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秋葉原ヲタク白書18 ハクティビストの紋章

作者: ヘンリィ

主人公は、SF作家を夢見るサラリーマン。

相棒は、老舗メイドバーの美しきメイド長。


このコンビが、秋葉原で起こる事件を次々と解決するという、オヤジの妄想満載な「オヤジのオヤジによるオヤジのためのラノベ」シリーズ第18作です。


今回は、バー常連の女サイバー屋が天才ハッカーのチャットを偶然見てしまったばかりに白スク水で晒しに!仇討ちに天才ハッカーの正体を暴きにかかるコンビでしたが…


お楽しみいただければ幸せです。

第1章 公開処刑

白スク水女子が、真っ昼間の昭和通りをわぁわぁ泣きながら歩いている。

あ、白スク水女子と逝うのは、白いスクール水着を着た女の子のコトだ。


たちまち、彼女の周りを歓声を上げて写メる陽気なインバウンドや、慣れた手つきで素早くSNSにUPするヲタク達が取り囲む。


ドンドン膨らむ人だかりを避けつつも横目でチェックするのはサラリーマンで、興味津々ながら眉を挟めてるのは恐らく主婦だ。


いかに世界のヲタク首都アキバとは逝え、コレでは晒し首ならぬ晒しスク水だ。


「タイヘンですぅミユリ姉様!姉様の恋敵のスピアさんが晒しに!」

「スピアさん?あのサイバー屋さんの?でも、恋敵じゃないんだけどな」

「スク水1丁(枚?)で泣きながら昭和通りを歩かされてます!」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


もちろん、スピアがミユリさんの恋敵なんかでないコトは、今さら逝うまでもない。

僕とミユリさんの御主人様とメイドの関係は鉄壁で何者も付け入るコトは出来ない。


まぁ確かに、あの月夜に僕はスピアと御屋敷に通じる外階段でキスはする。

しかしソレはまぁ、そのぉ、単なる気の迷いであり既に解決済みの問題だ(多分)。


と逝うワケで、今、スピアは確かに白スク水1丁(枚?)のまま、御屋敷までジュリに連れられ、カウンターで肩を震わせ泣いている。


あ、セーラー着てるけど実はアラサーのジュリは、ストリートギャングのヘッドの妹で、スピアはギャングお抱えのサイバー屋なんだ。


ミユリさんが、素早く淡い色合のカクテルをつくってスピアの前に差し出す。


「少し落ち着いて。あ、コレは私のTO(トップヲタク)からのおごり」

「私、@KIRAに脅されて。サンクチュアリをちょっち覗いただけなのに…」

「ええっ?!アキラってあの@KIRA?もしかしてサンクチュアリって、あの伝説の…」


バーの常連の1人が絶句する。

彼の名は、ゴシップボーイ。


アキバ随一のパワーブロガーで、彼のブログはUPされるや3時間以内に7つの言語に翻訳されて世界中に再配信されてるらしい。


でも、僕が読む限りでは、彼のブログって恐ろしく退屈なんだけどね笑。


「スピアさんってサンクチュアリのメンバーなの?@KIRAとも知り合い?すげぇ!リアルサンクチュリアンと初めて会ったょ!やっぱり、実在するんだ」

「ハッキング中に偶然迷い込んだだけなの!急いでスマホをレンジで溶かしたけど、間に合わなかった。たちまち逆探(知)されてアカウントから過去ログから全部暴かれネットで真っ裸にされた。そして、もし白昼の昭和通りをブルマで歩かなければ、私の黒歴史をネットに晒すと脅されたの!」

「酷いな。ソレじゃ公開処刑じゃないか」


ゴシップボーイが解説してくれる。


サンクチュアリというのは、チャットルームの1種らしいが、メンバーが大物ハッカーやボットネットの支配者などに限られる。


つまり、世界頭脳クラスのハッカーが集うネット上の秘密クラブのようなものだ。

サイバー関係者間では半ば伝説化していた存在だったが、やっぱり実在していた?


