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第五十一話 中学生編『愛の告白とストライプ』

前話と同じく第七話の少し前の話です。

 この日はほんの少しだけ風が強い日だった。

 台風のように強風というわけでなく、まだ残暑が厳しい季節に爽やかに吹く気持ちの良い感じの風だった。


「リリーちゃんおっはよー!」

「おはよう、きょーちゃん」


 通学路の途中で待ち合わせをして、俺はきょーちゃんと一緒に登校をする。

 そういえば、初日も途中まで一緒に帰ってくれたよな。だから、きょーちゃんの名前は憶えていたんだけどね(苗字のみ)。


 他愛もない雑談をしながら、俺ときょーちゃんは学校へと向かう。

 その時、俺には知る由もなかったのだが、風の影響で俺の背中まで伸びた金髪が綺麗になびき、キラキラと輝いていたそうな。

 それを見ていたきょーちゃんや、その他の通行人達は皆、その綺麗な金髪に見惚れてしまっていたそうな。


「今日はちょっと風が強いねー」

「だね、でもおかげでちょっと涼しいから助かるよね」


 これが河川敷でのやりとりなら、今日は風が騒がしいって流れからのこの風、泣いています。的な流れになるんだろうな。いや、なるわけないか。

 仮になったとしたら、河川敷近くのコンビニでポテト半額とかやってたら良いな。



 変な事を思いながら、俺はきょーちゃんと学校へと向かう。

 その時だった。


 ビュウウゥゥゥゥウウウッ!!


 少し強めの突風が吹く。

「きゃあぁぁ!」

 きょーちゃんが風で捲れるスカートを手で押さえる。

 俺は、元男としてその絶好のパンチラシーンを見逃さなかった。

(ふむ、可愛らしいピンク色だったな)

 眼福である。



 ちなみにこの時、俺は全くと言って良いほどスカートに手を触れてさえいなかった。

 そうなるとどうなるかと言えば…。


(今の、見たか…?)

(あぁ、見た!白と青のしましまだった!)

(朝から天使のような金髪美少女のパンチラ見れるなんて、俺達ツイてるな!)

(むしろパンモロだったけどな!!)


 俺ときょーちゃんの後ろで同じように通学をしていた男子達が、その瞬間を見ていたのだった。

 数年先で言われる事になるのであるが、俺はこういったガードが本当に甘いのである。


 こうして、俺はきょーちゃんのピンクを、そして後方を歩く男子達は俺の白と青のストライプのパンツを見て、きょーちゃん以外の全員が朝から幸せな気分になっているのであった。




「もう、朝からいやらしい風!」

 学校に到着して、下駄箱で靴を履き替えながら、きょーちゃんはさっきの出来事に対してぷんぷんと怒っていた。俺と男子達にとっては神風だったんだけどな。


「お?」

 自分の下駄箱を開けると、上履きの上に何かが乗っていた。何かと思えばどうやら手紙のようである。

「…もしかして、ラブレターか?」

「え!?ラブレター!?」


 きょーちゃんが興味津々といった感じで覗き込んでくる。

「多分な。下駄箱にこういう手紙が入ってたら、高確率でラブレターだろ?」

 流石にこれで「この文章を英語にしなさい」って手紙を入れるやつはいないだろう。

 …髪型的にはきょーちゃんは似てるけどな。やばい、きょーちゃんがコケシに見えてきた。


「それはそうと、口調がまた悪くなってきてるよ?香織ちゃんに怒られちゃうよ?」

「おっと、そうだったそうだった」


 あまりに香織に言われ過ぎてるからか、他の皆も俺の口調が男口調になると注意するようになってきた。

 ただ、おそらく俺に嫌われたくないからか香織の事を引き合いに出してくる。気にしなくても良いんだけどなぁ。


 俺はその場で手紙を開いてみた。

 内容としては、放課後大事な話があるので校舎裏に来てほしいという内容で、差出人は同じクラスの男子からだった。


「誰からなの?」

「ん~…プライバシーもあるし、悪いけど秘密にさせて」


 きょーちゃんは差出人が気になっていたけど、流石にそれを喋るのは良くはない。

 もしも俺が男のままで、ラブレターを誰かにあげてその事がすぐに広まったと考えたらゾッとする。

 特に、好きになった女子がそういう事をすぐに広めてしまう女子って考えたら悲しくなっちゃうしね。まあ、これは女子だけでなく男子にも言える事だけど。



 きょーちゃんはそれでも「え~、絶対に秘密にするから教えてよ~」って粘ってくるけど、俺は首を横に緩やかに振ってそれを拒否する。

「ぶー、リリーちゃんのケチ~」

「俺は人の嫌がりそうな事はなるべくしたくないんだよ」

 そう言いながら教室に入ると、丁度香織が今の言葉を聞いていて、にこやかに笑いながらやってくる。


「…気を付けます」

「よろしい」

 もはや「口にしなくてもわかってるよね?」と表情でわかるようになってきた。


「それで、今の話は何の話?」

「聞いてよかおりん!リリーちゃんったらラブ…もがが!」


 きょーちゃん口軽くないか!?

