41話
誤字報告や感想等ありがとうございます。
更新頻度が落ちてしまい申し訳無さがありますが、更新を続けるかはありますので、飽きずに呼んでもらえると幸いです。
○第二の街アーインス 宿屋
いつも通りの夕方ログイン仕事終わりにそのままログイン。
今日は昨日と同じ山の方に向かう。
少し硬めの宿屋のベッドから身体を起こしながら適当に腕や首を振ってみて身体の動作を確認する。
確認し終わると昨日ゼオンが話していたことを思い出す。
昨日ゼオンは獣神について思い出したことを話してくれたんだったな…。
「確か、貴族からの依頼で神殿関連の情報を調べてた時に見つけた書物に載ってた事らしいが…」
結構古めのものだった事もあり、全部が読めたわけではないらしいが読める限りではこう書かれていたらしい。
"天獣 聖星よりて小片 天秤へ掲げ この天秤左方へと傾かん"
"故に欠けし天獣 転変せし理の元 七星 七天へと転変す"
"欠けし天獣等 大罪を犯しし獣 封ずるための礎となりてその身を捧ぐ"
"故にその身 空より地へと降る"
"故にその身 隠匿せんとす"
"隠匿せし身 探り出しし者に試しの儀を課す その儀乗り越えしもの 欠けし天獣より祝福を受けるだろう"
"この書読みし者へ 我が知する天獣の一片 白き獣技天ヴァーニアについてここへ記す"
"その名に壱を刻みし街 近傍にて佇みし山 白き獣が降らん"
"かの白き獣 山中自らを祀る遺跡にて 汝に技を試す儀を貸すであろう"
と言った事が書かれていたらしい。
ゼオン曰く、『天』はこの場合『神』を指し、『星』は『精霊』、を指す言葉らしく『天獣』というのも『獣神』を指しているそうだ。
まぁ…他にもわからないところがあるんだが、それを踏まえて今回気になった最後の部分だけ要約すると、
名前に1を表す言葉の入った街の近くの山に遺跡があり、そこに技神ヴァーニアがいて、技を試す試練が受けれるらしい。
という事だ。
そこまで解読してはいたがあと一つ"名前に位置を表す言葉の入った街"というのがわからず、後回しにしていたらすっかり忘れてしまっていたらしく記憶にとどめておくだけになっていたそうで、思い出したついでに異邦人である俺に聞いたという事だそうだ。
まぁ……上流階級にもその名を知られる情報屋のゼオンに対して、俺はこのゲームを始めて数日分かるはずもないがな…。
そんなことを思いながらも考えてみた時、最初に浮かんだのはヌールの街だった。
初期リスポーン地でもあるヌールは、最初の街ということでプレイヤーの間で第一の街と呼ばれているこの街ではないかと思い、ゼオンにそのことを尋ねるが、
「それは三年前お前たち異邦人がヌールのことを第一の街と呼んでいたのを聞いて、一通り探したが見つからなかった」
と言われてしまった。
その時点ではそれ以上に考えは出てこなかった。
一応ログアウトしてからも考えたがわからなかったので、フレンドたちに聞いてみたらまさかのゲルドから秒で返信が来たのだった。
その内容もたった一言。
アーインスじゃね?
