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17話

度々投稿が遅くなり申し訳無いです。




○ヌール 草原


街門から見て、辺りは何も遮る物のない草原が一面に広がっていた。


そのお陰で街門からでもちらほらポップするモンスターが見える。


まぁ見えるのだが…。


「これは何と言えばいいのか…」

「あ、またやられた」

「いやー、やっぱりこのゲーム人気だな」

「人多過ぎるやろ!!」


そんなましゅまろの悲痛の叫びすら大勢のプレイヤーたちの声にかき消される。


そこらじゅうから「あっちにいるぞ!」「俺たちが先に!」なんて声が聞こえる。


そんなわけで街門前のモンスターはリポップしたそばからプレイヤーたちに狩られていた。


俺たちの数メートル前にポップしたモンスターですら、遠くから飛んできた魔法によって焼かれる。


ちょっと殺伐としすぎではないですかね…。


「多分僕たちと同じ第三陣のプレイヤーだろう。それにしても多過ぎるね」

「がははは!モンスターが倒せねぇ!」

「ここでPK起こしたら結構楽しそうですね」


三者三様な反応を見せるアーサーたち。


エドがサラッと狂気的な事を言った気がするが気にしない、笑顔で手に持っているロングソードを握りしめているが気にしてはいけない。


「仕方ないが、やっぱ少し奥行くしかないか」

「やね、流石にこげんかところでチマチマしときたくなかけん」


そう言いだす姉弟たち、


「そうだね、奥に行けば敵も強くなるだろうけど、この辺じゃ狩れなそうだからね。まぁもしもの時は、ロイドを使えばいい」


アーサーが俺以外に向けてそう話す。


「人を兵器みたいな扱いするんじゃない、アーサー」

「がははは!確かになぁ!」

「だってそうだろ、君が1番レベル高いんだ。大丈夫ロイド、本当に危ない時はゲルドを餌に逃げる」

「多分この中で1番AGI低そうやもんね」

「ドワーフが獣人の俺より速く走ってたら逆に怖いわ」

「ゲルド、あなたの犠牲は忘れません」


俺の反論に何にもなさげにそう答える。


サラッとゲルドを餌にするって言ってたが、とうのゲルドはそれを聞いて「がははは!」と笑っているので問題ないのだろう。


と言うか仲間たちが薄情すぎる件について、エドに関しては諦めが早すぎる。


「そうならないようにしたい所だけどね」


そう言って歩きだす。





門前から変わって十分ほど歩いて、草原のど真ん中にいた。


小川が流れ、さらに奥の方には森のようなものが見える。


小川の水が流れる音が聞こえ、覗き込んでみると水の中を泳ぐ小魚たちが動くのが見える。


すごい、こんな細部までこだわっているんだな。


[釣り]スキルもあると聞いていたが、こう言う場合この魚を釣れたりするんだろうか?


「おお、アーサー魚だ!魚がいる!オレのとった[釣り]スキルが使えるんじゃないか!」

「あ、あぁ…そうだね、ゲルド少し落ち着いてくれ」


あまりにいきなり肩を掴まれ、揺らされたことでアーサーが動揺する。


というかこんな近くに[釣り]スキルを取得している奴がいるとは…。


ゲルドはウキウキした様子で釣り竿を片手に小川に向かって歩いていた。


「ぎゃーーーー!!」


そんなゲルドの叫び声が聞こえ、仲間たちみんながゲルドの方を向く。


川の中で泳いでいた魚たちがゲルド目掛けて水鉄砲のようなものを撃っていた。


気になって泳いでいる魚に[識別]をかける。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

テッポウウオ LV.3〜5

モンスター:敵対

スキル[水鉄砲]


主に小川などの小さな川に好んで住み着く。

警戒心が強く。

川辺に近づくものに対してスキルによって攻撃を仕掛けてくる。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


スキルのレベルが上がったお陰か結構わかるようになったな。


近づくものを攻撃するのならやっぱり水の中でしか行動できないのか。


「痛い!痛い!痛い!」


そう言って、川沿いを走り回っている。


ゲルドなんで川辺から離れないんだ?


