4話
誤字の指摘ありがとうござました。
○チュートリアルルーム 草原
走りながら探していたから、思いっきり踏み込んで止まる。
単調な流れ作業のせいで一瞬スルー仕掛けたが、なんとか踏みとどまることができた。
そして急いで先程【識別】で?とでたあたりを探し回る。
草むらを掻き分けながら【識別】をかけ続ける。
するとそこには、体長10メートルほどの黒い大蛇がいた。
なんで、見過ごしたんだ…。
蛇はこちらを見つめシャーッと鳴き、こちらを警戒している。
ギラリと輝く黒い鱗を纏い、長い身体をうねらせて地面をバチンバチンと剣状の尻尾で叩く。
改めて【識別】を使用する
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?
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もはやなんの情報も載っていない、俺の30分は何だったのだろうか、それだけレベル差があるという事なのだろうか。
そんなことを考えつつも、短剣を構える。
こいつに関しては、これまでの奴らとは違うというのが見るだけで伝わってくるのだ。
「シャーッ!」
そう叫んで一気に噛み付いてくる。
これを難なく避けながら顔に向けて一撃入れるが、ガキンッという音と共に鱗によって短剣が阻まれた。
「…ッ!」
流石に初期装備の剣で鱗を斬るのはきついか。となると鱗のない部分を狙わないといけないのか…
黒蛇は頭を起こしまたこちらを睨みつける。そして首を前後に動かしたかと思うと、また先程と同じく噛み付いてくる。
今度は、これをしゃがみながら避けて腹の辺りを短剣を使って斬りつける。
さっきとは違い、スルリとは言わないが剣が通り黒蛇の腹から血が撒き散らされる。
その返り血を浴びながら、その場から離れるとその一撃が効いたのか黒蛇は身体をうねらせて、その剣のような尻尾による攻撃で地面を叩き割る。
「マジで…」
その地面を叩き割る姿を見て、自然と声がでてきた。
そして、いつのまにか黒蛇の俺に対する視線に怒りが宿り、黒蛇がこちらを睨みつけると先程とは違い俺の周りを動き回る。
俺は、その姿を見ながら黒蛇から視線を外さないようにする。
「ガハッ…」
黒蛇の返り血を浴びたあたりからずっと毒をもらっている、状態異常の欄に【猛毒】が追加されていた。
血にすら毒があるのなら噛まれれば一発で終わりだろう。
毒のせいでクラクラする頭の中で考えながら黒蛇を見ていると、急に向きをこちらに変え先程よりも早い速度で噛み付いてくるが、AGIにほとんど振っていたのが功を奏したのか難なく避けることができる。
そして次は目に一撃斬りつける。
「シャ、シャーーーーッ!」
尻尾による振りが鼻の頭をかすめる。
「うおっと!」
その場から一気に距離を取り、慌てて自分のHPを確認すると、少し掠っただけだったからかあまり減ってはいなかったが、毒によるスリップダメージで徐々にHPが減っていく。
慌ててメニューを操作し、ディルクから貰ったHP回復ポーションを取り出し飲む。
一方、黒蛇はさっきの目に対する一撃でさらなる怒りにより我を忘れてしまい暴れまわる。
そんな中、怒りの矛先でもあるロイドを見つけ全速力で突進してくる。
それに対し俺は粗悪な棍棒を構え突進してきた黒蛇の頭目掛けてフルスイングで振り抜くと、
バキッと音を立てて棍棒はその一撃で砕け散った。
「シャッカハッ⁉︎」
おれの棍棒による一撃が予想外だったのか驚いたような声をあげ、蛇はその場に昏倒状態になり倒れこむ。
「ふー、危なかったな」
まさか一か八かで考えた作戦がうまくいくとはな。
気を失い倒れている黒蛇を見た後先程まで棍棒を握っていた腕の方を見る。
しかし、棍棒が一発で壊れるとは思わなかった。
短剣を使って返り血を浴びないように気をつけながら短剣を黒蛇の喉元に刺す。
短剣で数回切り裂くと、黒蛇はポリゴン状の粒子に変換される。
《対象の討伐を確認しました》
《ユニーククエスト:【導き手の試練】が進行します。進行度50% 討伐数5/10》
「これが5匹目かよ」
いきなり跳ね上がった敵の強さに思わずそうこぼす。
今回の蛇は明らかに4匹目までとレベルが違ったな。この流れで行くと次はどうなるんだ?
俺は少しの不安を感じながら、黒蛇のドロップ品を確認する。
・王毒袋
・死蛇の剣尾
・死蛇の黒鱗
まさかの三つもあるとは、驚いた。
というか死蛇ってなんだよあいつそんな物騒な名前してたのか⁉︎
あいつ絶対、配置モンスター間違えてんだろ!
そんな感じで、心の中でここに居ない管理AIの少年に向けて悪態をついていると、
「やー、いい感じで進んでるみたいだね!」
俺の心の声を知ってか知らないでか、そんな元気な声が聞こえる。
見上げてみると、声の主ディルクは胡座をかいた状態で逆さまになりそ俺の頭ぐらいの高さに浮かんでいた。
そんな彼を俺が睨みつけると、少し苦笑いをして話し出す。
「あ、あはは。ゴメンよまさかここでルシュトールのやつが干渉してくるとは思わなくてね」
「ルシュトール?」
いきなり出てきた知らない名前に思わずそのまま聞き返す。
「あぁ、ルシュトールはこの世界で崇められている神の一柱のことさ、まぁ彼は……え、これ以上はダメだって?僕はただ説明を……分かったよ」
何か知らないうちに知らないことが向こうで決まったようだ。
要するに、さっきの黒い大蛇はそのルシュトールという神が干渉してきたことによって現れたと言うことか、うん確実に向こうに非があるな。
そう考えると、また俺はディルクを睨みつける。
「ご、ごめんって謝ったじゃないか。確かに、これに関してはこっちのミスだからここでクエストクリアにしてもいいよ」
と言うまさかの提案がディルクから出された。
それに対して俺は疑問を投げかけていく。
「その場合、クエスト報酬はどうなるんだ。何割か減ったりするのか?」
「いや、普通どおりの報酬を払うよ。何ならミスの分少し増やすよ」
と言う何とも破格の条件だった。
「このまま続けた場合は敵の強さはどんなものになるんだ?」
「あー、それね多分相当なのが出てくるよ。さっきの蛇もそうだけど、ルシュトールが眷属化を魔物に対して行うことでその魔物は飛躍的に成長するんだ。要するに特殊な進化を遂げ、魔物自体のステータスが異常なほどに跳ね上がる」
そう言ってディルクは真面目な顔になり、
「さっきのは魔物と言っても元がただの蛇だったからあの程度だったけど、次の奴らは確実に死ぬよ、僕はここで終わるのをお勧めする」
と少しこちらを諭すように言う。
さっきまでのふざけたものではなく、本気で言っているのだろう。
そのディルクを見るだけでも次の相手が相当なものであることがわかる、だが
「嫌だね」
俺は心の中からそう思った。