たまたまアクセスしてしまったスピアは、コレまた伝説のハッカー@KIRAに盗み見を見つかり、難なく「全裸処刑」されてしまう。


仮にもサイバー屋の端くれであるスピアが逃げ切れないと即断しスマホを電子レンジで焼いてウェブから遁走を図る僅か数秒。


その間にスピアを簡単に「全裸処刑」してしまい、脅迫して完全屈服させる。

早技や神業など世に言葉は溢れるが、その何れも出し抜く正に異次元のテク。


でも、スピアの話で1つ腑に落ちない点がある。

そこで、(多分みんなを代表して)僕は尋ねる。


「でも、@KIRAのリクエストは、ブルマで歩け、だったんだょね」

「そうなの!ヒドいでしょ?」

「でも、確か、スピアは、えっと、あれ?確か歩いてた時は…白スク水だったっけ?」


すると、スピアは泣きはらした顔を上げ、僕をキッと真正面から見据えて逝う。


「だって、その方がみんなも喜ぶと思って」


なるほど←


第2章 ハクティビストの巣

何だかんだで、結局、僕とミユリさんは@KIRAの正体を探るハメになってしまう。

わぁわぁ泣くだけで全く埒のあかないスピアを見かねたジュリからのリクエストだ。


ネットで調べてみたら、最強のハッキングとはソーシャルエンジニアリングであり、人を思い通りに動かすコトだ、とある。


@KIRAは、スピアに白スク水を着せ(最初から着てるけど笑)、昭和通りを歩かせたワケだから、かなりの凄腕なのだろう。


ジュリからは「セクボ(ジュリの兄貴がヘッドをやってるストリートギャング)の兵隊を好きに使ってね」と逝われている。


でも、今回はそう逝う力仕事ではなく、一歩間違えればミユリさんが白スク水でパーツ通りを歩くハメになりかねない危険な仕事のようだ。


え?ミユリさんの白スク水?!

ソレはソレでアリだょ…ぎゃw


ミユリさんの肘鉄(ミユリさんは僕が何を考えてるかがワカル)で我に帰ると、目の前にジーンズにポロシャツ姿のムーミンがいる。


あ、ココは僕達のアキバのアドレス(溜り場)マチガイダ・サンドウィッチズだ。

そして、ムーミンは、政府級の顧客を抱える世界有数のトロール会社の経営者。


トロール会社と逝うのは、フェイクニュースなどを流しネット上で情報操作を行う会社のコトなんだけど、実は、彼には貸しがある。


何しろ、彼の会社がロケット弾で吹き飛ばされるのを身を以て救ったのだ。

ソンな御縁もあり話がネット界隈の時は先ず彼の話を聞くコトにしている。


果たして、今回もムーミンからは、とても重要な情報がもたらされる。なにしろ…


「あぁ@KIRAですか。知ってますょ」

「ええっ?お知り合いナンですかっ?!!」

「いや、お知り合いというか…まぁウチの登録業者みたいなモノかな」


登録業者?


「ウチは情報操作が看板なんでハッキングは守備範囲外なんですが、仕事柄、ハッカーが必要になる時もあるんですょ」

「え?ソレがどんな仕事なのか気になるー。でも、とりあえず、そのハッカーストックの中に@KIRAがっ?!

「ええ。超A級ランクでしたね。常にいい仕事をしてくれてました。ハッカーは基本的にアナキストなんだけど、彼は資本主義にも理解があった」


おおっ!もしかして、お金の亡者系かな?

何ゴトもお金で解決って安上がりだょね。


セクボに必要経費として請求してやろう←


「じゃ早速、@KIRAに会わせてください。お金が必要なら用意します(セクボが)」

「いや、実は私も会ったコトはナイんです。全てネットの掲示板でやり取りするので」

「おおっ!殺人を依頼したりする闇サイトの掲示板のコトですね?」

「いいえ。黒猫熊のサイトです」

「黒猫熊?蛇頭か何かの名前ですか?やっぱり闇サイトでしょ」

「だから!チョコバーのブラックパンダーのファンサイトのコトですょ」


え?ブラックパンダー?

あのコンビニで¥32で売ってる奴?


「ええ。ブラックパンダー公式HPの『ファンの声』掲示板に暗号を使って書き込むと、彼が絡んで来るのです。ただ…」

「ただ?」

「@KIRAに仕事を受ける気がない場合は放置されます。つまり、商談は不成立と逝うコトですね。テリィさんの頼みではあるけど、いくら金を弾んでも、会いたいだけでは@KIRAは動かないと思うな」

「とにかく、オファしてください」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


その夜、ブラックパンダー「ファンの声」掲示板にコメントが投稿される。

同窓会に担任の顔写真入りのブラパンを作るので1口千円でカンパを頼む!


