7話
○チュートリアルルーム 草原
俺は短剣を構え、オオカミ達を見る。
そしてまたオオカミ達に向けて走りだす。
その俺の行動にオオカミ達も我に返りボスである一番大きな奴が大声で吠える。
「ガオォォォォォォオオン!!」
その声を合図に止まっていたオオカミ達も動きだす。
「ガアァ!」
そう吠えながら1匹飛びかかってくる。
避けながら短剣で切り込んでいくと「キャウン」と鳴いて着地できずに転げる。それにとどめを刺そうとするが、他の2匹が一気に飛びかかってきたので、これを後ろに飛んで躱す。
そして、ちょうど躱したところにボスが攻撃を加えてくる。
キイィィン!
ボスの爪と俺の短剣が当たる事で甲高い音が草原に鳴り響く。
ボスの攻撃を短剣で受け流す事ができそのままボスの前足に切り込むが、ボスはそれを物ともせずそこから次の攻撃に移る。
俺の首筋目掛けて大きく口を開けて噛み付く、するとボスの歯と歯が勢いよくぶつかる事でガキイィィン!と大きな音がなる。
これを後ろに避け、また剣を構えると次は他の3匹が出て来る。
「ガウッ!」
俺による傷のせいで、黒かった毛が血のせいで赤黒くなったオオカミがそう吠える。
周りの2匹も一緒に動き出し攻撃を仕掛けて来る。
その攻撃を避けながらこちらからの反撃の機会を伺う。
「まずいなぁ」
流石に3匹だと反撃の隙がないな。
そんなことを考えながらも避けた後に斬りつけようとするが、そこを邪魔するように他のオオカミが攻撃を加えて来る。
この連携を崩せればいいが…
そう考えると一つの考えを思いつく、
「ここは少し賭けにでるか…」
そう言ってオオカミの攻撃をかわした後、反撃を入れる。
すると、そこ狙っていたかのように1匹がロイドの首に噛み付こうとするが、それを左腕で防ぎ、
「予想通りだ!」
俺はそう叫びオオカミが噛み付いたままの左腕ごと地面に叩きつけ、その喉に短剣を突き立てる。
そして、1匹目と同じように短剣で首を搔き切るとオオカミはポリゴン状の粒子に変換される。
《対象の討伐を確認しました》
《ユニーククエスト:【導き手の試練】が進行します。進行度70% 討伐数7/10》
「2匹目」
システムの報告とともにそう言って次を倒すために動く、オオカミ達も俺を睨みながらも動きだす。
まず1匹目が俺に向かって飛びかかる。
これを避けながら腹に向かって切り込むと、オオカミは「キャウン」と言って転がる。
2匹目は飛びかかるわけではなく前足の爪による攻撃をして来る。
これを横に避け、そこから首筋に向けて短剣を縦に振るう。
するとスパッといい音がなりそのまま2匹目が倒れると、またポリゴン状の粒子にかわる。
《対象の討伐を確認しました》
《ユニーククエスト:【導き手の試練】が進行します。進行度80% 討伐数8/10》
「3匹目」
そう言って振り返ると、俺の一撃による傷でもはや立っているのもやっとなオオカミがそこにいた。
俺がそいつに近づいていくと、オオカミはおそらく最後の力であろうものを振り絞り飛びかかる。
それをかわして、オオカミの首筋に向け剣を振る。
《対象の討伐を確認しました》
《ユニーククエスト:【導き手の試練】が進行します。進行度90% 討伐数9/10》
「4匹目だ」
そう言ってHP回復ポーションを取り出し飲む。
飲み終わると、最後の敵であるオオカミ達のボスを見る。
ボスは他の4匹が俺と争っている間全く動かずその場でその光景を見ていた。
そしてその戦いが終わり、今度はこちらを見ている。
そこから体勢を低くしたかと思うと、前と同じ様にダンッ!と聞こえたかと思うと一気に俺との間を詰め、噛み付いて来る。
横に転がる様に避けるが、ザシュッと音がなり腕に攻撃が当たる。
「な……ッ!」
また、"避けたはず"の攻撃が当たったことに驚き腕の傷を二度見する。
そんな俺をよそにボスは俺に向けて攻撃を仕掛けて来る。
驚きながらも攻撃を避けながらさっきの攻撃について考える。
おかしい確実に避けたはずだ、確実に避けたはずの攻撃があたった?
考えながらも前足による攻撃や噛みつきなどをによる攻撃を避け続け、時々反撃を入れるというのを続ける。
確実に避けたはずの攻撃があたったのはアイツの何かしらのスキルによるものか。
スキルという答えに至り、意識を再び目の前のオオカミに向ける。
そして、攻撃を避けながら反撃を入れると少しづつイライラとしてきたのか、攻撃が単調になって来る。
そこにボスが俺に向けて大きく前足を振りかぶり叩きつける。
その一撃を避け、ボスの首筋を短剣で切りつける。
ボスは後ろに飛ぶ。
明らかに致命的な一撃にハァハァと息を荒げながらも、その目は敵である俺を離さない。
そしてまたボスは体勢を低くし、飛びかかる体勢に入る。
「そうか、この一撃で決めよう」
そう言って俺も剣を構える。
二人は睨み合い飛び出すタイミングを見計らう。
二人の間に静寂が流れ、俺の頬を汗がつたいぽとりと地面に落ちたのを合図に飛び出る。
「はあぁぁ!」
そう言って俺が飛び出し短剣をオオカミめがけて薙ごうとすると、
バチッ!
そうオオカミの背後に赤い稲妻の様なものが走ったかと思うと、俺は数メートル吹き飛ばされる。
「……ッなんだ⁉︎」
予想外の出来事に起き上がりそう叫ぶ。
そして目に入った光景に言葉を失う。
それは、まるで血を吸い込んだかのように赤黒い体毛を纏った隻眼の大狼が、ボスオオカミの首を踏み砕く瞬間だった。




