6話
正月の諸々や、作者の病気が重なって投稿遅くなり、
申し訳ありませんでした。
○チュートリアルルーム 草原
ディルクと別れてまた草原を走り出すと、数分走ったあたりでこのクエスト最後の敵たちが見えてくる。
俺はすかさずスキル【識別】を使ってそいつらを確認するが、当たり前のように全ての結果に"?"とでる。
「グルルル…」
そいつらは歯をむき出しにヨダレを垂らしながらそう唸る。
体高1メートルはあろう身体に黒色の体毛を纏い眼光だけで相手を殺せそうなほど目をギラギラと輝かせている。
その中でも一際大きな奴がこちらを睨みつける。
最後の敵であるオオカミたちを全員を確認したところで俺は短剣を構えて再度オオカミを見る。
「グルルル…」
オオカミ達が唸りながら俺をにらんでいると、
ダンッ!
そう聞こえたかと思うとこの群れの長と思われる一番大きなオオカミが10メートルはあったであろう俺との距離を一瞬で詰め、大きな前足を俺に向けて振りかぶる。
俺がこれを間一髪で避けると俺がいたであろう場所から後方数メートルにかけて地面が抉れる。
「ディルクが言った通り、マジで化け物だな」
そう言ってその光景に驚きながらも、ディルクとの会話を思い出す。
◆数分前
「おにーさんに最後に戦ってもらう敵は、オオカミです」
そう言ってディルクは、手で影絵の犬を作ってみせる。
「本来は、ハンターウルフって言う群れで戦うオオカミの魔物と戦ってもらう予定だったんだ。群れの中には、一番大きいボスのオオカミがいて、そいつが後ろから指揮をとりながら戦うんだ」
俺はディルクの説明に相槌をうって答える。
「本来なら、ボスは戦闘の際全く前には出てこないんだけどね、多分ルシュトールの眷属化による影響で好戦的になっていると思うんだ」
「へぇ、じゃあまずボスから来るかもしれないってことか?」
「そう言うこと、だから多分一番最初に気をつけるべきは周りの4匹より一番大きいボスだよ」
俺の返答をディルクは肯定する。
そして、さらに付け加える。
「それと単体ではボスが強いだろうけど、最も厄介なのはしっかりと指揮が取れている状態の他の4匹の動きだよ。ハンターウルフはあくまでも群れで動く魔物だからね、そう言うところから見ると指揮をとるはずのボスが前に出てきてくれるのは嬉しいのかもしれないね」
そのディルクの言葉に俺も共感する。指揮をとるべき個体が戦闘をすると言う事は、そいつを最初に潰せば後が楽になるだろう。
と言う事はやはりボスを最初に倒すべきなのだろうか?
俺がそんな事を考えていると、俺が考えている事を察したのかディルクが話し出す。
「確かに、ボスを最初に倒せば統率が取れなくなって後が楽になるだろうけど、多分それはきついと思うよ。そいつらがボスと戦っているのを邪魔しないはずないからね」
「やっぱり、そうなるよなぁ」
そうやって悩んでいると、励ますように話す。
「まぁ、僕からはこのくらいだからあまり考え過ぎないぐらいがいいよ、一応頭の中に入れとくぐらいに思ってくれればいいよ」
そう言ってディルクは笑う。
そう言われ、俺は悩むのをやめ、
「あぁ、そうしよう。ありがとうないろいろ教えてくれて」
そう答えると、
「いやいいよ、今回はこちら側が悪いからね」
とディルクは返し最後に
「気をつけてね、今回は少し嫌な予感がするから」
そういって苦笑いをしていた。
◆現在
俺が、そんな事を思い出していると目の前のハンターウルフ達のボスがこちらを睨みつけている。
「グルルル…」
そんな唸り声を出しながら少しずつ寄ってくる。
俺は、ボスを睨みながらも周りのオオカミ達の様子を確認する。
いつの間にか俺を囲むように位置どっていた4匹は、俺を睨みながら「グルルル…」と唸り続ける。
そんなハンターウルフ達の動きを警戒しつつ反撃の機会を伺っていると、ボスがまた動き出す。
ダンッ!
またそんな音が聞こえたかと思うと、ボスが一瞬で迫ってくる。
これを避けようと左に転がるが、スパッ!と聞こえ右肩を確認するとそこにはさっきのボスの一撃による傷ができていた。
「……ッ!」
確実に避けたと思えた攻撃が当たっていることに驚きながらも現状の確認をする。
俺はHPが減っている事を確認し目の前のボスのことを睨む、すると今度は休むことなくボスはこちらに攻撃を加えてくる。
最初の動きと違う動きに一瞬迷うが、飛びかかる攻撃よりも速くはないので難なく避けながら、こちらからも攻撃を加えていく。
「ガウッ!」
俺からの反撃にそんな声を上げるボス。
それを何回か繰り返しているとボスが大きな声をだす。
「ガオオオォォォォォオン!!」
そう叫びヤケになったのか、前足による大振りを俺目掛けて叩き込む。
ドガアァァァン!
そんな爆音がなり大振りにより地面が砕かれる。
俺はその一撃を避けると、大振りによりガラ空きになったボスの首にむけて短剣を薙ぐが、
ガキィィン!
俺の剣は、ボスに首に当たる前に周りにいたオオカミ達の1匹に防がれる。
「ガウッ!」
攻撃を防がれたことにより体勢が崩れた俺目掛けてけて、他の3匹が飛びかかる。
が、流石はAGI 100といったとこだろうか、体勢を崩しつつもその場から一瞬で飛びのき、もう一度短剣を構える。
「チッ、そう簡単には倒させてもらえないか…」
そんなことを言いながら、目の前の4匹を警戒する。
すると1匹俺のボスへの攻撃を防いだオオカミがまた吠える。
「ガウッ」
他の3匹が俺を囲むように俺の周りを歩き回る。
俺がそんな4匹に注意していると、
ダンッ!
と地面を蹴る音が聞こえたかと思いその方向にバッと、振り返ると4匹に注意して見れていなかったボスがすぐ目の前まで来て前足による一撃を入れようとしているところだった。
「なっ忘れて……ッ!」
突然の事に避けることが出来ずそのまま短剣で受けようとするが、
「ぐっ…!」
流石に短剣では受け切れずたはたき飛ばされる。
地面を転がりながら数メートル飛ばされた所で起き上がり自分の状態を確認する。
HP回復ポーション飲みなくなりかけていた自分のHPを回復する。
「あー、クソッ」
目の前のオオカミ達に対してそう言って悪態を吐くが、そんなことをしている間にもまたオオカミ達が迫ってくる。
それに対し俺は、短剣を持ち俺の方からもオオカミに向けて走りだす。
まず先頭にいた1匹が飛びかかってくるのでそれに対して、少しかがみ首筋に短剣をブスリと刺す。
そして、刺したままオオカミごと剣を地面にドンっと叩きつけ、押さえつける。
突然のことに驚いたオオカミ達は動けずその場に立ち尽くしていた。
そんなオオカミ達のことを気にせず押さえつけていたオオカミの首から搔き切るように短剣を抜くとオオカミは動かなくなり、ポリゴン状の粒子になり宙を舞う。
「まずは1匹、やっぱ俺はこっちの方が向いてるな」
粒子が舞う中、俺はそう言って残りの4匹に向けて短剣を構える。
《対象の討伐を確認しました》
《ユニーククエスト:【導き手の試練】が進行します。進行度60% 討伐数6/10》
「さぁ、反撃だ」