第四十話 千客万来再び
いつも読んでくださり有難うございます。
ちょっと長くなってしまいました。
「本当に王都に居るよ・・・。」
スーリャはきょろきょろと周りを確認してそう呟いていた。
「こっちだよ!早く行くよ!」
かと思っていたらそう言って駆け出す勢いで歩き出した。
「おい。待ってくれ。」
俺は慌ててついていった。まるで子供だな。まあ見た目は完全に子供なんだが。
「ここだよ!」
スーリャが止まったのは俺も知っている店の前だった。
「ここの店主が話が分かる奴でさ。良く来てたんだ。」
「ああ、アンネのおじさんだよ。」
そう。ここはマイクさんの店だ。
「そうなのかい?世の中狭いもんだね~。」
店内は相変わらず雑然としていた。
「おっちゃ~ん!居る~?」
「お?スーリャじゃねーか!随分久しぶりじゃねーか。何してたんだ?」
「いや~それが気付いたら借金まみれになってたらしくてさ~。今は奴隷やってるよ。」
「奴隷だぁ!?お前はアンネの・・・。」
ギクッ・・・
「説明して貰えるんだろうな・・・?」
俺は必死に説明した。アンネの時と違って説明する事が少なかったが凄く長く感じた。
「そうか・・・。スーリャ何かあったらいつでも俺に言うんだぞ。」
「分かったよ。ありがと!」
なんかこんな感じの事前にもあったな・・・。
「それで今日はどうしたんだ?」
「工具を買いに来たんだよ。有るよね?」
「あるぞ。何が欲しいんだ?」
「ノミに小刀に・・・ハンマー!」
おい!?勝手に増やすな!?
「分かった。いくつか持ってきてやる。」
そう言ってマイクさんは店の奥へと戻っていった。
「ハンマーはいるのか?」
「やっぱり物は叩いて形を整えないとね!」
「そ、そうか・・・。」
俺には分からないがそういう物らしい。
そんなやり取りをしているとマイクさんが工具を持って戻ってきた。って多いな!
「とりあえずめぼしいのを持ってきたぞ。」
それぞれ5個は持ってきただろうか。既にスーリャは工具の確認をしている。
「う~ん。これとこれとこれと・・・これはいいや。」
おいおい・・・予算を伝えてないぞ。あんまり高いのはやめてくれよ。
「こんなもんかな!」
スーリャが選んだのはノミ2本と小刀3本にハンマーが2つだった。
「ん~と・・・こいつとこいつで・・・それでこいつとこいつだから・・・全部で金貨2枚で良いぞ。」
高い!1つ平均銀貨3枚もするのか。そう思っていたのだが。
「サンキューおっちゃん。」
「なに、良いってことよ。」
これでも割安って事なのか・・・工具って高いんだな。
俺はマイクさんに金貨2枚支払った。
「まいどあり。今度はアンネも連れて来いよ。」
「はい。ありがとうございました。」
俺たちはマイクさんの店を出て家へとワープした。
「それであの金属はあるんだよね?針を早速作ろうじゃないか!」
「いや、それだと工具の消耗が激しすぎるから先にノミか小刀を作ろうと思う。」
いくら売れれば金貨20枚の物の為とは言え、そんなにバカスカ金貨2枚を壊されたらかなわない。
「え?でも小刀は作れないよ・・・。工具がそれこそこの10倍あっても難しいんじゃないかい?」
「ああ、そこに関しては多分問題無いと思う。俺に考えがあるんだ。」
「へ~。一体どうするっていうんだい?」
俺はオノオレカンバを取り出してスーリャに渡した。
「こいつを小刀の形にくり抜いてくれ。」
「この木を?まあ良いけど。」
「ついでにハンマーとノミの形にも頼む。」
俺は追加でオノオレカンバをスーリャに渡した。
