第十五話 アンネ
うちに奴隷が来た。言葉にしてみると何かとんでもないな。
さて、その奴隷を紹介と言いたいところだが・・・その奴隷は混乱していた。
「え・・・さっきまで王都に居ましたよね?何ですかここは?ご主人様が変わってあの屋敷を出れたと思ったらいつの間にか村に居ました?ああ・・・なんだこれは夢なんですね。」
落ち着くまで待ってあげようかと思ってたら、夢だとか思い始めて収拾が付かなくなりそうなので説明する事にした。
「あ~改めて初めまして。俺は石川周。君はなんて言うのかな?」
「石川周?変な名前ですわね。お前に名乗る名前なんてない!!私こそは未来の大商人アンネですわ!」
うわ・・・凄いテンションで返してきたな。これはあれだ。完全に夢だと思ってるね・・・
「そうか。ところでアンネ。俺がさっき男爵になんて呼ばれていたか思い出せるかな?」
「そう言えば勇者とか呼ばれてましたね(笑)。そんな物この世界に居る訳ないのです。」
うん。夢だと思って本音で喋ってくれるのは良いんだけど大分俺の心が悲鳴をあげてきてるね。
しかし困ったな。勇者じゃなくても良いんだけど俺の事を夢じゃないと思って貰えないと話が進まないぞ。
「でも夢にしては随分貧相な家ですね。勇者もみすぼらしいですし。」
ぐはあぁぁ。やめろ。俺の心のHPはそろそろもう0だ。
止むを得ん。これ以上俺の心が傷つけられる前にするまいと思っていたがポカリとするしかあるまい。
「あいたっ!」
俺に軽く小突かれ呆然とするアンネ。そしてしばらく俺を見つめた後、どんどん顔色が悪くなっていった。
「もしかして・・・夢じゃないですか?」
俺がニッコリ笑って頷くと、彼女は地面に這いつくばって詫び始めた所謂土下座だ。
「申し訳ありません!!まさか夢じゃないとは思いませんでした!」
まあいきなりワープとかさせられたらそりゃ夢じゃないかと思うよな。ここはひとつ許してやるか。
「いや気に 「本当に申し訳ありません!!何でも致しますのでどうか折檻だけは勘弁してください!」
む・・・何でもするだと・・・
アンネは16歳くらいなのだろうか?容姿は美少女と言っても良く髪の色はピンク色で大人しそうな雰囲気だ。まあ実際はかなり元気な子のようだが。
「うん。気にしてないから・・・本当に。さっきのはワープで帰ってきたんだ。」
「はぁ・・・ワープですか・・・。」
まだ夢から覚めやらぬ感じの浮ついた返事を寄越すアンネだが、とりあえず自己紹介を済ませよう
「知ってるとは思うけど俺は石川周。異世界から転移してきて、色々あって今は木こりをやっている。」
ざっくりとした感じで自己紹介してみた。勇者のくだりはカットして・・・。
「異世界から来たのですか・・・?木こりなのに何で男爵と・・・?」
まあもっともな疑問だが今は説明しないからな。俺の心が癒えるまでは絶対話さんぞ。
「それでアンネはどんな子なのかな?差し支えなければ奴隷になるまでのアンネについて教えて欲しい。」
「あ・・・はい!私は商人の娘として生まれてボーレン領で学校へ行きながら暮らしていました。ですが父が商売で失敗して、男爵に借金のカタとして奴隷として仕える事になりました。」
ただの商人の娘か・・・と思ったが、これもしかすると男爵が罠にハメたんじゃね?
いや一切証拠も無いし、完全に俺の推測だけどさ。あの感じだとそういう事してそうだよな・・・
まあ何にしてもどこにでも居る普通の子だと分かり一安心だ。
「それで私はどんなお仕事をすれば良いのでしょうか?」
あ~仕事な・・・後先考えずに連れてきたけど特にして欲しい事とかないんだよな。そう言ったら怒られるかな?まあでも正直に言うしかないか。
「いや特にはないかな。」
「え・・・それじゃ何の為に私を買ったのですか?」
「いや~あの男爵さ、何かやばそうだったじゃない?だからそれなら俺のところに来た方がマダましかなって思ったら布団と交換しちゃってたよ。」
また混乱というか訳の分からない感じで俺の事を見つめるアンネ。うん。この件に関してははっきりすまんかった。
「まあとりあえず家の事でもやってこの田舎村での生活に慣れてくれ。やる事が出来たら手伝ってもらうからそのつもりで頼む。」
「分かりました。精一杯頑張ります。」
こうして俺の家にアンネが住むことになった。寝るところとかどうしよう・・・




