第三十三話 開店初日
「早く!早くお店に行きましょう!」
朝食が終わったところでアンネが今日も元気に急かしてくれる。
「ああ。ところで店を出す事に関してはもう特にする事はないのかな?」
「後は売るだけなのでは?一応後1つ用意している物はありますが。」
そうなのか。随分簡単なようだがこの世界ではこんなものなのかね。
そう思いつつ店の方へをワープした。
「あ。少し待ってください。もう最後の準備をしちゃいますから。」
ドアを開けて店に入ろうとしたところでアンネに止められた。
「ここでするのか?店に入ってからじゃ駄目なのか?」
「ふふ~ん♪ここじゃないと駄目なんです。」
何やらドヤ顔でアンネがそう言う。一体どういう事なんだ?
「あれですよ、あれ。一昨日シュウさんに頼んだ物です。」
あれ・・・?あれか!あんな物をここに置くというのか・・・。大丈夫なのだろうか。
「ここに出すのか?苦情とか来ないか?」
「大丈夫ですよ。死体ですしここは私たちの店の前ですしね。」
「それなら良いんだが・・・。」
「さぁ!ドカドカっと出しちゃってください!」
アンネにそう促され俺はグリズリーとキラーコブラの傷の少ない死体を店の前に出した。
当然の如く、周囲に居る人達はザワザワどころかワーギャーだ。
「出したが。本当に良かったのか?」
「平気です!」
そう言い胸を張って店の中へと入っていくアンネ。と思ったら戻ってきた。
中から持ってきた開店中の札をドアに下げてまた中へと入っていった。
「シュウさん?入らないのですか?」
「あ、ああ・・・。」
俺はアンネの呼び声に応えて店内へと入った。
だが店の外はガヤガヤと凄い騒ぎだ。ほっといて良いのだろうか?
「ふふふ。これであっという間にこの店の事を知らない人は居なくなりますよ。」
アンネはご機嫌だ。俺が小心者なだけなのだろうか・・・
まあ開店して外に人が居るのは良い事だ。誰もまだ店内に入ってきてないのは別にして。
しかし誰も店に入って来ないな・・・かれこれ開店して1時間くらい経っているのだが。
アンネもじれったそうにしている。と思ったら我慢の限界を既に迎えていたようだ。
「ちょっと外を見てきます。」
そう言ったその時。店のドアがついに開かれた。
「いらっしゃいませ!」
アンネがそのままお客さんに駆け寄る。
「すまない。この店の前に置いてあるのは何だろうか?」
「グリズリーとキラーコブラです!」
「やはりそうなのか・・・。」
落ち着いてそのお客さんを見ると兵隊さんのようだ。恐らく街の人に様子を見るように言われたのだろう。
「何か問題でもあったでしょうか?」
「いや、何も問題はない。ただ・・・物が物なので人だかりが凄すぎてな・・・。せめて物が何か分かればこの人だかりも解消されるだろうという事で私が代表で聞きに来たのだ。」
やはりお客さんではないようだ。アンネもそれに気付きがっかりしている。
かと思ったらそうでもなかったようだ。
「そうですか。ご苦労様です!ここはグリズリーの絨毯とキラーコブラの手提げ袋を売っているお店です!
そこも皆さんに説明してあげてくださいね!」
凄い良い笑顔でそう言った。
こんな時でも宣伝を忘れないとは・・・アンネ・・・恐ろしい子。
そんな兵隊さんが帰ってからしばらくは冷やかしの客が様子を見に来た。
「これがグリズリーの絨毯か・・・。」
「このキラーコブラの手提げ袋は是非欲しいわね。」
結構というか相当食いつきは良い。この分ならすぐに売れるんじゃないだろうか?