果たして数日が過ぎ…コメントはつかないw


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


しかし、僕とミユリさんは今、御茶ノ水にある安アパートの1室の前にいる。

デカデカと旭日旗が貼られたドアの向こうに、恐らく@KIRAがいるハズだ。


実はココ数日、僕達が手をこまねいている間に、スピアが猛烈に働いている。

先ず、ブラックパンダー掲示板の過去ログを漁り@KIRAからの返信を集める。


誰のメールにも、必ず「筆跡」がある。

改行を押す間隔や句点の打ち方などだ。


@KIRAの「筆跡」を知ったスピアは、ブラックパンダー関連のオークションサイトの膨大な過去ログの中から同じ「筆跡」を探す。


恥をかかされた女の執念は凄まじく、不眠不休で調べ抜き、3年前にブラパン特製トートバッグを競り落としたメールを見つけ出す。


後は簡単?なハッキングで、送金者の口座番号から容易にこのアパートの住所が割れる。

あ、もちろん送金は上海のオフショア口座からだったけどソンなの全く障害にならない。


そんなこんなで僕達はこの部屋に辿り着く。


しかし、この安っぽいアパートのドアにデカデカと貼られてる旭日旗ってどーなの?

まさか、ドアの向こうでは、戦闘服の右翼が日本刀の素振りとかしてるのだろうか?


ミユリさんは、僕をチラチラ盗み見ては何やら楽しそうに微笑む。

僕は、色々と思案を巡らせた挙句、意を決してドアをノックする。


「こんにちわ。自衛隊に入りませんか?」


第3章 猫耳のスピア


「動くな」


僕がドアをノックするのとほぼ同時に低い声がして、僕の側頭葉の辺りに冷たい感触。

コ、コレは銃口?フト気づくと僕達は全身が黒装束の特殊部隊員に取り囲まれている。


僕に拳銃を突きつけてる者だけが背広で他は全身黒のヘルメットに防弾チョッキ、サイレンサー付きのMP5(自動小銃)を装備。


振り返るとミユリさんには特殊部隊員が耳打ちしてるが、よく見るとソレは国益優先の秘密部隊に籍を置く元メイドのサリィさんだ。


僕の頭には拳銃を突きつけといて、ミユリさんには耳打ちってどーなの?!笑


とにかく、僕とミユリさんを排除した彼等は旭日旗が貼られたドアから突入態勢に散開。

そのまま、僕のノックの答えを待つコトなく無言でドアを蹴破り、室内へと雪崩れ込む。


「動くな!MPD(警視庁)だ!」


中は、室内干しの洗濯物やカップ麺の残骸、少女コミックやジャニーズ系アイドルグッズのゴミ屋敷で足を踏み入れる隙もない。


その中央にはコタツがあり、ヌクヌクとドテラに包まりPCに向き合っていた物体が、突入して来た特殊部隊に目を丸くしている。


物体?いや、女…か?


おかっぱ頭に分厚い眼鏡でアラサーは間違いないが、何だか昭和な上京娘を彷彿させる。

食べかけのチーズおかきを吐き出し、むせる彼女を特殊部隊がコタツから引きずり出す。


「@KIRA、国有資産濫用及び国家反逆罪で逮捕する!」


さっきまで僕に拳銃を突きつけてた背広の男が@KIRA?と思しきドテラ女に宣告する。

ドテラ女は、何が起こっているのかすら理解出来ずに狼狽、ボロボロと大粒の涙を流す。


さすがに、僕とミユリさんも驚きの連続だ。

しかし…女だったのか?@KIRAって。


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


「内閣情報調査室のミウラだ。君達をモニターしていた」


@KIRAを部下に連行(何処へ?)させてから背広の男が自己紹介する(名刺の交換はナシ)。

長身で端正な顔つき、精悍ではあるが何処か華奢な感じもする歌舞伎の女形みたいな奴。


「@KIRAは、過激なネトウヨ(ネット右翼)でハッキングで得た情報をネットに流出させ、国粋主義的な思想を扇動していた。いわゆるハクティビスト(政治に流れるハッカー)で、政権としても頭の痛い存在だった」

