23話
○ヌール 草原
配達の仕事を終えて、適当な店で食料とポーションの類をかいそろえる。
時刻は日が昇り8時ごろ、すっかり明るくなているので、今から街外でのモンスターの討伐だ。
スライムとうさぎあと、テッポウウオだ。
現実時間では、平日の昼前と言うこともあり、昨日のようにプレイヤーだらけと言うことはなかった。
そのおかげもあってか、昨日は枯渇していたモンスターたちが、ところどころ湧いていた。
見える範囲でいるのは、Gランク依頼のスライムとうさぎの二種類。
昨日見ていた限り、この街近辺はこの2匹しか湧かないのだろう。
さっさと、依頼分を討伐するか…。
うさぎの背後に周り[急所打ち]を使用してうさぎを斬る。
スパッといい音がすると、うさぎは粒子になって消える。
戦闘中は、[気配希釈]を使用しているおかげで、的に気付かれることなく背後を取ることができる。
スパッ!
次の標的であるうさぎを見つけ、また首を狩る。
スパッ!
さらに次を見つけて、首を狩る。
スパッ!スパッ!
ただただ、背後に周り首を狩る。
おぉ…この首を狩る感覚結構クセになるな…。
スパッと言う音が耳に心地よく、するりと入る短刀と短剣の刃の感覚がクセになる。
思いのほか、軽やかな感覚に思わず無心になって草原中の敵を狩りまくる。
◆
「ふぅ…」
結構狩ったな…。
あれから体感30分くらいか?
そんなことを考えていたが、太陽が真上まで上がりかけているところを見ると、そんなものではないのだろう。
ゲーム内時間10時過ぎくらい、だろうか?
まぁ…チュートリアルのとき薄々感づいていたが、俺の時間感覚少しおかしいな。
ぶっ続けの戦闘により、減ってしまったEPを補給するためにも、来る途中で買い込んできた食料を食べるために休憩を取る。
メニューから食料もとい、屋台で買った串とパン、ジュースを取り出す。
串の方は近場で取れると言うこともあってかうさぎの肉を使用しているようだ。
「おぉ…うまい」
うさぎの肉は初めて食べたが、思っていたよりもクセや臭みもなく、塩によるシンプルな味付けにより、うさぎ本来の味が味わえる。
噛むと肉汁が溢れ出す。
熱々というわけではないが、冷え切っているわけでもない、猫舌の俺にはちょうどいいくらいの温度だ。
串だけ食べるわけにもいかないので、パンを少しちぎって口に運ぶ。
安めのやつを買ったので、少し硬いが食べれないわけではなく、口の中で噛むことで細かく砕くことにより唾液と混ざり柔らかくなる。
口の中のものを飲み込み、ジュースを飲む。
オレンジ色の液体は、見た目の通りオレンジジュースで柑橘系のさっぱりとした味が、串により脂っぽかった口の中がスッキリする。
オレンジ100%ということもあってか甘さが控えめだが、脂っこい串がある今ではそれが丁度いい。
このゲーム味覚も嗅覚の再現度も高い、うさぎの肉の香ばしい匂いが香る。
あぁ…本当に、旨い…。
◆
ちょっとした食事休憩を取ったところで、次の標的であるテッポウウオを探しに、前回行った小川のところまで歩く。
前回歩いたところは、マッピングしてあるのでどこに向かって歩けばいいのかはわかる。
アーサーたちと歩いていた時は、話しながらだったからかあまり周りを見れていなかった。
改めて見ると綺麗な草原だな…。
田舎のじいちゃんの家を思い出す。
肌に感じる自然がとても心地いい。
そよ風が吹き、草原の草が揺れる。
そんな心地いい風を感じながらも、俺は目的地の小川に向かって歩く。
◆
小川に着くと前回のように、魚が泳いでいる。
流れる水の音が、涼しげに感じる。
目的のテッポウウオ、今回はMPを回復するためにMP回復ポーションを買って来ているので、スキルレベルを上げるためにも魔法を積極的に使って、テッポウウオを止める。
まぁ…MP回復ポーションがきれるまでなんだが…。
前回の蹴りうさぎとの戦闘で、魔法使いの職業レベルが上がっているので、MPは結構上がっている。
「影魔法『影縫い』」
俺の影が、魚たちを飲み込む。
動きの止まった魚たちにとどめを刺していく。
テッポウウオは一つの群れで数十匹単位でいるので、依頼は一つの群れを狩るだけで済むが、魔法のレベルを上げるめにも狩り続ける。
魔法を掛ける。
動きの止まったテッポウウオを狩るの繰り返しだ。
時々ポーションを飲みつつ、テッポウウオ狩りを続ける。
なんかこうも単調すぎると、少し飽きてくるな…。
複数の敵を一気に狩るのは結構楽しいが、こうも敵が動かないとやはり飽きてくる。
まぁ…レベル上げのためにも狩っていくが。
うさぎとスライムの時のように気持ちの高揚は無かったが、レベルはちゃんと上がっているようなので、悪い気はしない。
という感じで、魔法、狩る、ポーションを繰り返していだ結果、MP回復ポーションを使い切る。
「はぁ…」
結構疲れた…。
退屈な作業を繰り返しているので、テッポウウオを狩ることも疲れるのだが、一番疲れるのはポーションを飲むことでまずいわけでも美味しいわけでもない少しドロッとした液体を飲むのは、あまりいい思いはしないものだ。
俺はそのまま川辺の草原に寝転がる。
はぁ…ポーションがもっと美味しかったりするならいいんだが…。
先ほどまで飲んでいたポーションについてかんがえる。
俺は[調薬]のスキルを持っているが、ポーションに味付けとかできるんだろうか?
その辺りは、やっぱり料理のスキルの範囲に入るんだろうか?
そんなことを考えていると、頭の方からガサガサと草をかき分ける音が聞こえる。
[気配感知]を使用していなかったので音がするまで気づかなかった…。
「キュー」
そんな愛らしい鳴き声が消えたかと思い、顔を上げるとそこには、先日激闘を繰り広げた蹴りうさぎが立っていた。




