第一話・まさかの追放。
僕らの暮らす辺境の町。 まともな人間は若くして飛び出してしまうので、出来損ないの大人ばかりが目立つチンケな町。 その外れにある深い森を抜けた先には「迷宮」がある。
このしみったれたクソ田舎では攻略不可能と言われていて、アル中と破落戸の吹き溜まりみたいなポンコツギルドからは【S+】という超規格外の任務ランクが付けられている「超高難度迷宮」だ。
今年18才になった僕が所属するパーティ『風林火山』はその最深部で迷宮の主であるダークドラゴンを粉砕し、その肉を頬張りながら勝利の美酒に酔いしれていた。
——僕を除いて。
「これで俺たちの評価がまた上がるぞ! このドラゴンの角を持ち帰れば三年は遊んで暮らせるなぁ!」
そう高らかに言い放ったのはこのパーティのリーダー、勇者の「フータ」だ。 酒に酔っていて、顔を紅潮させながらふんぞり返っている。
フータと僕は、幼馴染だ。
フータは幼い頃から勇者としての資質を買われ、周囲から「神童」などと讃えられていた。
若干9才で「勇者見習い」として大人たちのパーティに混ざると、メキメキとその頭角を現し、僕が魔法学校を出る頃には、彼の名はすでに隣町まで轟いていた。
といっても、隣町だっていつでもドブの匂いが立ち込めてるような薄汚い町だ。
もちろん冒険者としての才能で言えば僕も引けを取らない。 魔導師だから少しばかり畑が違うだけだ。
むしろ僕は「超神童」と呼ばれていた気がする。 魔法学校を首席で卒業しているから、一足先に冒険者になっていたフータが僕をパーティに誘うのは当然の帰結だっただろう。
勇者としてのフータを、僕は少しだけ尊敬している。 しかし、ついさっきダークドラゴンに想像以上の苦戦を強いられたのがよっぽど悔しかったのか、フータは最後の一撃を決めた後、生き絶えたダークドラゴンの顔に唾を吐きかけた。
僕は、フータのそういう所が大嫌いだ。
「ほとんどフータ様が倒してしまうからぁ、私たちには出番がありませんよぉ」
フータに肩を抱かれて猫なで声を出しているのが盗賊のリンコ。
長期間潜ることになる迷宮の攻略には不可欠な存在だ。
……何故かって、フータが所持するお気に入りのセフレだから。存在価値はそれだけ。戦闘では全く役に立たないゴミ。 僕からしてみれば野良犬か麻薬中毒者でも連れてきた方がマシだと思うレベルでいけ好かないバカ女だ。 取り柄はスタイルと顔だけ。
「フータ様ぁ、この迷宮を出たら王都へ行くのですぅ。 フータ様はこんな低レベルな田舎で燻っていてはいけない存在なのですぅ!」
身体を揺すりながらフータに頬ずりをしているのが女僧侶のカンナ。 彼女はリンコよりは多少戦闘の役に立つが、育ちが悪くて手癖が最悪。
盗賊のリンコより盗みが好きな、性根の腐ったゲス女だ。
僕がこいつに盗まれた銀貨を積み上げたら酒場の屋根まで届くだろう。 「知らない」「見てない」「盗ってない」が口癖。 そして首席卒業である僕の完全下位互換。 つまり、魔導師くずれのヘボ僧侶だ。 取り柄は胸と喘ぎ声だけ。
「フータくん、本当にお疲れ様でした」
フータの杯に酒を注いでいるのが、最も足手まといで救いようのない弓使いのサーン。 このカス女はフータと同様、僕の幼馴染だ。 幼少時代はいつも僕の後をくっついて回って、一緒に入ったお風呂で結婚の約束だってした事がある。
しかし、魔法学校に上がる直前に僕がフータを紹介した途端、秒で寝返って僕を見下すようになった。 義理も人情もない人類史上最悪の薄情者。
——ある日「千里眼」で彼女の部屋を覗いていたら、僕が送った恋文を読まずに破いて捨てているのを目撃したことがある。
