表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
転生はできなかったけど転性はしました  作者: 紅葵
第二章『中学生編』
8/61

第八話『女子力アップ』

 中間テスト、文化祭、期末テスト、冬休みにリリーの誕生日、正月に初詣。

 それらのイベントを終えて季節が流れた。


 二月中旬に差し掛かったばかりの日曜日、俺は台所に立っていた。


「おや?チョコレートを作っておるのか?」

 婆ちゃんが台所へ来て、俺の作っている物を覗き込む。

「うん、もうすぐバレンタインデーだからね。せっかくだから皆に手作りチョコを配ろうかと」

 特に男子は義理でも欲しがるだろうからな。


「そうか。当然、ワシにもくれるんじゃよな?」

「当たり前でしょ。婆ちゃんにはとびっきり美味しいのを作ってあげるから、楽しみにしていてね」

 その言葉に婆ちゃんは嬉しそうに笑う。


「あ、それはそれとして、今日の晩御飯は何が良い?」

「リリーの作る物ならなんでも良いぞ。どれも美味しいからのう」

 もう、一番困る答えだよ。

 ぷりぷりと頬を膨らませながら、俺はチョコレート作りを再開する。


 そんなリリーの姿を、花蓮婆ちゃんは微笑ましく見守っていた。




 バレンタイン当日になり、いつもよりちょっとだけ早めに登校した俺はクラスメイトにチョコを配っていた。

 受け取った男子は涙流して喜んでいて、女子とは友チョコの交換会となった。


 しばらくすると、別のクラスからもリリーのチョコを欲しがる者が現れる始末。

 しかし、用意周到な俺はもちろん別のクラスの分のチョコも準備していた。


 少し誤算があったのは、別の学年からもチョコを欲しがってやってくる者がいた事である。

 今、この中学校でリリーの姿と名前を知らない者はいない。


 姿だけでもかなり目立つ。

 黒で統一された集団に、たった一人だけ金色が混じっていれば、それは嫌でも目立つだろう。

 金髪碧眼の美少女はこの中学校に自分一人しかいないのだから。

 黒髪黒眼の美少女ならそれなりにいるだろうけど。

 

 リリーは男子生徒からだけでなく、女子生徒からも人気がある。

 男子生徒からの人気は、もちろんその容姿が主な理由であるが、他には気さくに話しやすいところとかである。

 そして、女子生徒からの人気のほとんどが恋の相談に乗っているからだ。


 しかも、恋愛成就率が非常に高いらしい。

 今まで相談にやってきた女子生徒のほとんどが、「リリーちゃんのおかげで好きな人と付き合える事になりました」と報告にやってくるのだ。

 中には失敗して泣きながらに報告にやってくる者もいるけど、アフターフォローはしっかりとやっている。


 少し驚きだったのが、女性教諭までもが俺に恋愛相談を持ち掛けてきた事もあった。

 俺がわかるのはあくまでも十八歳までの思春期期間中の男心なのである。

 一応、その延長で考えて、先生の恋愛相談に乗ったりもしたのだが、やはり大人と大人の関係は複雑で難しいようであり、あまり力にはなれなかった。


 先生の恋愛相談はさておき、その結果、俺は全校生徒のほとんどから慕われる存在となっていて、何やら色んな称号がついている。


 主に使われる称号は『恋の天使』であるが、中には『男よりも男前な天使』であったり、『ボクに舞い降りた天使』などと、若干意味不明なのも含まれている。

 ただ、どの称号にも天使という単語が含まれているのには苦笑しかできなかった。



 まあ、そんな結果があれば、学年が違っても天使の手作りチョコを欲しがる者は当然現れるわな…。

 用意周到と言っておきながら、そこまでは用意できていなかったよ。


 ちなみに、俺の手作りチョコには『天使のチョコレート』と言う名称が勝手に付けられていたらしい。

 そして、その天使のチョコレートを受け取る事が出来た上級生の間で、チョコの奪い合いが発生した事に関しては俺は知る由もなかった。




「うぇ~ん、リリーちゃんがこんなにチョコ作りが上手って知ってたら、一緒に作ってたのにぃ」

 昼休みになって友達の女子に囲まれた俺は、来年のバレンタイン前にはチョコの作り方を教えてほしいと頼まれていた。


「う~ん…一緒に作ったり教えるのは構わないんだけど、わたしもインターネットで調べたレシピ通りに作ってるだけだよ?」

 勿論、いくら婆ちゃんから大金と呼べるほどのおこづかいを貰っているとは言っても、高級な素材は使ったりはしていない。

 どれもスーパーで売っていた安物の素材である。


 だから皆がやたらと美味しいと褒めてくれるけれど、特別な素材もレシピも使ってないのだから、誰でも作れる物だと思っている。

 まあ、それでも一緒に作りたいって言うのであれば、その約束くらいはしても別に構わないけど。



 ちなみに、受け取った通帳のお金は主に食費に充てている。

 毎日家計簿をつけてあまり使い過ぎないように気を付け、自分のこづかいは月に二千円と決めていた。

 欲しい物があっても、それがどうしても今手に入れないといけない物かどうかを考えたら、別にそこまでの事はないので普通に我慢できている。



「レシピや材料を理解していても、料理が苦手な人はとことん苦手なものよ」

 そういうもんなのか。俺は男の時も普通に料理してたからなぁ。


「そういえば、前の家庭科の調理実習でリリーちゃんが作ったカップケーキ、凄く美味しかったよねぇ~」

「うん!あれはお店に出せば確実に売れるレベルの美味しさだったよね!」


 そういや期末テスト前に一度だけあった調理実習でカップケーキ作ったなぁ。

 あれも何故かやたらと食べたくなったから、班の皆にお願いして作らせてもらったんだよなぁ。

 あれは中々に良い出来で、家庭科の先生にも絶賛だった。


 ちなみに、その時の調理実習で作る物は、全班共通で白米を炊き、味噌汁を作り、アジフライを揚げて横にキャベツの千切りとプチトマトを添える、という簡単な内容であった。

 それ以外で、自由調理としておかずをもう一品作るかデザートを作るという内容だったので、俺はその両方を選択し、デザートにカップケーキを作らせてもらったというわけである。