それに続いてアーサー、ししゃもの順で返答が来て二人ともアーインスと答えてた。
他の二人は俺と一緒でわからなかったらしい。
アーサーが言うにはアーインスと言うのはドイツ語でEinsまぁ…正しくはアインスと言い数字の1を表すらしく、それのことを指してるのだろうと言われた。
へー、ドイツ語ねぇ……。
博識なアーサーや、少し抜けてはいるが頭は良いししゃもは分かるとして、ゲルドが知っていたことに正直驚いた。
ゲルドどこでそんな知識を…。
そうやってゲルドの謎の知識に対して疑問を持ちながらもフレンドたちに「ありがとう」とシンプルにお礼の返事を返し、俺はそのまま眠りについた。
そして今に至る。
まぁ、長くなったがようするに今日山に行く理由は、技神ヴァーニアの遺跡を探すためということだ。
俺は今日することの再確認を済ませたところでベットから腰を上げ、宿屋を後にする。
◆
時間をかけすぎる訳にもいかないので、全速力で駆け抜ける。
途中何人かのプレイヤーとすれ違ったが、スキルを使用しているおかげか気づかれる事がなく通る事ができた。
過ぎ行く木々を見ながらも走り続ける。
すると数分で目的地である山まで辿り着く。
流石に少し疲れてしまい「はぁ、はぁ」とかたでいきをする。
流石に数分間走りっぱなしは疲れるな…。
深呼吸をし息を整えると俺山に入っていく。
靴で地面を踏むたびにザクザクと砂利や砂、枯れ葉の音が鳴り始め、すぐに昨日鹿たちと戦った大小様々な木々の生えた雑木林にはいる。
昨日は見てなかったが木の所々にソードディアの物であろう剣による切りつけられたギズのようなものがあった。
これが縄張りを示すようなものだったんだろうか……。
「結構わかりやすくついてるな…」
俺は昨日の自分の周りの見えて無さに少し失意を表しながらも雑木林の中を進んでいく。
地面は木々の枯れ葉で埋め尽くされており所々枯れ木のあるところを見ていると秋の季節感を感じさせられる。
青々とした木々ばかりあったどちらかと言えば春と言える北の森と比べると、より一層それを感じさせられる。
そんなことを考えながら歩いていると、静まり返った雑木林内に自分以外のザクザクと枯れ葉を踏む音が聞こえて、現れたのは昨日散々見たあの鹿たちだった。
昨日とは違い気配を隠すこともなく足音がバレバレである事から、鹿たちがこちらに気づけていなかったことがわかる。
今日の目的は技神であって鹿では無いので、時間を割く訳にもいかない。
だが、未だしっかりと試せていない[天脚]を試したいと言う欲に負けてしまい、俺はあまり時間を使わないためにも全速力で距離を詰め攻撃を開始する。
鹿たちがこちらの足音に気づきバッとくびをこちらに向け警戒を始めるが俺の方が速く、鹿たちが完全に警戒を始める頃には俺は既に1匹目の首筋に蹴りを入れていた。
ベキイィィィイ!!
そんなけたたましい音がなり鹿の首が折れ、そのまま足を振りかぶると鹿は周囲の鹿や木々を巻き込みながら吹き飛んでいく。
「すげー…」
バキバキッ!と音を立てて折れていく木々を見ながら、その想像以上の蹴りの威力に驚きを隠せない状態だ。
その場にいた鹿すらも状況を理解しきれないのか鹿たちの飛んで行った方向を見て固まってしまっている。
その隙を逃す訳にもいかず、俺はさらに鹿たちに追撃を食らわせだす。
◆
「これで最後ッと」
そう言いながら俺は最後の1匹を蹴り倒す。
そして鹿が粒子に変換されるのを確認すると「ふぅ…」と一息つく。
思った以上に早く終わったな…。
どうやら[天脚]の活躍によりありえない速度と破壊力を持った蹴りを手に入れてしまったらしく、数分で戦闘は終わってしまい、1匹1匹蹴っていた昨日と比べると明らかにその戦闘時間が短くなってしまっている。
「スキル一つでここまで変わるのか…」
[天脚]の壊れ具合を再確認したところで俺はその場を後にしようと山の中に向かって歩みを進める。
すると、突如として濃い霧が発生する。
それはすぐにロイドを飲み込むようにして、山全体を包み込む。
その異常な濃さのせいでロイドの視界は霧による白一色で覆われる。
マズイな、周りが全く見えない…。
[地図]を確認するが全く移ることなく黒一色に自身の位置を表す白い点が付いているだけで自分がどこにいるのかが全くわからない。
流石にこんな状態で動く訳にもいかずその場にとどまる。
一応の警戒のためにメニューを操作し、いつでも迎撃できるように準備をしておく。
そうやって準備をしていると霧の奥で薄っすらと光が見え始める。
そして、徐々にその光が大きくなって来て、遂には光が俺の体を包み込んでしまった。
光が収まり閉じていた目を開くとそこはさっきまでいた雑木林ではなく、所々に石柱のたった世間一般的に遺跡といわれる場所に立っていた。
夜中に書いてて朝起きたら出来上がっていた書物の内容に自分でも驚きました。
深夜テンションって怖い…。




