1話
『Real Fantasia Online』通称"RFO"
それは一年前に、サービスを開始したゲームのタイトルだ。そして俺が今から始めようとしているゲームのことでもある。
俗にいうフルダイブVRMMOというやつで、バーチャル空間で自分だけのアバターを作り、剣と魔法の世界で冒険するいうなんともファンタジーなものだ。
βテストでの想像以上の反響もあって、本格的な
サービス開始半年前から予約完売というなんとも言えない結果になった。
ゲーム好きならVRMMOでなくても一度は、プレイしたことがあるの類いのものではないかと思う。
俺自身、ゲーマーといわれる人種なのでファンタジー系統のゲームをしたことはある、あるのだがあまり好きではない、ゲームはゲームでもFPSの方が好きだ。
そんな俺がなんで今『Real Fantasia Online』をプレイしようとしてるのか?とか聞かれそうだがそれに関しては、他のゲームのフレンドのやつらから誘われたからとしか言いようがない。
「二カ月前に予約してたのを、受け取りに店に行った帰りに、商店街のガラポンの景品で当てたから、一つお前にやるわ」というメッセージと一緒にパッケージを送りつけてきたのだ。
そのあと、ゲームを一緒にする度に「RFOやろーぜ」とフレンドたちからの日々増える催促を続けられてから今に至る。
これ以上俺の平穏を壊されないためにも俺は今部屋の隅に置きっぱにしていた『Real Fantasia Online』のパッケージを引き出す。
意を決して、パッケージを開け、ヘルメット型のゲーム機を箱の中から引っ張り出す。
それにつられて説明書も出てくる。
説明書を見ると使用上の注意や、使用方法、設定方法、ゲームについてなど色々書いてあった。
まぁその堅苦しい説明書に適当に目を通し、説明通りヘルメットを頭につけてベットに横になる。
そして、俺は目を閉じてゲームのスイッチを入れた。
◆キャラクタークリエイトルーム
「『Real Fantasia Online』の世界へようこそ」
目を開けると真っ白な空間にいた。
目の前に先ほどの声の主であろう、美人さんが立っている。
「私は、キャラメイキングを担当している管理AIのモニカです」
担当しているという言葉を聞く感じ他にも様々な担当の管理AIが居るのだろう。
『Real Fantasia Online』の膨大な量の情報をどうやって管理していたのか、説明書を見たときに気になっていたが管理AIが、管理しているとなるとしっくりきた。
「よろしく」
「はい、よろしくお願いします。では、まずプレイヤーネームを設定します。ゲーム内で使用するプレイヤーネームを設定してください」
「ロイドで」
「プレイヤーネームを"ロイド"に設定します」
これは他のゲームでも使っている名前で、前まで色々と使っていたが、数年前からこればかり使っている。
「続いて、【種族】を<人間> <エルフ> <ドワーフ> <獣人(犬、猫)> <小人> から選んでください」
「<人間> で」
「【種族】を<人間> に設定します」
そうモニカが言うと目の前に人型のマネキンのようなものが現れる。
「次にキャラクターの【容姿】の設定を行ってください」
その言葉を合図に目の前に<頭部> <胴体> <腕> <脚>などの項目のボタンが現れる。
試しに<頭部>のボタンを押してみるとマネキンの頭部がズームされ目の前に浮かび上がり、次は
<目> <顎> <耳>などの細かい部分の項目が浮かび上がる。
「これは、また……」
キャラクターメイキングだけで1日かける奴が出るとは聞いていたが、ここまで細かくいじれるとは、確かにすごいな。
だがこんなことに時間を割いている暇はないしなぁ。
「これって現実の体をデフォルトにして作れないの?」
「可能です。そのようにしましょうか?」
「ん、頼むわ」
「了解しました」
すると、のっぺらぼうだった目の前のマネキンが見る見る間に現実の自分の姿になる。
「このような感じでよろしいでしょうか?」
「ああ、大丈夫だ」
そう返事して、メイキングに取り掛かる。
流石に、素顔のままゲームは嫌なので髪の色と、目の色だけをいじる。
髪を白、目を金色にする。
「こんなもんでいいか」
「【容姿】の設定を終了しますか?」
「おう」
「【容姿】を設定しました」
そうモニカが言うと目の前のマネキンに自分が吸い込まれる感覚を感じて、目を閉じてしまった。
そして、目を開けると目の前からマネキンがなくなっており、さっきまでの謎の浮遊感もなくなって地面に足がついている状態になっていた。
「次に【職業】を設定してください。なお、選択できる【職業】はゲーム内での行動で増えることがあります」
「<盗賊>で頼む」
「【職業】を<盗賊>に設定します」
モニカの問いにそう返答する。
職業によって、レベルアップ時のステータスポイントの割り振りが違う、今俺が選んだ<盗賊>は、主にDEXとAGIの二つの伸びがいいのだ。
モニカの言ったようにゲーム内の行動で職業が増えると言う、これもこのゲームが売れる理由の一つなのだろう。
そんなことを考えているとまたモニカが話し出す。
「【種族】【容姿】【職業】の設定を確認。ステータスを設定します」
「ステータスポイントを20ポイント取得しました。ステータスに割り振ってください」
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名前:ロイド LV.1
職業:盗賊 LV.1
種族:人間
性別:男
HP 100
MP 100
STR 11
VIT 10
INT 10
MIND 10
AGI 14 →30
DEX 14 →18
LUK 10
称号
なし
スキル
【盗賊の心得 LV.1】
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AGIに16、DEXに4割り振る。
「ステータスポイントの割り振りを確認しました。所得するスキルを10個選択ください」
そうモニカが言うと目の前に半透明のボードが浮かび上がり、様々なスキルが書かれていた。
俺はその中から、[短剣術][歩行術][体術][識別]
[調薬][敏捷強化][器用強化][跳躍][麻痺耐性][睡眠耐性]を選ぶ。
「スキルの選択を確認しました。これで初期設定は完了です」
「これで終わりか」
「はい、この設定で『Real Fantasia Online』を開始しますか?」
ここまでモニカが話すと、目の前に
《YES or NO》と浮かび上がる。
俺はYESを押す。
「了解しました。今から初期リスポーン地に転送致します」
モニカがそう言うと足下が光りだす。
その出来事に俺が驚いていると、モニカが続けて喋りだす。
「最後に一つ、このゲームのコンセプトは"自由"です。それこそPKをしようと、NPCを殺そうと自由です。この『Real Fantasia Online』は全てが自由です」
その言葉を合図に足下の光がより一層強くなる。
「この世界での冒険をお楽しみください」
そう言うとモニカは深々とお辞儀をする。
その姿を最後に、光が俺を包み込む。
次の瞬間、俺の身体は一瞬の浮遊感を感じると目の前の景色が切り替わる。
そして俺は、初期リスポーンである、
第一の街ヌールに降り立った。