その時は遠隔魔法で雷を200発ほど落としてやろうと考えた。しかし絶妙なタイミングでシャワーを浴び始めて僕の右手が忙しくなり、遠隔魔法の術式を書きそびれた為に恩赦を与えてやる事にした。 彼女が今元気に生きているのはその恩赦のお陰である。
……以上の四人が僕のパーティメンバー。
首席卒業の僕からしてみれば、フータ以外は底の抜けたコップより役に立たないゴミの中のゴミだが、腐っても地元最強のパーティだ。
彼女達はクソ田舎の基準で言えば「優秀」とかってハンコを押される感じで、彼女たちと同じレベルの冒険者を探そうとしたら、ちょっと骨が折れる。 このパーティに入るなら勇者様の粗末なおちんちんを慰めるスキルも必要になるから、なおさらだ。
実力で言えば首席卒業の僕と地元最強の勇者であるフータが圧倒的過ぎて、このクソ女達は相対的に役立たずの不良品になってしまう。 ……まぁ、それは仕方のない事だろう。
「ゴミモコ、何やってんの?」
幼馴染のサーンが首席卒業の僕に馴れ馴れしく話しかけてきた。 言葉遣いには気をつけろってもんだ、フータの女になった途端に僕を呼びつけにしやがって。 「モコさん」だろうが。 このメス豚以下のメスドブネズミが。
「あ……えっとね。 このダークドラゴン、毒を持ってるんだ。 簡易的に解析したら、そうそうお目にかかれないくらいの猛毒だった。 やられたらヤバかったね。 研究所に持ち帰って、詳しく調べてみようと思ってさ。 何かに転用できれば良いんだけど……」
人間関係を円滑に進める為には、我慢しなくちゃいけないことが沢山ある。 ましてやここは迷宮の最深部。 ボスを倒したところで、帰路にどんな困難が待ち受けているかはわからないから、仲間割れなんてしてしまったら犠牲者が出かねない。
だから僕は彼女ににっこりと微笑みを返した。
「ボソボソ早口で何言ってるかわからないんだけど。 ほんっとオタク臭いんだよ気持ち悪い。こっちは気持ちよくお酒飲んでるのにさぁ、目障りだから陰でやってよ」
酒に酔ってへらへらと笑い声を上げるメンバー達を尻目に、僕はダークドラゴンの体内から取り出した「毒袋」に穴を開け、小瓶に移し替えていた。なかなか強烈な臭いがする。
「なんかくっさいなぁ。おい何してんだよゴミモコぉ。遠くでやってこいよぉ」
うるせぇな卑しいコソ泥が。 女僧侶のカンナだ、こいつは本当に酒癖が悪い。 酔い覚ましにこの毒を原液で飲ましてやろうか。
「あー呑んだ呑んだ! 最高に気持ちいいな! さーて……一眠りしたら迷宮を出るぞ、帰るまでが迷宮制覇だ。 気を引きしめろよ? お前たち」
フータの言葉に、雌ブタ供はわざとらしく姿勢を正して、これまたわざとらしく何度も頷く。 ……本当に反吐が出るってもんだ。
強いというだけで屈服する、目立っているだけでお近付きになろうとする、手札に加えて貰おうとする。 隙あらば自分だけのものにしようと股を広げて顔色を窺っている。
吐きそうだ。 まったく腐りきってるよ、童貞のやっかみかもしれないけどさ。
「……お前らいいか……?ここを出たら、その瞬間からぁ……? 俺たちは英雄だぁ!!」
「イエーーイ!フゥー!ウェーイ! 」
フータの言葉に、知能の低い豚共が鳴き声をあげている。
「……っと待て、寝る前に……ちょっとばかし反省会をしようか。 みんな聞いてくれ」
ダークドラゴンの毒が入った小瓶を眺めいた僕に、フータが「お前もだよバカモコ、こっちに来い。グズグズすんな役立たず」と声をかけてきた。もう十年来の友人だ、そりゃあ言葉も砕けるよな。 まぁ……口が悪いのは今に始まった事じゃないし。
「今回の迷宮攻略で、一区切り付けようと思ってる。 みんな薄々勘付いてると思うが……このパーティには一人、役立たずがいるよな」
