し思わずそう声に出してしまう。


HP回復ポーションを飲むと、アルブトーラムの攻撃と毒によってギリギリだったHPが回復し、さっきまでの気だるさがなくなっていた。


そしてまたアルブトーラムに対して剣を構える。


またアルブトーラムが少しかがむ動作を見て横に跳ぶ。


[空腹]によるデバフも消え、ギリギリだが避けることはできるようになっていた。


アルブトーラムは止まることなく追い討ちをかけてくるが、これにぎこちないながらも左手で短剣を使って受ける。


これを何度か繰り返しある程度攻撃パターンを理解した。


その中で追い討ちの後にほんの少しだが隙ができることがわかった。


俺はその時が来るまで攻撃を受け続ける。


爪による攻撃、牙による噛み砕きが続き、ついにその時が来る。


その一瞬の隙を逃さずアルブトーラムの首筋目掛けて短剣を振るが、俺はここで何か違和感を感じる。


短剣を振る途中視線の端でアルブトーラムがニヤリと笑みを浮かべたのが見えたが、俺はそのまま短剣を振るった。


すると、


キイィィン!


そんな甲高い音がなり短剣がその体毛に弾かれてしまう。


それを待っていたかのようにアルブトーラムは動き出しロイドに向けて前足をふりかざす。


まさかの出来事にあっけにとられてしまっていたのと体勢を崩してしまっていたことで反応が遅れる。


「しまっ……!」


その一撃を受けてしまう。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] ここまで嫌な敵ばかり出てくるとクソゲーとしか思えない。
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