第三十五話 品切れ
あれから数日・・・
店の方は平常営業。絨毯と手提げ袋が1つずつ売れた。
その間に俺は絨毯を2つ手提げ袋を5つ完成させた。
在庫は絨毯7枚と手提げ袋10個。総売上は金貨150枚。
今日はいくつ売れるかな?そんな思いを胸に今日も店を開ける。
だが今日はちょっと様子がおかしい。見物客が多数居るのはいつもの事だが、明らかに開店待ちをしている
お客さんと思しき人が数人居たのだ。
そのお客さん達は開店と同時に店に入り、あっという間に絨毯と手提げ袋を1つずつ買っていった。
開店からわずか10分の出来事だ。
しかも買っていったのは3人。一体何が起こっているんだ・・・
「そろそろこうなるとは思ってましたよ?」
アンネがまたも訳知り顔でこう言う。そういうのは前もって教えて欲しい。
「この前の公爵様が自慢なされたのでしょう。先ほど絨毯と手提げ袋を買って行かれたのは貴族達の部下の方達だと思います。これからもっともっと売れますよ。」
まじか・・・今まで順調過ぎたのにこれから更に爆売れモードに入るのか・・・
ってやばくね?在庫がもう絨毯4枚と手提げ袋7個しかないよ。
「そうですね・・・売り切れたらしばらく閉店してまた2人で作らないといけませんね。」
やはりそうなってしまうよな・・・だが出来れば店はずっと開けておきたい。折角のお客さんを逃がしたくはないのだ。
「これほどの商品ですから多少は待っても買いたいと思うはずなので平気だと思いますよ。」
アンネはそう言うが俺は不安なのだ。これほどのビッグウェーブは転移前も含めて人生で初めてなのだ。
絶対に逃がしたくはない。だが他に方法が無い以上は仕方ないか。
俺が焦燥感に駆られていたせいか、その後の時間は凄くもどかしかった。
手提げ袋でも縫えば良いところをソワソワしているだけでアンネから見たらさぞ邪魔だった事だろう。
そんな俺がソワソワし疲れたところに新たな来客があった。
「これね!?こんな物を本当にあいつが・・・?」
「私はそう聞いた。ふむ・・・ほら。あそこに居るではないか。」
「あ!本当だ!!」
ん・・・?知り合いか?だがあいつなんて呼ばれるような知り合いは俺にはおっちゃん位しか居ないぞ。
そう思って俺も声のした方を向いてみると・・・
「ちょっと!あんたこんな凄いの作れるのに何であんな物持ってきたのよ!」
ギュレーヌ侯爵の娘のエイミーだった。侯爵も一緒にいらしている。
「やあ、勇者殿。勇者殿が面白い物を作ったと聞いて見に来ましたよ。」
「いらっしゃいませ、侯爵。聞いたというのはベルボー公爵ですか?」
「ああ。絨毯と手提げ袋をこれでもかと自慢して回っていたよ。」
そんなにか・・・
「そうよ。それなのにあんた!」
途中でまたエイミーが割り込んできた。
「何でしょうか?」
「こんなの作れるのにうちにあんな布団を持ってくるとか喧嘩売ってんの!?おかげでシャルに自慢されたじゃない!」
ああ・・・そういう事か。説明しても理解して貰えないんだろうなあ・・・
「いえ、あの布団はですね・・・この絨毯と手提げ袋より遥かに強い魔物を素材に作った布団なのですよ。
ですから遥かに高級品だと思って持っていったのです。」
「あんな気持ち悪い布団がそんな訳ないでしょ!馬鹿にしているなら怒るわよ!?」
既に怒っているじゃないか・・・それも相当激しく。
「いや、嘘じゃなくてですね・・・。」
俺がなんとか説得を試みていると助け舟が出た。
「シュウさんの言っている事は本当ですよ。」
「誰よあんた?」
「シュウさんの奴隷のアンネです。あの布団と交換でシュウさんの奴隷になりました。」
「奴隷・・・?奴隷のくせに生意気ね!」
しまった・・・そういえばアンネに奴隷だと名乗るのをやめるように言ってなかった・・・。
「エイミー。そのくらいにしておきなさい。」
どうしようかと思っていたところ侯爵が助けてくれた。いやむしろ遅いよ侯爵!
「むうう・・・。良い!?次に凄い物を作ったらまずうちに持ってくるのよ!」
「善処します。」
「持ってくるのよ!?」
持って行っても良いが、またゴミ呼ばわりされたら俺の心が・・・。やっぱり嫌だな。
「ところで石川殿。絨毯と手提げ袋を買いたいのだが。」
「それは有難うございます。」
「絨毯を2枚と手提げ袋を1つ貰えるかな。」
「2つ!私とママの分!」
「では2つずつ貰えるかな。」
「はい。有難うございます。」
「それでは石川殿また。」
「はい。またのご来店をお待ちしております。」
まるで嵐のようだったな・・・だが侯爵も2つずつ買ってくれた。
そして次のお客さんが2つずつ買ってくれて残りは手提げ袋が3つのみとなった。
「絨毯はもう無いのか?入荷はいつになる?」
「明日製作致しますので恐らく明後日になるかと・・・。」
「とりあえず手提げ袋を売ってくれ。」
「はい。有難うございます。」
その後も客足が止まることはなくあっという間に完売してしまった。
「アンネ。閉店しよう。」
「はい。」
商品が無いのに店を開けていても仕方がないので閉店した。




