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作者: 猪鹿野 浩
掲載日:2008/08/23

雪ってきれいです

ふんわりふんわり舞いおります


たちまち辺りは銀世界

どこもかしこも雪化粧


大人達は野良にも出られず

早い雪解けを願うばかりです


でも子供達は雪が大好き

ソリ遊びや雪合戦で元気いっぱい

笑顔で一日中駆け回ります


小さな村の幼い姉弟

その二人のお話です


ある日、両親は町までお買い物

珍しいものがあふれる町は

子供達も大好きです

何度も家族で行きました


冬はお父さんだけ

子供達には雪の峠はつらすぎます

でも今日はお母さんも一緒です

お正月の御馳走を買うのです


お母さんは留守番のご褒美に

二人にお土産を約束しました


お留守番の子供達

雪遊びをしても心はぼんやり

明日が待ち遠しくてたまりません


ごー、ごー、ごー

戸を揺らして風が吹きます

昼から外は吹雪になりました

「お姉ちゃん、どうしよう」

「忘れたの?吹雪になったら町でお泊まりよ」

明日はきっと晴れるわ」

お姉ちゃんは弟を安心させました


ごー、ごー、ごー

夜が明けても吹雪は止みません

ますます激しくなりました


「お母さん達大丈夫かなあ」

泣きべそ顔で弟が聞きます

小さな胸を痛めます

「大丈夫よ、お父さんも一緒だから」


次の日も吹雪は止みません

朝から夜まで吹雪の一日

待てども両親は帰りませんでした


二人は並んでお祈りをしました

「お土産はいりません。早く会わせて下さい」

夜、お姉ちゃんも少し泣きました


三日目の朝

願いがやっと通じたようです

二日続いた吹雪がうそのよう

広がる青空、眩い日差し


「途中まで迎えに行こうよ」

「だめよ。お家で待つ約束でしょう」

「こんなにいいお天気だよ。大丈夫だよ」

弟は駆け出したくて、うずうず


「じゃあ・・・一つ峠までよ」

お姉ちゃんも会いたかったのです


降り積もった雪を踏みしめます

きゅっ、きゅっ、きゅっ

雪も踏まれて嬉しそうです

お日様も暖かさの贈り物


一つ峠までやって来ました

お地蔵さんが二人を迎えます

ここまでは何度も来ていました

時にはお団子のお供えも


峠から町への道がよく見えます

二人は首を長くして待ちました

町から戻る一本道

両親の姿が見えるはずです


でも・・・

いくら待っても戻りません


「二つ峠まで行ってみようよ」

弟はせがみました

お姉ちゃんは迷いました

二つ峠からはお家が見えません


「駄目よ。ここまでって約束したでしょ」

お姉ちゃんは怒った顔で言いました

「だって、だって」

背中を見せて泣き始めました

甘えん坊の弟でした

お姉ちゃんはもう叱れません


「じゃあ二つ峠までよ」

「うん、約束するよ」

「お姉ちゃんにセーター貸して。少し寒いの」

「いいよ、いいよ」


弟は嬉しそうに坂道を駆け下ります

「ころんで泣かないでね」

お姉ちゃんは、はらはらしました


お家に両親が帰って来ました

思わぬ吹雪に邪魔されました


「ただいま。帰ったわよ」

大きな声で呼ぶお母さん


でも・・・

子供達の返事はありません

どこかに隠れているのでしょうか?


「早く出てらっしゃい。お土産があるのよ」

でも・・・

どちらも姿を見せません


お母さんは心配になりました

隣の子供達に聞きました

「僕知っているよ。一つ峠に行ったよ」

お母さんは顔をくもらせました


「一つ峠へ行ったのよ」

「出迎えようとしたのだな」

「どうしましょう

いつもの道で戻ればよかった」

そうなのです

早く会いたくて近道したのです

その道は峠からでは見えません



「追いかけて下さい。とても心配だわ」

「大丈夫だ。こんなにいいお天気だから」

お父さんの声も少し震えていました


ごー、ごー、ごー

急に暗くなり、ひどい吹雪

冬の天気はすぐに変わります

本当に恐ろしいものなのです


ごー、ごー、ごー

暗くて冷たい吹雪の世界

じっと待つしかありません


お父さんは助けを呼びました

一人では冬将軍には勝てません


村中の人が集まって

 二人を探しに峠に向かいます

 目も開けられない吹雪の中を


ごー、ごー、ごー

吹雪は激しくなるばかりです

お母さんはみんなの無事を祈ります

 

とっても長い時間が過ぎました

お父さん達が帰って来ました

体中誰もが真っ白です


「あの子達はどこですか?」

お母さんは後ろに回ります

子供達がいるはずだから


「見つからない。朝になるのを待つしかない」

「そんな・・・

あの子達が凍えてしまいます。助けて下さい」

お母さんは泣き叫びました

みんな黙って、俯きました


ごー、ごー、ごー

夜になっても外は吹雪

村人達も一緒に祈ります

 

とうとう朝になりました。

心配で眠れなかったお母さん

一番鶏より早く飛び出しました


「神様、ありがとう」

目を見張りました

吹雪が止んでいいお天気です


「お父さん、吹雪が止んでいます」

大声で叫びました


村人達は峠に向かいました

お母さんも一緒です


子供達の足あとは消えていました

何度も名前を呼びました

でも・・・

子供達は元気な顔を見せません


一晩眠れなかったお母さん

疲れてとうとう倒れました

お地蔵さんのところです


・・・あっ、お地蔵さんだわ・・・

力を振り絞って起きました

降り積もった雪を落とし

「どうかあの子達を助けて下さい」

心からお願いしました


「あら、これは?」

お地蔵さんの手に赤い糸

お母さんはすぐに気がつきました

子供に編んだセーターの糸


「これを見て!あの子のものです」

「本当か!」

赤い糸を追うお父さん

村人達も続きます


糸はどんどん先へ

雪上の赤い道標

みんなの希望が大きくなります

見つかりそうな気がするのです

 

大きな穴がぽかっ

木の根っこです

「ここです、ここです、ここにいます」


お父さんが飛び込みます

お母さんはランプで照らします


いました、いました

抱き合って眠っています

すやすやと寝息を立てて・・・です


夢を見ていました

お約束のお土産のソリ

ひゅんひゅんと風を切っていい気持ち

勢いあまって

すってん、ころん、ごろん、ごろん

 

あわてて駆けよるお母さん

「大丈夫?起きて、起きて」

ここで夢から覚めました

 

お母さんがいました

横にはお父さん

それに村の人達までも

男の子は目をぱちくりしました


「二人とも無事だ。みなさんありがとう」

みんな歓声を上げて大喜び

 

お母さんは、お姉ちゃんに聞きました

「どうしてお地蔵さんの手に?」

ちょっと考えるお姉ちゃん


「道に迷いそうな気がしたの

でもあの子がせがむから

お地蔵さんがお母さんに見えたわ

赤い糸はお母さんの手

つないでいればこわくないもの」

お母さんは、お姉ちゃんを抱きしめました


「あっ、ずるいよ。お姉ちゃん

それに僕のセーターどうするの?

糸だけになったよ」

男の子が口をとがらせます

「大丈夫よ。新しいのを編んであげるわ」

弟もお母さんに飛びつきました


子供達のぬくもりに包まれ

お母さんは最高に幸せ

何度も何度も抱きしめます


夜は村中でお祝いしました

お地蔵さんにも幸せな声が届きます

思わずにっこりされました

 

もうすぐ除夜の鐘が鳴ります

新しい年はもうすぐです

  

 



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