「@KIRAってホントに、あのアラサー女だったの?何かイメージ狂うんですけど」

「我々としても想定外だ。しかし、想定外ゆえに今まで彼『女』を捕捉するコトが出来なかった。先入観に囚われない、今回の君達の捜査手腕には心から敬服している」


うーん、MPD(警視庁)に欠けてたのは恥をかかされた女の怨念だけなんだがな。

まぁ、恥は歴史を動かす原動力の1つだけど官僚組織には望むべくもないものだ。


@KIRAの連行後、特殊部隊は証拠品押収に入るが、普通は押収で室内は散らかるのだが、ココでは逆に片付いて逝くのが笑える。


ドアの辺りで、ミユリさんとサリィさんが立ち話(世に逝う井戸端会議w)をしている。

サリィさんは、潜入捜査中に途中から警視庁捜査と合流し今回の突入となったらしい。


サリィさんが、僕の視線に気づいて@KIRAから押収したPCを僕の方に向けて開く。

ミユリさんが指差す待受画面には、猫耳の女子がおどけた表情で微笑んでるのだが…


やややっ?

彼女は…スピアだ。


第4章 アナーキストの本懐

「スピア全裸処刑事件」が一段落したある夜、僕達はまた御屋敷(ミユリさんのメイドバー)に集まる。


「@KIRAの正体、何となくわかったょ」

「ありがと。さすがは噂のSF作家とメイド長のコンビ。やっぱりアキバ最強ね」

「でも、@KIRAの正体には驚いたな」


結局、@KIRAの素顔は、コンビニバイトで生計を立てる鳥取出身の女子と判明する。

声優を志し上京するも挫折し、引きこもる内にハッカーとしての天賦の才が開花する。


「それじゃ根は優しい引きこもり腐女子ってコト?何でハクティビストなんかになったのかな」

「腐女子は悪者に非ズ。ただ腐るのみ、って逝うのが腐女子の掟なのに」

「掟破りは腐女子破門ょね」


全て、内閣調査室のミウラが悪いのだ。


ミウラは、@KIRAに政府の極秘資料をハッキングさせてはリークさせ、巧妙に世論操作を行っていた形跡がある。


しかし、@KIRAが利用されたと知ったサンクチュアリストが彼に報復の「全裸処刑」を施したトコロとんでもない事実が露見する。


ミウラには女装趣味があり、証拠写真を握る大陸の国に脅迫されて二重スパイとなり、ハクティビスト狩を行なっていたようなのだ。


「ソレで、MPD(警視庁)のSAT(特殊部隊)を使って@KIRAを襲撃したのか」

「うーん。国際情報戦争の最先端の出来事だったんだね、アレ」

「スゴい街になったな、アキバ」


その後、そのサンクチュアリストは、闇サイト経由でミウラの裏切りをリークする。

今、彼はアフリカ小国の大使館付き通商担当官を拝命、近々赴任の予定とのコトだ。


スピアが〆っぽいコトを逝う。


「ハッカーは、もっと自由でアナーキーでなきゃ。お金をもらったり国の都合を押し付け合ったりするのは、私達サイバー屋の仕事。そんなのハッカーじゃない」

「だから、ハッカーはお金稼ぎよりも恥のかかせ合いに腐心するのね。恥と恥の高速取引こそハッカーのアイデンティティ」

「そして、ハッカーも恋をする。時にソレは百合であったりするけど」


僕が、からかい半分でそう言うとスピアは瞬時に顔を真っ赤にして怒り出す。

すかさずミユリさんが、百合は百合で素敵カモと口を挟んで大騒ぎが始まる。


やれやれ、今宵も御屋敷(ミユリさんのメイドバー)は大入り満員でカオスに百家争鳴。

メイド、ストリートギャング、サイバー屋、ブロガー、特殊部隊が入り乱れてる笑。


そう逝えば、ある人が、この御屋敷は中性子星(パルサー)みたいだと逝ってたっけ。

超高速で回転しながら、アキバと逝う銀河に向け電波や光を撒き散らす中性子星(パルサー)


今宵も、その電波に操られ、ヲタクは集い、夢が弾け、事件は舞い込む。

みんな!カオスな電波は届いてる?夜のアキバへ飛び出す準備はいいか?



おしまい

今回は、白スク水がトレードマークのサイバー屋と彼女を上回る技量の天才ハッカー、ストリートギャング、トロール会社の経営者、内閣情報調査室の官僚、警視庁特殊部隊などが登場しました。


また、今回からメイド長の名前をミュウからミユリに変えてみました。特に深い意味はありませんが…


秋葉原を訪れる全ての人類が幸せになりますように。

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