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第五十六話 グリズリーを余さず使う

ちょっと長めです。

倉庫の前には凄い数の村人が集まっていた。


というより仕事がない人は当然として仕事を放り投げてきた人もかなりの数いるようだ。


「そりゃー自分で作れば金貨5枚も安くなるんだろう?仕事なんぞしてられるかよ。」


確かに日給金貨5枚なら誰でも来るか。俺も少し前なら飛びついてる。


「シュウさん。」


「ん?どうした?レオン。」


「ゼハードさんが今日は家の作業を中止して良いか?と聞いてこいと。」


ああ、なるほどな。職人さん達も働いてる場合じゃないと。


「分かった。レオンも今日はこっちを手伝ってくれ。」


「はい!皆さんに伝えてきますね。」


レオンはゼハードさん達のところへと戻っていった。


「スーリャ、俺は倉庫にグリズリーとキラーコブラを出してくるから村の人たちを頼む。」


「頼むってどうすれば良いのさ?」


「手順を教えたり一気に入れないようにだな。全員入れたら収拾がつかなくなる。」


「分かったよ。」


「アンネは簡単に食べられる昼食を頼む。昼食の準備が終わったら店を頼む。」


「分かりました。」


俺は倉庫にグリズリーの死体を出して気付いた。最初は作業場に出しておいても良いのではと。


そういう訳で俺は作業場にもグリズリーを出しておいた。


「シュウ~!入っても良いかい?」


「良いぞ~!」


スーリャが最初の村人たちを作業場へと連れてきた。


「うわっ!」


「こりゃ凄い・・・。」


「改めて見るとグリズリーって大きいな。」


『スーリャ、皮を剥ぐのが上手い人と縫うのが上手い人をチェックしてくれ。』


『構わないけどなんでさ?』


『人手が常に足りない感じだからな。雇えるなら雇いたい。』


『なるほどね・・・分かったよ。』


『それじゃスーリャ頼んだぞ。』


『分かったよ。』


「僕はどうすれば良いでしょうか?」


「レオン?」


「ゼハードさん達も外で待っているのでやる事がないんです。」


「なるほどな・・・。ならスーリャを手伝って皮のはぎ方や縫い方を教えて回ってくれ。」


「はい!」


「ちょっと。シュウどこにいくんだい!?」


「グリズリーが足らないんだ。狩りに行かないと。」


「すぐに戻れるのかい?」


「昼頃までかかるかもしれない。」


「完成した絨毯は村の人に売って良いのかい?」


「あ~・・・午前中はアンネには食事を頼んだしな。すまんがスーリャとレオンでやってくれるか?」


「分かったけど早く帰ってきておくれよ?」「はい!」


「分かった。なるべく急ぐ。」


スーリャとレオンに製作と販売を任せた俺はすぐにグリズリーの補充に向かった。


あんなに集まるとは思わなかった・・・。村人は結構金持ちなんだな・・・。


ともかく明らかに数が足らないのだ。急いで追加を狩らねばならない。


流石に全員が1枚買うことはないだろうが、追加で後20体は欲しいかところか。


俺はスキルを駆使して可能な限りグリズリーを乱獲して回った。


索敵しては狩り、狩り尽くしては他の生息地へワープしまた乱獲していく。


何とか目的を達成した頃には既に昼を終えつつあった。


俺は倉庫にワープして戻り、グリズリーを置いて作業場へと入る。


「シュウ!遅いじゃないか。」


「すまない。20体ほど足しておいたが足りそうか?」


「大丈夫じゃないかねぇ?午前中は思ったより進まなかったし、狩ってるようだしね。」


「そうか。なら午後からは予定通りで良いかな。皆もう一頑張り頼む。」


「「「はい!」」」


「アンネはどうする?店に行ってもらいたいが少し遅れたし今日はこっちでも構わないぞ。」


「お店に行きます!今は少しでも開けておかないといけません!」


「分かった。すぐに店に送ろう。」


俺はアンネをワープで店に送ってすぐに作業場へと戻った。


「スーリャ、俺は何をすれば良い?」


「シュウは皮剥ぎが終わったらグリズリーを倉庫から作業場へ運んで貰えるかい?」


「分かった!」


「それと村の連中がグリズリーの肉を食べてみたいとか言って集めてるんだよ。それも頼めるかい?」


は?グリズリーを食べる?そんな無茶苦茶なことして大丈夫か・・・?


「まあ一応集めておくが・・・食べれるのか?」


「それを確かめてみたいんだろ?まあやばそうなら止めれば良いさ。」


まあ捨ててた物だし構わないけども死人とか勘弁してくれよな。


こうして午後からの俺はグリズリーの肉の掃除と倉庫からの運び出しに追われることになった。


そしてその合間に絨毯の引渡しだ。忙しすぎる・・・。


おかしいぞ・・・。楽をする為に俺は村の人たちを使っているはずなのに何でこんなに忙しいんだ?


