第三十七話 奴隷商店
「買う奴隷は物作りが得意な奴隷だ。大工とか鍛冶とかが出来るのが望ましい。」
「そうですね。」
「予算は金貨350枚。だが出来るだけ安く欲しい。アンネが頼りだ頼むぞ。」
「任せてください!期待に応えてみせます!」
「じゃあ行くぞ。」
俺たちは奴隷商の店へと入っていった。
「兄ちゃん待ちな。ここは会員制の店だ。悪いが他を当たんな。」
と思ったらいきなり追い出されそうになった。俺は紹介状を取り出し店員に渡した。
「男爵様のご紹介か・・・。あの人の紹介なら通って良いぜ。」
無事に俺たちは店内へと入れた。やはり男爵はお得意様なのだろうか。
「男爵様のご紹介と聞いてまいりました。私この店の店長をしておりますアイリーンと申します。」
凄いの来た。美人な上に胸もボンっと出ていて服も際どい。色気の塊のような美女だ。
俺はしばし固まっていたが、アンネにじろっと睨まれて慌てて挨拶を返した。
「これはご丁寧に。石川周です。」
「石川様ですね。本日はどのような奴隷をお探しでしょう?」
「手先が器用で物を作るのが得意な奴隷が良いな。」
「物を作るのが得意な奴隷ですか・・・。少々お待ち下さい。確認してまいります。」
そう言ってアイリーンは奥へと戻っていった。それと同時に・・・
「シュウさんはああいう女性が好みなのですか?」
アンネが低い声でそんな事を聞いてきた。
「ああ凄い美人さんだったな。あれを嫌いだと言う男は居ないだろう。」
「そうですか。ならああいう奴隷を買ったら良いんじゃないですか?」
何だ・・・?まさか嫉妬してくれているのか?嬉しいけどアンネが頼りのこの状況でそれは困るぞ。
「買うのは物作りが得意な奴隷だ。アンネが嫌なら男でも構わんぞ。」
「そうですか・・・?」
「ああ!」
すると若干アンネの不機嫌オーラが和らいだ。
だけど男は俺が嫌だな・・・我慢するしかないか。
そんなやりとりをしているうちにアイリーンが戻ってきた。
「お待たせしました。何名かおりましたので順にご紹介いたします。」
そう言ってアイリーンは奴隷の紹介を始めた。
「まずこれは元大工の副棟梁をしていた者です。ギャンブルにハマりこの店におります。
値段は金貨250枚となっております。ご希望に沿えるのではないでしょうか?」
そう言って若い奴隷の男を紹介された。ギャンブルで奴隷落ちかー・・・
俺は勝てる勝負しかしないから大丈夫だな。
俺がそんな根拠のない自信を持っていると次の奴隷が紹介される。
「こちらは大工の見習いをしていた者です。妹が病気がちで家の借金が重なり奴隷となりました。
値段は金貨150枚となっております。」
それは随分と可哀相だな。これからという時に家の借金で妹の為に奴隷落ちとは。
値段もお手頃だし自身に非もない奴隷だ。悪くはないな。
それから数人は微妙な奴隷だった。日曜大工をした事がある程度の奴隷や家で壊れた食器類を補修した事がある程度の者。
そんな奴隷が続いていよいよ最後の奴隷が出てきた。
「こちらの奴隷はその・・・あまりお勧めは出来ません。」
「そうなのか?」
「はい。少々・・・いえ、大分変わっておりまして。」
「ほう。だが一応見せてもらおうかな。」
「かしこまりました。こちらはドワーフの職人をしておりました。ですが・・・商品を作らずに自分の作りたい物を優先して作る為、奴隷となりました。値段は金貨250となっております。」
なるほど。そりゃ奴隷にもなるな。俺は納得した。
「個別に面談も出来ますがなさいますか?」
「そうだな・・・させてもらおうかな。」
こうして個人面談が始まった。
「旦那。俺は使えますぜ~。これでも副棟梁してましたからね。」
「そうか。ギャンブルで身を持ち崩したと聞いたがその辺りはどうなんだ?」
「やだな~。運が悪かっただけですって、あんな事もう2度とありませんって。」