何を言いだすかと思ったら……田舎とは言え、前人未踏の迷宮を攻略したゴキゲンな夜になんて事を言うのだろう。 これがまさに、僕がよく指摘されている「空気が読めない」っていうものじゃないのか? パーティのリーダーともあろう男が……本当に嫌になる。
でも、確かにみんな勘付いているはずだ。
サーンとかいう役立たずの腑抜け女はこのパーティには相応しくない。
時代遅れの職、弓使い。 かと言ってそれを取り上げたら、他に何が出来るわけでもない。 僕がお情けでかけてやっているダメージカットのプロテクト魔法とサポートがなければ、今回の迷宮でも10回は死んでいる。こんなお荷物を抱えていたら、今後熾烈を極めるであろう戦いに支障が出るのは間違いない。
その他2人の女からしてみても、フータの正妻面で偉そうにしているクズで役に立たないミソッカス女を煩わしく思っているはずだ。
——ただ、こんな状況で言うべきじゃない。 みんなの前で無能なサーンを晒し上げるようなマネは僕が許さない。 ここは僕が……このパーティの潤滑油として立ち回っている僕が、フータに注意してやらなくてはならない。 パーティ内の人間関係を円滑に進める為には、言ってはいけない事もたくさんある。 だけど、言わなくちゃいけない事もあるんだ。
僕はフータに近づいて耳打ちをする。
「よせよフータ……! みんな言わなくてもわかってるし、本人だって心当たりがある筈だ。 わざわざこんな所で晒し上げるようなマネはよせ、パーティの輪が乱れるぞ。 そういうことは……ベットの中で、慰めながら言ってやるべきさ」
僕はウィットに富んだ台詞回しで、なるべく角が立たないように諭した。 でも本当は奥歯を噛み締めていた。 血が出てもおかしくないくらい。
「お前の事を言ってるんだよ」
「……え?」
フータが僕に指をさしていた。
おそらく、僕の後方にいる三匹の雌ブタの誰かを指差しているのだろう。 後ろを振り返ってみる。やはりだ、真後ろにはサーンがいた。
「よせって! サーンを責めるな! どうしたんだよフータ、おかしいぞ! ここが何処だか分かってるのか!? 」
僕はフータの指を両手で覆い隠し、語気を強めた。
「違ぇよ。バカなのか? 役立たずはお前だって言ってるんだ、このヘボ魔導師が。 お前は今回の迷宮でクビだ、バカモコ」
後ろから大きな笑い声が聞こえる。
手を叩いているようだ。
「マジウケるわ! コントかよ!」
「アハハハハハ! お腹痛い、お腹痛いのですぅ! フータ様ぁ!」
「モコぉ、キモすぎ! アハハハ!」
額に脂汗が滲む。意味がわからない。
どういう事だ? 僕は貢献してる。 さっきのダークドラゴン戦だって、僕の魔障壁がなければサーンは死んでいた。
フータが強すぎるから、僕は少しばかりのサポートをしていれば充分だったんだ。 もしもの時の為に魔力を温存して、最小限のサポートをしてただけだ! それに僕は首席卒業だぞ!
「フータ、誤解してるぞ! 僕は……」
「お前、今回の迷宮で何をした?」
「戦闘のサポートはずっとしていたし……中階層で……カンナの靴擦れを治した。 フータの要求した無理な体位で腰を痛めたリンコを治癒した! 最後のダークドラゴン戦では魔障壁を張ってサーンの命を救った! 豚ど……女の子たちもありがたみを感じているはずだ! なぁそうだろう!? あぁ、こんなこと……こんなことを僕に言わせないでくれよ!」
「……そんなことはな、魔法学校の底辺でも出来る事だ。 クソ田舎のFラン校を首席で出たくらいで俺と肩を並べたつもりだったか? 俺はな、地元にまともな魔導師が居なかったから、消去法でお前を選んだだけだ。自惚れるなよザコが」
嘘だろ? 嘘に決まってる! フータほどの実力者が、僕が戦闘でどれだけ的確なサポートをしてきたか気付いてないのか? そんなはずない!
