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22話




○第一の街 職人街


「こりゃぁまた…すげぇ物を出してきやがったなぁ…」


俺の抱える鈍く光る結晶を見てヘファイストスはそうこぼす。


その結晶から放たれる鈍い光は、まるで鼓動するかのように点滅している。


これ結晶の中に、まだアルブトーラム生きてるとかないよな?


そう考えながら、点滅している結晶を見る。


いや…塊魂という事だし、この結晶がアルブトーラムの魂なのか?


「ネームド…しかも加護持ちの魂のこもった結晶か…。いやこの結晶自体がこやつの魂なのか?…しかもまだ生きてるときやがった」

「……ッ!やっぱ生きてるのかこれ」

「あぁ…ちょっと待ってろ…」


そう言って、ヘファイストスは椅子から腰を上げ、奥の部屋へ入っていく。


なんか奥の部屋行ったけど物置きかなんかか?


間も無くして、ヘファイストスが戻ってくると、その手には二つの袋が握られていた。


揺れる度に、ジャラジャラとなっているあたり中に何か入っているのだろう。


ジャラーーっと音を立てて、両方の袋の中身を分けて、机の上にばらまく。


すると中からは、ほんの指先程度のキラリと輝く小石のようなものが出てくる。


その石には、二種類あるらしく、石自体がほんのり光を放っている物とその他という感じだ。


それぞれ袋を分けて保存しているらしい。


「これは魔物から取れる魔石だ。主に、魔道具の燃料や、魔術の触媒として使われる」


そう言いながら、机の上に転がっている光を放っていない魔石を一つ拾う。


「こいつは、普通の魔石だ。確か…蹴りうさぎあたりだったか?これだけでも、ランプとかの燃料としても一週間ほどはもつ」


そう言うと、次は光を放っている方の魔石を手に取る。


「そんでこっちが、魂のこもった魔石だ。言わなくてもわかるだろうが、少し光ってるのが、見分けるコツだな」

「まぁ…そうだろうな」

「そんでもって、この魂のこもった魔石の方は、落とす確率が低いんだ。その分同じ魔物から落ちた魔石よりも保有魔力量が違う、なんでかわかるか?」

「魂がこもってるから…じゃないのか?」

「いや、その通りだ。生物の魂は、いわばエネルギーの塊だ。それ故に、普通の魔石と違い3倍ほどの魔力保有量を誇る」

「おお…」


息高らかに、そう話すヘファイストス。


魂を糧に魔力を作り出すってことか?


「まぁ、普通は召喚士などが召喚獣を呼ぶために使うのだがな。その魔物を自分の召喚獣にしたいがために魂のこもった魔石が出るまで、狩りまくっていたものもおるそうだ」


うわぁ…一気に殺伐としたなぁ。


と言うか、召喚士ってそんな面倒なことをしないといけないのか?


それなら魔物使いあたりになって、テイムした方が早そうなものだが…。


とまぁ、ヘファイストスの話を聞く限り、この結晶がすごいものという事がわかる。


「召喚獣として使える魂のこもった魔石は、魔石内の魂が生きている状態の時だけだ。魔石保有量も魂が生きてる間は使用速度にもよるが、ほぼ永遠だ」


まじかよ…それは凄い。


「だが、魂のこもった魔石は良くて一週間もすれば死ぬと言うか、活動を停止する」

「その魔石は、死んでるのか?」

「あぁ…活動を停止すると、この魔石見てぇに点滅しなくなる。こうすると召喚獣として使えなくなる」

「じゃあ、この結晶もあと一週間もすれば死ぬのか…。ってそれじゃあ武器にしてもアルブトーラムの魂は死ぬ…活動を停止するんじゃないのか?」


一週間しかもたないなら、言っちゃなんだがあまり生きた状態の意味がなさそうだな…。


ヘファイストスの説明にそう思う。


「そこで、今回お前の持ってきたその巨大な魔石。お前の言う、アルブトーラムとやらの魔石だ。そいつは結構な特殊個体みたいだな、俺の見た限りでは、相当もつぞそれこそ十年、二十年いやそれ以上か…完全に規格外だ」

「は!?」


うわぁ…何その急激なインフレ、さっきまでの一週間と言う楔完全に無視しちゃってるじゃん。


理由として考えられるのは、やっぱ加護持ちと言うところか?