「この絨毯と手提げ袋はいくらなんだ?」
「絨毯が金貨20枚で手提げ袋は金貨10枚です。」
え・・・?そんなに取るの?そういえば価格を決めてなかったというか相談してなかったっけか。
いや。金貨10枚と7枚とか言ってたよな・・・確か。あれは最低でもその金額って事だったか。
「やはりそれくらいはする物か・・・。」
「さすがにすぐには買えないわね・・・。」
やはりお高いのだろう。欲しそうにする人はかなり居るが、購入には至らない。俺も買えないしな。
それからしばらくはまばらに同じようなことが何度か繰り返された。
お客さんが商品を見て、アンネが価格を伝えて唸って帰っていく。
俺が倉庫のおっちゃんのところに今日の分の木を収めに行こうかと思ったその時、その瞬間が訪れた。
「このグリズリーの絨毯を買いたい。」
「かしこまりました。こちらの品でよろしいでしょうか?奥に同じ商品がいくつかございますので
今なら選ぶことが出来ますが。」
「そうなのか。ぜひ見せてくれ。」
最初に来た集団の中の1人が戻ってきて絨毯を買おうとしているのだ。
俺はこのままつつがなく売れてくれと祈るばかりだった。
祈りが通じたのかそのお客さんは絨毯の中から1つを選んで買っていった。
「有難うございました。またのご来店をお待ちしております。」
売れた・・・・絨毯が売れたぞ!しかも金貨20枚で!!200万円で!!
「シュウさん売り上げの金貨です。」
「ああ!良くやってくれた!」
「ありがとうございます。」
アンネはそこまで嬉しそうじゃない。何故だ?
「売れて当然ですので。」
そういえばアンネは最初から売れるのを確信していたんだっけか。俺は半信半疑だったが。
俺はアンネに店を任せて倉庫へとワープした。
「こんにちは~。」
「おう。どうした?今日はやけに機嫌が良さそうじゃねえか。アンネちゃんと何か良い事でもあったか?」
「いや~ちょっとした臨時収入があったんですよ。」
「ほう。そいつは景気が良いじゃねえか。今度なんか奢れよ。」
「良いですよ。はい。これ今日の分です。」
「本当に景気が良さそうだな。あいよ。」
「じゃあまた明日~。」
「おう。また明日な。」
おっちゃんに今日の分を渡して店へと戻る。」
「あれからどうだ?」
「何名かお客さんはいらっしゃいましたが、売れてはいません。」
俺はがっかりした。
「そんなに一気には売れませんよ。ですが早ければ10日以内に売り切れると思いますよ。」
そんな俺の様子を見てアンネが元気づけてくれる。
「今日はもう店仕舞いにしよう。」
「分かりました。それでは店を閉めてきますね。」
アンネが外へ向かおうとする。が戻ってきた。
「この街の治安は良いですが念の為、外に置いてあるグリズリーとキラーコブラを仕舞っていただけますか?」
それもそうだな。出しっぱなしにしていたら持って行かれてもおかしくはない。
俺は一度店の中に運び入れてからアイテムボックスに収納した。周りにはまだ人が居たからな。
店を閉め今日の営業は終了だ。 売上は金貨20枚!俺の木こり生活半年分が1日で稼げてしまった。
「そうだアンネ。今日は売上があったし開店祝いって事で街で何か食べていかないか?」
「良いんですか?それなら私お肉が食べたいです!」
何を食べるか決めてくれとは言ってないんだが・・・まあ俺も肉が食べたいから良いんだけどね。
「じゃあ美味しそうな肉料理の店へ行こう。」
「はい!」
俺たちはお高そうな肉料理屋で肉を腹いっぱい食べた。
お会計は銀貨5枚ほど飛んでってしまったが後悔は一切ない。
「あ~美味かった。」
「御馳走様でした。本当に美味しかったですね。」
「じゃあ今日はそろそろ帰るか。」
「はい。明日も売らないといけませんからね。」
俺たちは家に帰ると満腹で疲れていたのもありすぐに寝てしまった。
ようやく1万PV達成しました。
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