メンバーから罵詈雑言を浴びたり、からかわれるのは耐えてきた。 だけどこんなこと……追放なんて……。
「うわ、こいつ泣いてる……キッショ! ていうか誰がフータ様とのエッチで腰痛めたなんて言ったんだよ! 妄想で決めつけてんじゃねーよゴミ童貞! もしかして見てたのか変態野郎! 死ねよ!」
見ようとしなくたってさ、フータとヤッてるお前のわざとらしくて鼻につく喘ぎ声に起こされちゃうんだよ。 見ていたのは事実だけどさ。
——本当に信じられなくて愕然としていたら、みぞおちに前蹴りを入れられてふっ飛ばされた。
「潔くパーティ抜けてよぉ、追放だよゴミ魔導師さぁん」
へべれけのカンナだ。 髪の毛を掴まれて、脳をシェイクされる。 ……大丈夫。ダメージはない。心にしか効いてない。
僕は着衣の乱れを整えながら立ちあがった。
「こんなの……間違ってる! 明日、みんなの酔いが覚めたら落ち着いて話をしようよ! 」
「ほんとキモい。 幼馴染だった過去を消し去りたいわ。 アンタくらいの魔導師なんて王都に出れば掃いて捨てるほど居るんだよ、弱虫のカス野郎」
サーンの言葉で膝から崩れ落ちた。
鼓動が速くなる。 息が苦しい。 もうダメだ。 僕の魔法でこいつらを皆殺しにしてやりたい。
……確かにフータの強さに寄りかかって、楽をしていたのは事実だ。けど、魔力の節約は魔導師が基本とするところ。腕の良い魔導師ほど無駄弾は撃たない。 戦況を見て、最小限の魔力消費で的確にサポートをするんだ。 そんなこともわからないのかこのクズ共は。
現に、今だって僕の魔力はほぼ満タンだ。 これはパーティとして最高のコンディションで安心安全の帰路につけるということ。そんな大切な事がわからないのだろうか?
今回だって、フータの手に負えない魔物が出ようものなら僕が前線に立ってしっかりと連携した。 その必要がないと判断したから、魔力を温存する選択をしただけだ。 実に合理的と言えるじゃないか。
……これだけ酔っていたら、僕の話なんか通じないよな。 涙が口に入ってきた。 やたらしょっぱいや。
「おいバカモコ泣いてんじゃねぇよ! どうでもいいけどよぉ、あそこに座ってるキモいゴブリンをどうにかしろよ! なんで連れてきたんだよ! あんなキモいの触りたくねーから自分で殺せよ!」
シーフのリンコがコメカミに青筋を立てている。 アバズレ女の金切り声が耳に障る。 お前は夜の声もうるせぇだけなんだよ。 ボリューム最大にすれば男が喜ぶと思ってるのか?能無しが。
「あ、あれは……あのゴブリンは『軍隊ゴブリン』の中で見つけた奇形種で、とても珍しいから……連れて帰るんだ。 研究の対象に……」
「キモいんだよ魔物オタクが!」
僕のすぐ隣で、酒の瓶が割れた。
サーンが空の瓶を投げてきたのだ。
どうしてこんな仕打ちをするんだろう?
