13話
○第一の街ヌール 噴水前
聞きなれたその声が聞こえ振り返るとそこには身長120cmほどの少年と身長150cmほどの筋骨隆々爺さんが立っていた。
前者は小人、後者はドワーフなのであろうその二人は俺を眺めている人の壁をかき分けてこちらに寄ってくる。
「遅かったじゃないか、何か手間取ったのか」
そういって握手を求めてくる金色のゆるくふわっとした感じの髪に碧眼の美少年アーサー。
「がはははは!めちゃくちゃ目立ってたなロイドぉ!」
そう言って後ろで豪快に笑っている暗めの茶色の長い髪と長い髭を蓄えた筋骨隆々のいかにもドワーフといった感じの男がゲルドだ。
「ああ、チュートリアルで少しな。というかその名前使えたんだな」
「確かに案外使われてないものだね、灯台下暗しというものだよ」
このゲームで同じ名前を使うことができないので自分の使おうとしていた名前を使っている人がすでにいる場合使用することができないのだ。
アーサーなんてメジャーな名前すでに使われていると思っていたがまさか使われていなかったとは。
アーサーとゲルド両者と挨拶を交わし俺がフレンド交換を行おうとメニューを広げようとしていると、
「さてゲルドとロイドを回収したところでギルドに行こうか」
ん?
「この場でフレンド交換をしていくんじゃないのか?」
そんな俺の疑問にアーサーが答える。
「ん?ああ、このゲームフレンド機能ないんだ。代わりにギルドカードを交換するんだよ」
そう言われてみれば今操作しているメニュー画面にフレンドの文字がどこにも表示されていなかった。
そのことに俺が驚いていると、
「そうだぜ、ロイドそんなことも知らなかったのか?」
そう言ってゲルドが「がはははは!」と笑う。
そこにアーサーが、
「ゲルド、君もさっき僕が教えるまで知らなかったじゃないか……」
少し呆れたように言うがそれに対してゲルドは「そういえばそうだったな。がはははは!」と笑っている。
なんとも能天気なやつだ。
「まぁ、そう言うことだからギルドに行くよ。そこに他のみんなもいるからね」
そう言って俺たちは人が密集しきっている噴水前の広場から移動した。
○冒険者ギルド
そこは部屋の中ということもあり外に比べてより一層ガヤガヤとしており、少しうるさく感じる。
入り口から入り真っ直ぐの場所にカウンターが三つあり左側二つが受け付けカウンターで、ここでギルド登録と依頼の受注ができるそうだ。
そして一番右側のカウンターでは素材の買い取りや依頼達成報告をすることができ、今でも様々な冒険者たちが素材を持って列を作っている。
両脇には暗い色の木材により分厚く見えるテーブルと椅子が並んでおり、そこにはいかにも冒険者を思わせる外見の住人ことNPCが座っており仲間たちと酒を飲みながらしゃべっている。
カウンターの左側にもカウンターのようなものがありそこからは厨房のような場所で料理人のような人たちが動き回っていて、そちらから料理によるものだろう、いい匂いが香ってくる。
このギルドは酒場も兼ねているようで彼方此方でそのような匂いがする。
厨房と反対側にはクエストが張り出されている掲示板があり、そこには様々な依頼が張り出されているようで、数人の冒険者であろう住人が陣取っていた。
一通りギルドの中をながめてそんな感想を抱く。
冒険者ギルドというと、いかつい男が新人登録者にいちゃもんつけてるものが一番に想像できる。
だがこのギルドはそういった感じではなく子供と冒険者が楽しそうに話していて、逆に賑やかな印象を受ける。
「さ、早く登録してみんなと合流しよう」
そうやってギルドの中を見ているとアーサーが声をかけてくる。
「ああ、わかった」
そうアーサーの言葉に返答し、俺は受付の方に行く。
◆
「ようこそ冒険者ギルド ヌール支部へ」
そういって受付の女性は話し出す。
「依頼の受注ですか?それともご登録ですか?」
「登録をしたい」
「かしこまりました。では簡単に登録説明を行います」
そ言うと、受付嬢はカウンターの下から一枚の金属製の板を取り出す。
「この魔道具を使用して登録を行います。これの上に手を置いていただければ登録できます」
本当に簡単に説明してくれた。
言われた通り板の上に手を置くと、板の溝を沿って青色の光が流れ出し板の中の溝を全て埋めると俺の手の中に吸い込まれ、手の甲から一枚のカードが浮き出てくる。
そのカードを手に取ると頭の中に情報が入ってくる。
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名前:ロイド
職業:盗賊
種族:人間
性別:男
RANK: G
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ステータスの能力値、称号、スキル、加護以外が見えるのか。
カードを持って色々と考えていると受付嬢の女性が話を続ける。
「そのカードがギルドカードになります。ギルドカードは身分証としても使用できますので、ギルド外で使用されることもあると思われます」
俺の持っているカードをさしながらそう説明する。
「ギルド登録者にはG〜Aランクがありそのランクに応じた依頼を受けることが出来ます。ランクアップするにはそのランク帯の依頼を指定の回数受けた上で、受付に話して頂けますとランクアップの試験を受けることができます」
そこまで言うと一息おきまた話し出す。
「依頼を受ける際は、こちらの受付までお越しください。逆に依頼達成または失敗の報告に関してはこちらから向かって左側にある受付にお越しください。こちらでは素材の買取も行っております」
「失敗した場合は、罰則などはあるのか?」
「いいえ、ギルド側からの通常依頼でしたら特に罰則というものはありません。国や商人からの依頼の場合、または期間が決まっているものの場合は、罰金が発生いたしますのでご注意ください」
ここまで話を聞いて少し気になったことを聞いてみる。
「犯罪者も登録できるのか?」
「はいできます。その場合ギルドカードにその方の犯罪歴が記載されますので、隠して登録することはできません。登録した後に犯罪を犯した際も同様に記載されます」
何を持って犯罪とするかはわからないがPKも犯罪に入るのだろうか?それとも住人に対する殺人のみが適応されるのだろうか。
「ギルドカードには、他にも他の方のギルドカードを登録して、遠く離れた場所でもギルドカードを介してメッセージを送ることができるようになります。登録する際は、両者が登録することを承認した状態で ギルドカード同士を重ねることで登録可能です」
俺の持っているカードをさしながら、彼女はそう説明する。
「以上でギルドカードについての説明は終了です。何か他に気になることがありましたらおっしゃってください」
「いや、特にないな」
「それでは、良い冒険者ライフを」
そう言うと受付嬢がお辞儀して締めくくる。
終わったのか、と言うかこのカードどこに仕舞えばいいんだ?
メニューのアイテム欄にしまおうとするが弾かれてしまい仕舞えない。
そうやって手に持っているカードをどうすればいいか考えていると、
「あっ!」
手の中にギルドカードが溶けるように沈み込んでいったのを見て思わずそう声を上げてしまう。
そのせいで少し目を集めてしまう。
どこに消えやがった!
その俺の疑問に答えるかのようにアナウンスが流れる。
《冒険者ギルドに登録を完了しました》
《これによりメニューにギルドカードの項目が追加されます》
《ギルドカードを取り出す場合、メニューからギルドカードを選択し、取り出しを選択すると取り出しが可能になります》
《何もしない状態で10秒間そのままにしていると自動的に収納されますのでご注意ください》
まさかの事実先に教えて欲しかった。
そしたら周りの人たちから変な目で見られずに済んだのに……。
そんなことを考えながら仲間たちの待つテーブルへと歩いて行った。