俺も自分なりに、理由について考えてみる。


上げられる理由は、ボス、ネームド、ユニーク、さっきも上げた加護の辺りだろう。


まあそう考えると、やはり加護やユニーク辺りが理由ではありそうだな。


「気にしているようだから言っておくが、一度武器や防具に加工すれば、その魂が死ぬことはなくなる。あくまで魔石は仮初めの器で、不安定なのだろう。そこで防具や武器という器に移すことで、魂が死ぬの防ぐんだ」


「まぁ、器に移す過程で魂に相当な負荷がかかるようでな。それこそ高位の魔石でなければ、器を移すのに耐えられない。器も魂に合わせて大きなものにしなければならなくなる。つまりそれだけ上等な武器や防具じゃなければならねぇんだ」


へぇ…魂を移せるような魔石となると、必然的に高位の魔石になっきて、それだけ高位の魂を宿すためには、相当な武器や防具になってくる。


それほどの武器や防具を作れるとなると、鍛治士としての腕が相当なものでないといけないのだろう。


…うちの規格外の魔石の場合はどうなるんだ?


「わかったと思うが、その魔石の魂を移すとなると、器の素材を相当なものが必要だが…今うちにそいつに耐えれるような素材はねぇが……ねぇが?…ッ!おいロイド!お前ギルドの素材運びで来たんだったな!?」

「お、おう…素材運びというか、配達依頼だがな…と言うか顔が近いヘファイストス」


いきなり何か思いついたかのように驚くと、ヘファイストスは俺の肩を掴み、顔を至近距離まで近づける。


鼻息が荒く顔にかかる。


最近巷では、このような顔の近い状態をガチ恋距離というそうだ。


確かにこんなに顔を近づけられれば、恋に落ちてしまうのかもしれない……相手が、髭を蓄えた爺さんじゃなくて、美少女ならな…。


目の前で鼻息を荒げていたヘファイストスは、落ち着いたのか至近距離まで近づけていた顔を離す。


「おぉ…すまん。とにかく荷物を出してくれ」

「そう言えば、ここに来た理由は元々荷物運びだったな」

「俺もすっかり忘れちまってたな。がっはっはっは!」


そう言いながら、受け取りの手続きを済ませる。


取り出した荷物は重く床に置くようにヘファイストスにいわれる。


ヘファイストスは手続きを済ませるとすぐに、箱をこじ開け、中にあるお目当ての素材を探す。


少しガサゴソと音を立てていたかと思うと見つけたのか、「あったぞ!」と声を上げる。


「これなら器としては十分だろう!」

「見つかったのか?この魔石に耐えられる素材」

「あぁ、飛び切りのをな!とにかく後は出来た時のお楽しみというやつだ!」


そう声を上げるとまた「がっはっはっは!」と豪快に笑う。


まぁ、俺も本来の仕事を達成できたしこれでいいだろうな。


「俺はこれから、製作に入る!すまんが、ここでお別れだ!久しぶりに腕がなる!」

「あぁ、俺も本来の目的を達成出来たし、武器まで作ってもらえる。十分だ、ありがとう」


そう言って俺は、小屋から出ようとする。


「お、忘れていた!ギルドカードを交換しておこう。出来たら連絡する。首を長くして待っててくれ!」

「あ、ありがとうな」


ギルドカードを交換する俺。


メニューのギルドカードの欄にヘファイストスの名前が追加される。


はぁ…初めてギルドカードを交換した住人がまさか神の名前をつけられた住人とは…。


考えながらも俺は扉を開ける。


「あっつ!」


あー…あまりに部屋が快適すぎて、外の気温忘れてた。


高揚した気分が一気に下がった気がする。


俺はこの地獄から脱出するためにダッシュで職人街を駆け抜ける。





走ったこともあってか、思いのほか職人街の入り口に着くのは早く、自分でも少し驚く。


流石にここまでくると街の熱気により死ぬことはないだろう。


はぁ、この職人街であんなな大物と会えるとは、わからんものだな。


俺はそんなことを考えながら、職人街を出て行く。


うーん…何か忘れてる気がするんだが…。


俺は歩きながら額に手を置き考える。


何か結構大事なものを……あ。


「お茶…」


俺はそのことに気付き人の目も気にせず大通りのど真ん中でorz状態でうなだれた…。

お茶って…美味しいですよね。

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