儲けも絨毯1枚につき金貨5枚での販売だからそこまで儲かってないし・・・。


俺は現状に疑問を抱きながらも黙々と肉の処理と倉庫からグリズリーの運び出しを行った。


まあ肉の処理は手が空いている村の人が手伝ってくれるのだが倉庫の中は関係者以外立ち入り禁止だからな。入れても問題はないんだけど気分の問題って奴だな。いずれは凄い物を保管したりしたいし。


「シュウ。ちょっと良いかい?」


「なんだ?」


「手提げ袋を作りたいって人にそっちをやらせても良いかね?それでいくらで売れば良い?」


これ以上忙しくするつもりなのか・・・?いや、だがキラーコブラはかなりの数余っているしな・・・。


「金貨3枚かな。キラーコブラも倉庫に出しておく。」


「分かった。レオンにもそう伝えておくよ。」


俺は倉庫にキラーコブラを出してグリズリーの運びだしに戻った。


結局、日が落ちるまでこの作業を繰り返すことになった。


倉庫の中からグリズリーとキラーコブラの姿はほぼ無くなってしまった。


「今日はここまでにしよう。」


「分かったよ。」


「はい。」


「アンネを迎えに行ってくる。」


俺は店にワープした。


「すまない。遅くなった。」


「いえ。大丈夫ですよ。」


「今日はどうだった?」


「絨毯と手提げ袋が1つずつ売れました。」


やはり午後からの開店なのが良くなかったか・・・?


「そうか、お疲れ様。店を閉めて帰ろう。」


「ふふ。もうとっくに閉めてますよ。」


そりゃそうか。恥ずかしいな。


「忘れ物はないな?帰るぞ。」


「はい。」


俺は倉庫へワープで戻った。


「あ。シュウさん、アンネさん。おかえりなさい。」


「「ただいま。」」


「そうだ。シュウ、午前中の売り上げ渡しておくよ。」


「ああ。」


今日の売上は店と合わせて金貨300枚くらいかな。凄まじい忙しさだったからな・・・。


「それでシュウ。グリズリーの肉だけどどうするんだい?」


どうする?って言われてもな・・・俺は食う必要ないと思うのだが。


「村の人たちはどうしようって?」


「焼いて食べるつもりみたいだね。」


グリズリーに毒性は無いし、焼いて食べれば滅多なことにはならんだろう。


「分かった。俺も行こう。」


俺たちはグリズリーの焼肉会場へと向かった。


「シュウ!」「シュウさん。」「シュウ。」


会場へ着くと今にも焼き始めそうなタイミングだった。


「良いところに来たな。今から始めるところだぞ。」


と、ザックおっちゃんが教えてくれた。


「シュウが取ってきたお肉だしね。」


とファイナさん。


「では始めるぞい!」


村長の音頭でグリズリーの焼肉が始まった。


「もう良いかな?」「もう少し焼いたほうが良いんじゃないか?」


「良し!もういいじゃろう。シュウよ。合図をしてくれんか。」


ここで俺に振るの!?そういうの苦手なんだけどなあ・・・。


「では!いただきます!」


「「「「「「「「いただきます!」」」」」」」」


こうして俺たちもグリズリーの焼肉を食べてみたのだが・・・。


「硬い!」「かたっ。」「噛み切れません・・・。」「これは食べれないね。」


とてつもなく硬かった。外国産の肉なんて目じゃない。それこそ金属かと思うほどだ。


「それに臭味も強い。」「そうですね。」「臭いです・・・。」「不味いね。」


村人たちもあまりの硬さと臭さに悲鳴を上げている。


「これじゃ食べられねーな。」「残念じゃのう・・・。」


確か熊肉も焼くと硬くなりやすいんだっけな。魔物のグリズリーならそれはもっとということか。


熊肉は煮込み料理が基本だったような気がする。


「アンネ。大鍋と野菜を用意してもらっておいてくれるか?」


「構いませんけどどうするんですか?」


「俺もグリズリー肉の食べ方に挑戦しようと思ってね。」


「レオンとスーリャはグリズリーの肉を叩いておいてくれるか?」


「叩くってどういうことだい?」


こっちでは肉を叩いたりしないのか?


