第三話 ソファー
今日も無気力に木こりの仕事を終えた帰り道、いつものように食材を買おうとおばちゃんの店に寄った時の事だった。
「今日もまいどあり~。そうそう!あんたも聞いたかい?村長がソファーを買ったって話!」
「いえ。初耳です。」
なんだそりゃ?ソファーを買ったくらいで何を大袈裟な。
「金貨5枚もする買い物だったって皆に自慢しててね~。あたしも見せてもらったけど、確かに大した物だったわよ。」
50万円!!そりゃ確かに噂話にもなろうもんだ。
「あんたもまだ見てないなら見せて貰っておいで。村長も見せびらかしたくて仕方がないみたいだし。」
「有難うございます。後で見に行ってきます。」
「ああ。そうしなよ。」
いつもと少し違った買い物を済ませ、家へと帰る。そしてすぐに家を出る。
何の娯楽もないこの村では例えソファーだろうと、見世物になる。
久々の娯楽にワクワクしながら村長の家に行く。家の周りには人が多少集まっていて、噂話に興じていた。
「やあ。あんたも村長のソファーを見に来たいのかい?」
「ええ。折角なので見せてもらおうかなと。」
村人のおっさんと家の前で無駄話をして、村長の家に入る。
家の中には堂々と中央にソファーが置いてあり、村人達がそれを囲むようにしていた。
「やあ、いらっしゃい。君もワシのソファーを見に来たのかね?」
目ざとく俺を発見した村長が、早速俺に声をかけてきた。
「ええ。素晴らしいソファーを購入されたと聞いて是非一目見せて頂きたいと思いまして。」
たかがソファーに何を言ってるんだかと思いつつも、路頭に迷っていた俺を暖かく村に受け入れてくれた村長にお世辞を言っておく。
そうして村長におべっかを使いながら俺もソファーを見せてもらった。
「このソファーはな。なんと!!アイアラン商会がシーザーウルフの皮を加工して作ったものなんじゃ!」
「へぇ~。それは凄いですねぇ。」
そんな村長の自慢を聞かされ空返事をしながら俺は全く別の事を考えていた。
シーザーウルフ?雑魚じゃねぇか。そんな物を使ったソファーが金貨5枚だと!?馬鹿じゃねえの?
「この色合いと言い、座り心地と言い、最高級のソファーなんじゃよ。」
村長の自慢話を聞き流し適当な相槌を打ちながら、俺はある事を考えていた。
魔物の素材を買い取る等と言う事がなかったこの世界で、ようやく魔物の素材の価値が見出された。
もしかしたら、俺にも活躍の機会があるかもしれないと。
俺は村長の家を出てすぐに、王都へとワープした。