 俺は思わず咄嗟にきょーちゃんの口を塞ぐ。


「ラブ……レターね。まあ、リリーちゃんは天使のように可愛いからしょうがないよね」

 バレテーラ。流石にラブまで言われてしまったらそりゃバレるわな。


 もごもごとしているきょーちゃんの口から手を放し、俺は深いため息をつく。

「ため息つくと幸せが逃げるわよ?」

「大丈夫、人生最大の不幸なら二年前に味わったからそれ以上の不幸はそうそう起きないよ」

 俺の意味深な言葉に、きょーちゃんも香織も「何があったの?」と訊ねてくる。まあ、そりゃ気になるわな。


 だけど俺は…。

「それは…乙女のヒ・ミ・ツ(ハートマーク」

「うわ、あざとい!でも可愛い!」


 軽くウインクをしながら人差し指を口に当てて答えると、香織からそんなツッコミが入る。

 しかし、その流れのおかげでラブレターの話は二人からすっかり抜け落ちたようであった。


(ふふふ、計画通り!)


 自分ではニヤリと笑ったつもりだが、周りの皆には天使が微笑んだようにしか見えなかったようである。




 その日の放課後。


 手紙に書いてある通り、指定された校舎の裏へと俺は向かう。

 校舎自体も複数棟あって、棟によっては人通りの多い校舎もあるが、呼び出された校舎裏は全くと言って良いほど人通りがなかった。


「さて、やっぱり告白なのかな?」


 これで全く違う頼み事とかだったらある意味笑えるな。

 地球人に化けた地球侵略を狙う異星人が、俺に早く変身を見せてくれって頼んでくるような展開だったりとか。


 そんな事はなく、やっぱり普通に告白だった。


「一目見た時から橘さんが好きになりました!ぼくと付き合ってください!」

 クラスメイトの男子から、人生初の告白をされた。…転性前に女の子から告白されたかったなぁ…。


「ありがと。でも…ごめんね」

 俺ははっきりと断る。

「…もしかして、他に好きな人がいるとか…?」

 クラスメイトの男子は、少し泣きそうな表情をしながら質問をしてくる。


「いや、好きな人はいない。…ただ、俺…じゃなかった。わたしがこれからもずっと誰とも付き合わないって決めてるだけ」

 元男だから、男と付き合おうとか考えようとも思っていない。だからといって今は俺も女なのだから、同性である女とも付き合おうとは思っていない。

 結局、俺は今後もずっと誰とも付き合う事はないだろう。


「理由は…流石に教えてはくれないよね?」

「まあ、そうだね」

「…わかった。ありがとう」

「…ごめんな」


 せっかく勇気を振り絞って告白をしてくれたのに、俺は何もしてあげる事はできない。

 本当にすまないと思う。だが…。


「今朝も、伊吹がラブレターの差出人を聞いてたけど、黙っててくれたんだよね。橘さんってほんと優しいよね」

「そんな事ない。ただ、誰だって広められたくない事だってあるだろ?俺はせめてそういう事くらいは秘密にしといてあげたいだけなんだ」


 クラスメイトの男子は「だからそれが優しいんだよ」って言ってたけどそうなのかな?


「まあ…断っておいてなんだけど、これからも友達として仲良くしてくれよな。俺、お前の周囲を笑わせられるところとかは好きなんだぜ」

「うん、こちらこそよろしく。って…橘さんさっきからまた男口調になってるよ…」


 そうツッコミが入って俺は「おっと」と口に手を当てる。

 その時だった。


 ビュウウゥゥゥゥウウウッ!!


 今朝と同じように少し強めの突風が吹く。

 元々ガードが甘い上に、口に手を当てていた俺は、当然スカートに手を伸ばす事はしなかった。

 そして、それがどういう結果をもたらせたかというと…。


「し、しましま…」


 目の前の告白をしてきたクラスメイトに、バッチリと見られたというわけである。


「…ま、勇気を出して告白をした記念に拝めたって思っとけ…」

 そう言って、俺はゆっくりと歩いてその場を離れるのであった。




 その日を皮切りに、俺は毎日のように告白を受ける事になる。

 同じクラスの男子であったり、別のクラスの男子であったり、更には別の学年であったりもした。

 皆、俺の容姿に一目惚れをしてしまったようである。


 そして、これは俺には知る由もなかったのだが、俺の青と白のストライプのパンツが脳裏に焼き付いてしまって、その結果俺の事が好きになった男子もいたとかいなかったとか。



働き方改革のニュースを観て、ホワイト企業はしっかりと良い方向に改革できてるのに、自分の働く会社は元々ブラックだったのに更にブラックになったなぁって思う今日この頃です。

今まで超勤を付けるなって言われ続けてて(サビ残)、ここ最近になって「超勤付けても良いから、この仕事を手伝え」と、別部署の仕事を押し付けられるようになりました。


何が言いたいかと言うと、その結果、小説書く時間がグンと減ってます(泣

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