「分かったよ。」
「俺はちょっと用事があるから出かけるけどすぐに戻るから。」
「どこか行くのかい?」
「ああ、木こりの仕事を終わらせにな。」
「そうかい。いってらっしゃい。」
「ああ、いってきます。」
俺は倉庫へと歩いて向かった。
「こんにちは~。」
「おう。今日はちょっと遅いな。」
「色々忙しくて。はい、今日の分です。」
「おう。ほらよ。」
「それとこれ、お土産です。」
俺は仕事を終え、おっちゃんに酒瓶を渡した。
「おお~酒か!っておい。これ結構良い物じゃねえか?」
「まあ、そこそこの値段しますね。でも最近稼いでるので大丈夫ですよ。」
「そうか?しかしお前、そんなに稼いでるなら木こりをやめたりしないのか?」
言われてみればその通りだ・・・だけど木こりを辞めるつもりはない。
「まあいずれは辞めるかもしれませんが当分はやらせてもらいますよ。」
「そうか。まあじゃあ明日もよろしく頼むわ。」
「はい。また明日。」
俺は倉庫を出て家へと戻った。
「お待たせ。調子はどうだ?」
「今最後のハンマーをやっているとこさ。」
「随分早いな。」
「そうかい?まあこんなもんじゃないかい?」
俺は既に出来上がった木型を確認してみたが、2つともとても綺麗に出来ている。
流石はドワーフの職人といったところか。
「出来たよ!」
最後の1つも出来上がったようだ。見事な出来栄えだな。
「何が出来たの?」
そこへ声がかかった。隣の編み物を教えてくれた家のファイナさんだ。
「ファイナさん。どうしたんですか?」
「ちょっとこっちの方を通ってみたらカンカン音がするから来てみたのよ。」
「そうですか。実はちょっと木を削って物を作ってたんですよ。」
「そうなのね~。ところでその子は?もしかしてまた・・・?」
「あ~・・・ええ。そうです。スーリャって言います。」
「やっぱりそうなのね!スーリャちゃんよろしく!」
「ちゃんって・・・ウチは一応21歳だぞ。」
「え??」」
「え?ってなんだい!ウチはどこからどう見ても大人の女だろ!」
「そ・・・そうだな。」
「そ・・・そうなのね。」
「なんだい!まったく・・・。」
どこからどう見ても少女だ。この子が成人しているなんてとても信じられないだろう。
「それでファイナさん。何か用事でもあったんじゃないですか?」
「いいえ。本当にちょっと音がしたから来てみただけなのよ。でも今用事が出来たわね。」
「そうですか。」
「ええ。それじゃあまた後でね。」
「はい。また後で・・・・?」
そう言ってファイナさんは去っていった。
俺は少々呆気に取られていたがすぐに意味に気付き行動を開始した、
「スーリャ。これから村の人たちがお前とレオンを見に押し寄せてくる。今日の作業はここまでにして
家で村の人たちを迎える準備をする。」
「え?どういうことだい?」
「この村には若い娘なんてほぼ居ないんだ。そこにスーリャが来たから皆見に来るって訳だ。」
「そういう事かい・・・でもそんなに慌てる必要はあるのかい?」
「今家の中ではアンネとレオンがグリズリーの毛皮を広げているし家具も片付けたままだからな。
急いで片付けて用意しないと。それに村の人たちにはまだ店を始めたこと言ってないしな。」
「グリズリーの毛皮!ウチもみたい!」
「いずれ嫌になるほど見ることになるよ。それより今は早く家を片付けないと。」
俺はその場で工具と木型をアイテムボックスに収納して家の中へ入った。
「おかえりなさい。」「おかえりなさい!」
「ああ。ただいま。」
