16話
○神殿
教会を出ると外は様々なプレイヤーや住民たちがいて、静かな教会の中とは違い少しガヤガヤとしている。
「さて、次は装備を整えるか」
ハイレンに言われたように祈りの間に行くのもいいが…流石にこれ以上仲間たちを待たせるのも悪いだろう。
と言うか、遅くなったらアーサー辺りに笑われる。
そう考えると、俺は神殿を出て武器屋を目指す。
○第一の街 武器屋
俺は神殿を出てしばらく歩くと、二本の剣が交わった形の看板がかかった店を見つける。
そこはそれほど大きな店ではないが周りと違い石造りで出来ているため異様に目立っていた。
来る途中、住人に聞いた場所とあっているのでここで間違いないはずだが…なんとも人を寄せ付けない感じが強い。
が他の店を探すために時間を割くわけにもいかず思い切って扉を開け中に入る。
キイィィ…
立て付けが悪いのか、そんな音がなって扉が開く。
少し重いな子供じゃ開けられないだろ…まぁこんなところに子供は来ないだろうが。
中は少しの明かりしか付いておらず、とても薄暗い中装備品に光が反射しキラリと光る。
直剣に短剣、大剣に曲剣さらに刺剣など剣だけでも様々な種類が飾られている。
他にも斧や槌、槍に盾が飾られていて、その中に今回の俺の目的でもある杖もあった。
だが流石に量が多すぎるのか店の中が窮屈に感じる。
店主であろう無愛想な大柄の男は店に入って来た俺をチラリと見たかと思うと、商品であろう手元の剣の手入れに意識を戻す。
なんか無愛想な店主だな…。
そんな事を考えながらも、杖が飾られているスペースに移動する。
そこには長杖や短杖が飾ってあり一つ一つ[識別]をかけて見ていく。
初心者の長杖
100/100 評価ー
+補正:MATK20 ATK5
−補正:重量5
必要ステータス
INT12
初心者の短杖
100/100 評価ー
+補正:MATK15 ATK3
−補正:重量3
必要ステータス
INT9
初心者の短杖
125/125 評価☆
+補正:MATK20 ATK3
−補正:重量3
必要ステータス
INT12
の三つが今のところ装備できる杖だろう。
見た感じ長杖のほうが短杖の同じ評価のものにおいて、性能がいいが代わりに重量と必要ステータスが上がるようだ。
長杖はその名前の通り長い杖で、白い髭を蓄えたとんがり帽子のおじいさんが「ふぉっふぉっふぉ」とか言いながら使っている姿を連想させる。
短杖は簡単に言うとハ○ーポッターに出てくるタイプやつだ。
他にも木製の物や、所々に金属を使用したものがあるが、どれも必要ステータスがINTに全くポイントを振っていない俺では届かないのだ。
必要ステータスはINTやSTRなどのステータス以外にも、職業レベルを要求してくるものもあった。
評価は様々なものが置いてありこの店で最も高い評価のものでも4だった、評価の高かければ高いほどその武器としての能力が高くなるようで、評価2までは耐久力と基本攻撃力が上がっている
逆に評価が3以上になると+補正に魔力強化(小)などが加わってくるようだ。
加わる補正は素材にした物によって変わるようで、火属性の魔物を素材に使用した場合は火属性強化などがつくと言う事だ。
まぁ、だいたいこんな感じか。
長い杖より短いほうがとっさの時に動きやすいだろう。
俺は評価1の方の短杖を取り次は短剣をもう一本買おうかと考えるが、ここで金はどのくらい持っていたか不安になる。
メニューを操作して一切触ってなかった所持金のアイコンを押すと1,650,000Gと言う所持金の表示がされていて、一度メニューを閉じる。
おかしいなぁ…165万というおかしな数字が見えた気がする。
「ふぅ」と一度息をはき、もう一度所持金を確認するが変わらずそこには1,650,000Gと表示さている。
クエストでも報酬金が発生するのか?