僕はこんなにも……こんなにもサーンの事が好きなのに。
フータがサーンの肩に手を置いて、彼女の頬にキスをした。 もう限界だった。
「フータぁ! 僕と決闘しろぉ!!」
考えるより先に、言葉が喉から溢れ出していた。
「あぁ? 何言ってんだザコが」
「決闘だ! 僕と闘え! 僕が勝ったら……サーンは僕のパーティメンバーとして連れて行く! 」
全員が無表情で僕を見つめていた。
そして、顔を伏せて肩を震わせていく。
「アハハハハハハ! もうやめてバカモコ! ヒィィ! 腹がよじれるわ!」
「殺しちゃってくださいよぉ〜フータさまぁ。 この身の程知らずのゴミクズぅ」
リンコ、カンナ。 黙れよ脳みその欠けたクソビッチ共。 お前らは後でゆっくり殺してやる。
「フータ様、ボコしてここに置いていったってバレないでしょ。ダークドラゴンに殺されたって言えばいいし」
なぁサーン。 そんな事言って、本当はフータが怖いだけなんだろう? 昔の事を思い出してくれよ。 幼い頃、毎日のように遊んでいた日々を。 僕の魔法に目を輝かせていた、あの頃の君に戻ってくれよ。 お風呂だって一緒に入った仲じゃないか。
「僕が怖いんだろう? フータ……! 君は自分より強い男をパーティから追放したいだけだ! そうじゃないっていうなら、僕と闘えよ!サーンや……お前のオモチャ達の前で! 」
「ハハハハハ! なーに言ってんだ、馬鹿馬鹿しい。 お前みたいなクソ雑魚サポート職と闘ってどうすんだよ。 そっちの隅っこで震えてるゴブリンと闘った方がまだ楽しいぜ」
フータはその場に座り込んで居眠りを始めた。酔っ払っているのだ。 顔を真っ赤にして、僕を嘲笑うかのように「へへ……」と顔を綻ばせた。取り巻きの豚女共がフータの頭を撫でている。
……ヘドが出る。 明日この迷宮を出たら、万全の状態のフータにもう一度決闘を申し込み、叩きのめしてやる。 僕は、心の中でそう誓った。こんな気持ちになったのは生まれて初めてだった。
「フータ様はダークドラゴンと戦って疲れてるんだからさぁ、めんどくさいこと言い出さないでよねぇ」
女僧侶のゴミ女が僕を見下ろしてそう言った。
「……ごめん、カッとなって」
「カッとなってぇ……じゃねぇよクソチビ! お前自分の立場わかってんの? お前はもう仲間じゃねーんだよ! 視界に入るな!」
盗賊のリンコが僕の肩を小突いてきた。
「……ごめん。 明日ここを出たら、もう視界に入らないから」
「私たち、ここを出たら王都に出るから。 そこで有能な魔導師捕まえて組むんだ。 ギルドで仕事こなして王様や騎士団の目に留まれば一生安泰だし。 邪魔しないでよね」
サーン、君は勘違いをしているんだよ。
「サーン……悪い事は言わない、君たちじゃ無理だ、やめておいた方がいい! 」
「はぁ?」
「こんな辺境のポンコツギルドなら君たちは英雄だ! ……でも……王都のギルドで仕事を貰うなら、僕の魔法がないと犬死にするだけだ! 」
「……はぁ? 」
「フータがいくら強くても、有能な魔導師はこのパーティには絶対に入らない。 何故なら……君たちが弱過ぎるからだ」
「……ふざけんなよザコ魔導師。 フータ様が寝てるからってイキってんじゃねぇよ」
「こっちと向こうじゃ任務ランクの基準が違うんだ! Cランク任務でも死人が出るんだぞ! フータが向こうのレベルを知ったら、君たちはすぐに捨てられる! 」
「臆病者野郎、それ以上喋ったら殺すよ」
「フータは自分で優秀なメンバーを集めるか、名のあるパーティに引き抜かれる。 王都に近づくほど綺麗な女だってたくさんいる。 君たちである必要は……フータにはないんだよ」
「ぺっ!」
誰かに唾をかけられた。
……ここまでされたら、もう何も言うことはない。 また、涙が溢れてくる。我慢しても堪え切れない。
僕はそれを誤魔化すように、瞼を閉じて横になった。