アンネが絨毯を縫っていて、レオンは隅っこで布を縫っていた。
「今そこでファイナさんが来てスーリャを見て帰った。これから大量の来客がある。」
「え・・・。」「え?」「これがグリズリーの絨毯!」
アンネはあの日を思い出したのだろう。レオンは何のことだか分かっていないようだ。
「時間が遅いからかなり過密になるかもしれない。急いで家を片付けるぞ。」
「はい!」「はい。」「ウチもこれ作りたい!」
約1名全く話を聞いていないがまずは絨毯を完成させ、アイテムボックスに収納した。
「ああ!ウチの絨毯!」
邪魔だけしといてウチのとは図々しい・・・。
そして家具をアイテムボックスから取り出して並べていく。
「これはここで良いですか?」「そうよ。これもお願いね。」「はい!」 「ウチの絨毯・・・。」
作業自体はすぐ終わる程度の物だがレオンが張り切っていたので本当にすぐ終わった。約1名は何もしていなかったが・・・。
片付け終わり一息ついているところに、最初の来客があった。
「お邪魔するぞい。」 「こんにちは。」
今回のトップバッターは村長だ。今日は村長婦人も一緒だ。
「そちらがスーリャさんかの?おや・・・その子は・・・?」
「レオンハルトです!ご主人様の奴隷です!長いですのでレオンと呼んで下さい!」
「あらまあ。元気な子ね。」
「うむ。男の子は元気なのが一番じゃ。」
「ありがとうございます!」
スーリャを見に来たはずなのにレオンの方が注目を集めている。
その後もレオンが元気良く応対して村長夫妻は満足そうに帰っていった。
その後はスーリャとレオンにひっきりなしに客が来た。
「この村に長く居てくれ。」「そうだねぇ・・・ご主人次第じゃないかい?」
「元気ねぇ。これ食べる?」「ありがとうございます!モグモグ。」
2人はどんどん現れる村人に挨拶をしていく。片方は餌付けされている感じだが。
そして日が完全に落ちると同時に来客も終わりを見せた。
「お疲れ様。夕食の準備をしようと思うんだが、レオンは食べられるか?」
「え?食べられますよ?」
若いって凄いな・・・。
「じゃあ今日は俺とアンネで作ろうか。」
「はい。」
「ちょっと待った!」
「ん?」
「ウチも作る。」
「スーリャは料理が得意なのか?」
「いや、だけどウチも作る。人が作ってるのを黙って見てるなんて無理だ。」
そういう理由か・・・まあやらせてみるか。
「分かった。それじゃあ2人とも宜しく頼むよ。」
「はい。」「任せとけ!」
そうして2人は料理を始めた。
「そういえばレオン。レオンは何歳なんだ?」
「13歳です。」
「そんなに若いのか!俺は23歳だから10歳も離れていたのか・・・。」
13歳なのに随分しっかりしているな。
「へ~。ご主人は23歳なのか。ウチが21歳でアンネはいくつなんだい?」
「「21歳!?」」
あ~そうなるよなあ・・・。
「なんだい!その反応は?ウチはどこからどう見ても大人の女だろ!?」
「「は、はい・・・。」」
「それでアンネはいくつなんだ?」
俺はまたこの流れになるのを避けるため話を元に戻した。
「18歳です。皆さん意外と離れていたのですね。」
「そうだな。これからは皆で頑張っていこう。」
「はい!」「はい。「そうだね。」
驚きの年齢確認が終わって夕食が出てきた。夕食?も出てきた。
「え~っと・・・?」 「これは・・・。」「やはり止めるべきでした・・・。」
「なんだい?ウチが作った物が食べられないっていうのかい!?」
スーリャが作ったのはもはや物体Xと呼ぶべき代物だ。これは本当に食べ物なのか?