「こいつら、なんでめちゃくちゃ追いかけてくるんだぁ!?」


いや、川辺から離れればいいだろ。


「なんで川辺から離れないんだよ!さっさと離れればいいじゃねぇか!」

「お?確かにそうだなぁ」


見ていられず、ししゃもが叫ぶと、間の抜けた声でそれに返事を返す。


普通相手は魚なんだから川辺から離れようとするだろ…。


「なんかと思ったら、なんばしよっとよゲルドぉ…」

「がははは!まさか魚まで敵モブだったとは迂闊だったな!」

「確かに…魚まで敵対してくるのは想定外でしたね」

「で、あの魚たちどうする?僕たちの中で水の中の魚を攻撃する手段持ってるのは…」


そこまで言って、アーサーは俺の方を見る。


まるで俺に魚を倒せと言っているようだ。


「いや俺の魔法は使えないぞ、INT低いからな。だいたい俺は火魔法しか…」


ここで俺は教会で火魔法の他に影魔法を取得していたことを思い出した。


「いや、あるなもう一つ」

「へぇ、何があるんだぁ?」

「な、なんだよ少し気持ち悪いぞししゃも」


俺に擦り寄るように近づきながら、ネチッこい声を出して聞いてくる。


「魔法使いに転職した時、加護のおかげで[影魔法]のスキルを取得したんだ」

「影魔法たぁまた、変な魔法覚えたな。暗殺者でも目指してんの?」

「影魔法って何ができると?やっぱ、影分身?」


いや、ましゅまろ影分身は魔法っていうより忍術だろ…。


だが確かに何ができるのかは気になるな。


メニューを操作して、影魔法を[識別]で調べるとレベル1の状態で使用できる魔法は[影縫い]読んだ感じ相手の影を地面に縫い付け動けなくするものだ。


やっぱり魔法っていうより忍術って感じだ…。


「魔法で動きは止められるみたいだ」

「お!いいね、それなら僕らでも倒せそうだ」

「ただMP消費が激しい。長い間は無理だぞ」

「構わない、1秒でも止めてくれれば十分に倒せる。6人もいるんだ簡単に倒せる」


川の中で泳いでる魚の数はおよそ20〜30匹くらいだ一人5匹くらい倒せば十分と言ったところか。


確かに無理な数じゃないが一気に魔法をかけるとなると本当に1〜2秒しかMPがもたないな。


本当に大丈夫だろうか…。


「よし、このゲームパーティ戦、最初の敵はあの川の魚だ!一瞬で片付けて次の敵を探そうじゃないか」

「うおぉぉお!さっきの攻撃のお返しだぜぇ!!」

「あの魚って旨いとやかー、ちょっと食べてみたかね」


俺の心配をよそにアーサー、ゲルド、ましゅまろはやる気満々だ。


「なんというか…魚相手にそこまで張り切らなくてもいいでしょうに…」

「姉貴に関しては、食い意地張ってるよ…」

「まぁ、やるだけやるか。せっかくアーサーたちがやる気だしな」


そう言って各自、川の周りに魚を狙えるように潜む。


全員がいい位置に動けたのを確認して俺は魔法を発動する。


「影魔法『影縫い』!」


俺が魔法を発動すると、俺の足元の影が伸び魚達の影を飲み込む。


ゆらゆらと泳いでいた魚達がガチッと凍りついたかのように動きを止める。


しかし浮かび上がるようなことはなく、時が止まったかのようにその場にとどまる。


「今だ!動き出す前にやれ!」

「ほんとに固まっとる」


そんなこと言いながらザシュリ、ザシュリと魚を斬りつけていく。


MP消費がやはり激しい。


だがそんなことを気にすることもなく全滅させることができた。


「やっぱ結構いけるものだね」

「少し張り切りすぎですよ、皆さん」

「がははは!だが、1番魚を倒していたのはお前だったぞエドぉ!」

「そうばい!エドばっか倒しよったけん、私全然倒せんかったやん」

「うぐっ…そう言われると何も言えない…」


仲間達に張り切りすぎと言っていたエドが今回のMVPだった。


というか魚狩ってた時のエドは、優しげな雰囲気の笑顔を残したまま次々と魚を屠っていた。


「まぁ、さっきの魚達のおかげでレベルも上がったし、とにかく一旦川を上がろうか」


そう言ってアーサーは俺たちに川から上がるように促す。


俺たちが川から上がっていく中、ゲルドは1人川の中にいて肩まで水に浸かっていた。


「何してるんだ、ゲルド?」

「川の中は気持ちいいな、川に入るなんて子供の頃以来だ」

「いや、それは良いが早く上がらないと、またあの魚達がリポップして……あ」

「ん?どうしたんだロイドおぉぉぉお!!」


案の定リポップした魚達に攻撃されるゲルド。


「何やってんだよ!」

「がははは!いてぇー!」


はぁ、なんともゲルドらしい。

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