「言葉通りだよ。グリズリーの肉を綺麗なハンマーか何かで叩いておいてくれ。」


「分かったよ。」「はい!」


「ああ、でも全力でやって叩き潰さない程度にな。」


今日はこれ以上働くつもりはなかったけど村の皆には稼がせてもらったしこのくらいはしておかないとな。


俺は王都へワープして酒屋へと向かった。


もうほとんどの店が閉まっているが酒屋はまだやっているようだ。


俺は安いワインを50本ほど買って店を出た。樽で買った方が良かったと思ったのは店を出てからだった。


俺はワープで会場へ戻った。


「アンネ。鍋は用意できたか?」


「はい。宴会用の大鍋を借りてきました。」


俺は鍋に買ってきたワインを注ぎ込んで煮込み始める。


「スーリャ、レオン。叩いた肉を鍋に入れてくれ。」


「はい。」「入れるよ。」


手順があってるか分からないが熊鍋なんて食べた事ないから適当だ。


「アンネ、野菜を鍋に入れてくれ。」


「はい。」


本当は3時間ほど煮込みたいところだが、先ほどから村の皆さんからの見えないプレッシャーが凄い。


圧力鍋を開発した人マジ天才。俺が圧力をかけても良いんだが絶対に爆発させるだろうしな・・・。


結局俺はプレッシャーに負けて1時間ほど煮込んだグリズリーの肉を皆に振舞った。


「まだ硬いな・・・。」


「でも食べられますよ。臭味も大分マシになってます。」


「お肉美味しいです!」


「まあ食べられない事もないねえ。」


まあそんなもんだよな。村の皆さんも微妙な反応をしている。煮込みや下準備が足らなかったな。


「シュウ。何から何まで有難うな。」


「嫌だな、ザックさん。どうしたんですか?改まっちゃって。」


「何。お前が来てから本当に村が活気付いたからな。」


「全くじゃ。感謝しておるぞ。」


「村長まで・・・。」


「それに村の皆は実はそこそこ蓄えがあっても使い道がなくての。

 こんなに凄い物をワシだけじゃなく皆に売ってくれてありがとうの。」


これ・・・ワシだけだと思ったら皆にまで売りやがってコノヤロウ!的な意味なのかな?考えすぎだよな?

気のせいだということにしておこう・・・。


「いえ。お役に立てているなら良かったです。鍋はこのままにしておきます。このままずっと煮込めば朝には美味しくなってるかもしれませんので。構いませんよね?」


「それは構わんが村の者が食べきってしまうかもしれんぞ。」


「それならそれで構いませんよ。一応ワインも何本か置いておきますね。」


「そんな物置いてったら皆飲まれちまうぞ?」


「それならそれで構いませんよ。では今日はもう寝ますのでまた明日。」


「おう。」「うむ。」


俺達は宴会場を出て家へと帰った。約1名帰ろうとしなくて大変だったが。


「ウチも飲みたいいいいいいい。」


「スーリャ。あなたはシュウさんの奴隷としての自覚がですね・・・。」


「分かった分かった。まだあるから出すよ。」


「さすがシュウ!」


「シュウさんが甘やかすからですね・・・。」


「まあ今日は皆頑張ったからな。ゆっくり休んでくれ。」


さっきからレオンが大人しいって?レオンならずっとグリズリーの肉をモグモグしてるよ。


「モグモグ。お肉美味しいです。モグモグ。」


「まあ今日は寝たくなったら順次寝るという事で。」


「はい。」「はい。モグモグ。」「良いねぇ。」


「俺はもう寝るからな。」


「はい。おやすみなさい。」「おやすみなさい。モグモグ。」「おやすみ。」


今日は本当に忙しかったな・・・俺は疲れていたのかすぐに眠りに落ちていった。




「シュウさん疲れてますね。」


「街へ行ったり王都へ行ったり狩りをしたりとあちこち動き回ってますしね。モグモグ。」


「確かに負担が大きそうだねぇ。」


「そうですね・・・。でもシュウさんのおかげでお店もやれてますし、もっと力になりたいんです。」


「それを言ったらウチだってシュウのおかげで面白い物も凄い物も作れてるしねぇ・・・。」


「僕も美味しい物と大工の仕事までさせていただいてます!モグモグ。」


「レオンは本当に良く食べるね・・・。」


「お肉ってあんまり食べたこと無かったんですが、本当に美味しいです!モグモグ。」


「でもそこまで心配しなくても良いと思うよ。」


「なんでですか?」


「今日シュウに言われて皮を剥ぐのと裁縫が上手い人を探してたのさ。人を雇うつもりのようだね。」


「それなら少しは楽になるのでしょうか?」


「そうだと思うよ。それに今日みたいな日はそうそう無いだろうさ。」


「そうですね。では私ももう寝ますね。」


「ならウチもそろそろ寝ようかね。」


「僕も寝ます!御馳走様でした。」


「「「おやすみなさい。」」」


俺が寝ている間に3人で会議していたようだ。俺も参加したかった・・・。

いつも読んでくださり有難うございます。

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