「スーリャ。味見はしたのか?」
「してないけど大丈夫!ウチが作った物に間違いはないよ!」
絶対駄目なパターンじゃないか・・・。レオンもアンネも食べられそうにはない・・・。
仕方ない、俺が犠牲になるしかない。
最悪でも俺には高い毒耐性がある。間違っても死んだりはしないだろう。
「いただきます。」
俺は覚悟を決めて物体Xに挑んだ。
あれ?味はそこまで悪くないな。と思った瞬間に凄まじい刺激が舌と胃におとずれた。
痛い!痛いのだ!久しく痛みなんて感じることがなくなっただけに新鮮だがやばい。
「なんだこれは!?何を入れた!?」
「え~と・・・そこにあった野菜に魚に・・・オイルに果物に・・・。」
「待て。途中で変なのがあったぞなんだオイルって?」
「オイルを入れたほうが混ざりが良いだろ?後は何を入れたっけなあ~。」
頭まで痛くなってきた・・・。
「分かった・・・。もう良い。スーリャは今後料理は禁止な。」
「な!?それはちょっと酷いんじゃないかい!?」
「酷いかどうかは味見してみれば分かる。・・・と言いたいところだが味見も禁止だ。多分死ぬぞ。」
「え!」「え・・・。」「そんなになのかい・・・。」
「とりあえず今日はアンネの作った物を食べてどうしても料理したい時はアンネに習って許可を取ってからにしろ。」
「分かったよ・・・。」
「え?ちょっとシュウさん。私にそんな大役押し付けられても・・・。」
「頼んだぞアンネ。」
「はい・・・。」
アンネには悪いが俺はスーリャに料理という概念を教えられる気がしない。
「この料理凄い美味しいですね!」
重い空気を破ったのはレオンだった。凄い食い意地・・・いや食欲だな。
「レオンは良く食べるな。」
「す・・・すみません。」
「いや怒っているわけじゃない。」
「家でも奴隷商のところでもあんまり食べられなかったので・・・。」
「そうか。まあでかくなる為にも働く為にも食いすぎない程度に良く食え。」
「ありがとうございます!」
レオンのおかげでこの後は楽しい夕食の時間となった。
そして寝る時間となったのだが。
「さて・・・どう寝たものかな。」
「普段はどう寝てたんだい?」
「普段は私がベッドを使わせていただいてシュウさんは寝袋で寝てますね。」
「う~ん・・・仕方ない。アンネとスーリャがベッドで俺とレオンは絨毯の上に寝よう。」
テーブルをアイテムボックスにしまい、絨毯を敷いて毛布をかぶって寝る雑魚寝スタイルだ。
「そっちの方が楽しいそうじゃないかい?」
「そうか?」
「ふかふかしてて温かくて気持ち良いですね。」
「やっぱり!ウチも絨毯で寝る!」
そう言ってスーリャが絨毯に転がってきた。
「スーリャ!」
「なんだい?別に良いだろう?」
「それはそうかもしれませんが・・・。シュウさん!」
「ん~・・・まあスーリャが良いなら良いんじゃないか?」
内心はドキドキしているがまあ本人が良いなら良いだろう。
「じゃあ私も絨毯で寝ます!」
「ええ!?」
アンネまでそんな事を言い出すとは思わなかった。
「なんですか!私だけ仲間外れにするつもりですか?」
「いや・・・アンネが良いなら構わないが・・・。」
「じゃあベッドをしまって下さい。」
そう言ってアンネも絨毯に寝転がった。
俺はベッドをしまい毛布を4人分出した。
「これは良いね!ベッドより寝心地が良い。」
「本当ですね。やはり素晴らしい絨毯です。」
「これを作るのか・・・大変な仕事ですね。」
3人とも絨毯の寝心地に満足はしているようだ。そういう用途で作った物ではないんだがな。
「ほら3人とも。もう寝るぞ。おやすみ。」
「おやすみなさい。」「おやすみなさい。」「おやすみ~。」
だが俺は隣で寝ているアンネとスーリャが気になって中々寝付けなかった。
無理やり目を閉じているとスーリャがこちらに寄ってきた。
「ウチが気になって眠れない?ウチはシュウの奴隷なんだしそういう事もしたいなら良いんだよ?」
なんだと・・・!いやいや!隣にはアンネとレオンが寝てるんだ。これは罠だ。釣られるな!
「馬鹿な事を言ってないで早く寝ろ。明日も早いんだからな。」
「そう?気が変わったら言いなよ。」
そう言ってスーリャは眠りについた。
全くとんでもない奴だ。ってもう21歳だからそういうのも有りなのか・・・?
長い1日だった・・・。それにしても最後の最後にとんでもない爆弾放り込んでくれやがって・・・。
俺はスーリャの事が気になり続け、眠れたのはそれから2時間後のことだった。