それにしても、流石は難易度7ということか、たった一つのクエストでこの金額はいくら何でもやばい。
さっき確認した杖の中でも高いものでも10万を超えてない。
わぁい、これで金を気にせずに武器を選べるなぁ。
あまりのことに考えるのを諦め幼児退行してしまうが、短剣を[識別]していると面白いものがあったのでそれを買う。
短剣の方は、掘り出し物だったようで結構な値段がした。
さっきまでメニューを見ながら一喜一憂していた俺を店主は変なものを見るような目で見ていたのは言うまでもない。
少しは自重しよう…。
そう考えながら武器屋を出ていく俺だった。
◆
杖と短剣を買って店を出たらそのまま冒険者ギルドに直行する。
[地図]のスキルを買うためにギルドによる。
ギルドまでの道のりの間に買った短剣を確認する。
バルカンの短刀
800/800 評価☆☆☆☆
+補正:ATK350 薪の炎
−補正:重量5
必要ステータス
STR45 DEX250
持ち手は木製で名前の通りまさに短い刀といった感じであの店主によるものか、手入れされている。
不釣り合いな鞘に収まっているところを見ると、鞘は同じ人が作ったものじゃないとすぐにわかる。
短剣、と言うか短刀を装備し手に持ってみるがやはり[初心者盗賊の短剣]と比べると少し重く、適当に振っても短刀を扱うスキルを持ってないためか綺麗には振れない。
わかりやすく強いなこの短刀。
[初心者盗賊の短剣]と比べてみると一目瞭然だ。
初心者盗賊の短剣
ー/ー 評価ー
+補正:ATK20
−補正:重量4
初心者用装備ということもあり耐久値もなく必要ステータスもない。
攻撃力が何倍にも上がったというのは普通に考えて強いんだが…
「絶対初期装備としておかしい」
そう独り言をポツリともらす。
はぁ、だいたい最初っからおかしかったんだ…なんだよルシュトールって…。
俺は普通にゲームできればよかったんだがなぁ。
短刀を腰の鞘に収めながらそんな事を考える。
と言うか杖の方はどうしようか…武器の装備欄は両手とも埋まっているが、これってもしかして持ってるだけで良かったりしないのか?
そう考えながらメニューから杖を取り出し持つ別に装備したわけではないが持てるならそれができるんじゃないかと思う。
装備欄増やすスキルか称号とかないのか?
手に持った短杖を振りながら歩いているとギルドに着く。
ギルドの受付で[地図]スキル石の購入が可能か聞いてみると可能と言う事で5,000Gで購入する。
スキル石の使用方法を聞くと手で割るだけでいいらしくその場で割る。
割れた破片はモンスターを倒した時のようにポリゴン状の粒子になって消えていく。
《スキル[地図]を取得しました》
[地図]スキルにはレベルがないようで視界の右端に四角いマップが浮かび上がっていた。
自分の視界の範囲が上空写真のようにマップとして浮かび上がり、他の場所は黒塗りになっている。
自分で探索しないといけないのか…。
少し面倒臭いが、自分が探索できていない範囲がわかるのはいいな。
[地図]の有用性を確認できたところで仲間たちの待っている門前に向かう。
◆門前
少しばかりの寄り道のせいで待たせてしまったがアーサーから催促のメッセージが来てないところを見ると遅すぎたわけでもないようだ。
門前の方に歩いていくと、仲間たち5人が門の前で話しながら待っている。
「お、今回は大丈夫やったみたいやねー」
「今回はってなんだよ」
「手に持ってる杖見る感じやっぱり魔法使いにしたんだな」
そう言って話しかけてくる姉弟。
「ああ、だが威力は期待するなよ。INTほとんど振ってないから全然火力ないからな」
「なんのための魔法だよ…」
「いざとなったら短剣で倒す」
「ほんとなんのための魔法だよ!」
ししゃもがツッコミを入れてくるが気にしてはいけない。
そんな俺たちの会話を笑いながら聞いている他の仲間たちと街を出てこのゲーム初のパーティ戦に出る。