こいつはまたやるな・・・こいつは使えそうだがやめておこう。
「僕は自分が不幸なんて思ってません。妹の病気が治ったわけではありませんが、それでも僕も妹も生きています。」
何て良い奴なんだ・・・この世界の住人の模範と言えよう。
「そうか。なにか奴隷になるにあたって希望は無いのか?」
「特にはありませんが強いて言うならまた大工仕事や物を直す仕事をしたいです。」
こいつは買いだな。なんていうか力になれるならなってやりたい。
その後は特に発見もない面談が続いた。そして最後の1人となった。
「ウチは物作る意外何も出来ないしやんねーぞ。」
開口一番これである。問題児なのは間違いなさそうだ・・・。
「つまんねーもんも作らねえからな。それでも良いんだったら買っても良いけど後で文句言うなよ。」
働いてくれないと買う意味がないな・・・これは流石に買えないか。まあ一応聞くべきは聞いておくか。
「それでどうして奴隷になったりしたんだ?」
「やっぱそこ聞く?聞いちゃう感じ?」
「まあ一応教えてもらえるかな?」
「だよなぁ~。実はさ~新しい金属を手に入れたからそれで武器を作ろうとしたんだよ。」
「ほう。凄い話じゃないか。」
「だろ~?だけどその金属やたら硬くてさ~・・・全然加工出来ね~の。それで色々試したんだけど
ドンドン工具がぶっ壊れちゃってさ~・・・気が付いたら奴隷になってた。」
「なんか間が随分飛んだような気がするが・・・要するに金属が硬すぎたせいで工具が壊れて仕事が出来なくなって奴隷になったと?」
「いや~新しいのツケでまとめて買ってたから借金になってたみたいでさ~・・・アハハ。」
アハハじゃないな。こいつは駄目な子だ。やめておこう。
「あ~あ~あれをせめて針じゃなくて小剣に出来てればなあ~。」
ん・・・?どこがで聞いた話だな。もしかして・・・?
「おい。お前が作った針ってこれか?」
俺はアイテムボックスからミスリルの針を取り出して見せた。
「ああ!それそれ!何であんたが持ってんの!?」
「まあちょっとした縁で買ったんだ。」
「へ~そんなの買う人が居るなんて思わなかったよ。」
こいつがこの針を作ったのか・・・ポンコツかと思ったら天才職人じゃないか!
良し。大工見習いとコイツを買おう。
問題は150枚と250枚で合計金貨400枚で持ち合わせが足らない事だ。
「アンネ。」
「はい。」
「大工の見習いと最後のを買おうと思う。だが予算が足らない。」
「最後のを?そういう趣味だったんですか?」
アンネが少しおかしくなっている・・・。
「いやそうじゃなくて・・・あいつがこの針を作ったみたいなんだ。」
「そういう事でしたか・・・。分かりました。その2人をなるべく安く買えば良いんですね?」
「ああ。頼んだぞ。」
「お任せ下さい!」
さて、いくらまで値下げして貰えるか。最悪、全財産使ってしまっても良いのだが多少は残しておきたい。
アイリーンと値段の交渉をしているアンネに期待するとしよう。
待つこと10数分・・・ようやく値段交渉が終わったようだ。
「良い部下をお持ちのようで・・・羨ましいですわ。」
アイリーンが戻ってくるなりそう言った。心なしか2人とも疲れているように見える。
『手ごわい相手でした・・・ですが何とか金貨340枚にしてもらいました。』
アンネがそう結果を教えてくれた。
『良くやった。』
アイリーンの手前あまり大げさに褒めてやれないが予算の範囲内に収めたのは大した物だ。
俺は金貨340枚をアイリーンに支払った。
「確かに頂戴しました。こちらが奴隷の契約書になります。」
アイリーンから契約書を受け取った。
「またのご利用をお待ちしております。」
う~ん・・・もう奴隷を買ったりはしないんじゃないかなあ?あ~でもアイリーンには会いたいな。
なんて事を考えていたのがバレたのかアンネに腕をつねられてから外に引きずり出され店を出た。