 ちなみにおかずをもう一品に関しては豆腐ハンバーグを作らせてもらった。

 婆ちゃんも大好きなおかずの一つである。


「あれ?そういえば、その時の調理実習って、わたし以外の皆は調理してたっけ?」

 急にふと思い出したら、他の皆は全く調理していなかった気がする。

「だって、リリーちゃんの手際が良すぎて、これは手伝った方が邪魔になるなぁって思ったから」

「いやいや、皆で楽しく料理を作るのを学ぶのが調理実習だからね!」

 どうやら俺は皆の学ぶ機会を奪ってしまっていたようである。


「あ~ぁ…入学してすぐのオリエンテーションの時にリリーちゃんがいてくれたら良かったのに…」

「あぁ…あのカレーはなかったよね…」

 皆がどんよりした表情で落ち込む。

 中学に入学してすぐの事、新入生オリエンテーションのキャンプがあったそうな。

 そこで、晩御飯として班に分かれてカレーを作ったらしい。


「カレーって、あのカレーだよね?」

 カレーのどこに失敗する要素があるかわからなかったので、もしかすると自分の知らないカレーが存在するんじゃないかと一瞬思ってしまった。

 そして、すぐにルゥを使わずにスパイスからカレー作りに挑戦させられたのかと思ったが、やっぱりそうじゃなかった。


「ジャガイモは生煮えだし、ルゥは水が多すぎて味が薄かったし、肉は焦げ付いてて…」

 想像しただけで目も当てられない。


 悲惨なカレー作りだったらしく、以来、皆料理するのを苦手としてるそうな。

「ん~…。だったら今度うちに来て、一緒にカレーでも作る?」

「えぇ!?リリーちゃんの家!?行ってみたい!」

 うん、来るのは良いけど、カレー作りも忘れずにね。


 その後、この話はお泊り会になる話となってまとまった。




「はい、婆ちゃん。バレンタインのチョコだよ」

 夕食後に俺は婆ちゃんにバレンタインのチョコを渡す。

「おぉ!ありがとう。これはなんじゃ?」

「赤ワイン入りのホットチョコレートだよ。婆ちゃんよく赤ワインを飲んでるから、レシピ調べて作ってみた」

 今回のホットチョコレートはワインのアルコールが飛ばないようにして作ったので、ワインを入れた後に味見できないのが難点であるが、ホットチョコレートだけでも美味しかったので大丈夫だろう。


 婆ちゃんは早速ホットチョコレートワインを口にする。


「うむ!おいしい!流石はリリーじゃの」

 その言葉に嬉しくなって俺は照れる。


「そうだ。今度友達がお泊り会をしたいみたいなんだけど、泊めても大丈夫?」

「あぁ、全然構わんぞ」

「ありがと、婆ちゃん」


 その後、婆ちゃんは上機嫌にホットチョコレートワインを飲み、俺はその隣で今日の学校での出来事を話すのであった。




 数日後に開かれたお泊り会で、まず皆は俺の住んでいる家のでかさに驚いていた。

 そりゃ、驚くわな。俺も驚いたし。


 カレー作りも、俺は口出しをするだけで一切手伝わずに皆の手だけで作ってもらった。

 調理実習の時に皆の出番と学ぶ機会を奪ってしまってたからね。

 そうして出来上がったカレーはとても美味しく、皆喜んでいた。これで少しは料理への苦手意識が払拭されれば良いのだが。


 ちなみに、お風呂は俺も含めて全員が入れるほどの大きさであったが、中身が男である俺は適当に理由をでっちあげて皆とは別にお風呂に入った。

次回更新予定:明日。



・裏設定

黒木 百合:違うクラスなのに、いつの間にかリリーの常に近くにいて、皆とも仲良くなってる。


仲の良いクラスメイトその1:伊吹いぶき 京子きょうこ

仲の良いクラスメイトその2:さかき 香織かおり

仲の良いクラスメイトその3:雛菊ひなぎく 美智香みちか

仲の良いクラスメイトその4:松本まつもと なずな



・天使の称号シリーズ

恋の天使

男よりも男前な天使

ボクに舞い降りた天使(NEW)

料理上手な天使(NEW)



・嘘次回予告


天使と呼ばれ、学校内で絶大な人気を誇る少女リリー。

そんな彼女の前に、ある日うさんくさい感じのマスコットキャラが降りたつ。

「ワイと契約して、魔法少女にならんか?」

断り切れなかったリリーはキュウベロスと名乗ったマスコットキャラと契約を結び、魔法少女となってしまう。


次回、魔法少女りりーかる☆リリー 第九話『魔法少女な俺』

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