第十四話 交換
あれから数日・・・俺はまたも無気力に日々を過ごしていた。
俺は朝の木こりの仕事をした後は何をするでもなく家でぼーっとしていた。
まさかあの最高の布団が銀貨3枚とは・・・
「あ~もうマジでこの世界滅ぼそうかな・・・。」
中二病患者のような事を言いながら俺は呆然としていた。ただ俺には実際にその力があるのでその気になれば出来てしまうのが洒落にならない。
「成金趣味の悪趣味な布団ね・・・誰にも理解されないから銀貨3枚にしかなりませんよってか・・・。」
駄目人間まっしぐらである。
「ん・・・?待てよ。そう言えばあの侯爵最後に何か言ってなかったか?」
『あまりお勧めはしませんが好事家のキュベール男爵ならばもしやすると高額で買い取ってくれるやもしれません。』
「そうだよ!確かにそんな事言ってたはずだ。あまりの事にしっかり聞いてなかったけど確かにそんな事言ってた。居るんだよこの世界にも物の価値が分かる奴が!!」
今更ながらに可能性が途切れて居なかった事に気付き元気を取り戻す現金な俺。
さて、行きたくはないが最後の可能性だ。貴族街へ行くとしようか。
昨日と同じく貴族街の警備兵に訪ねてみよう。
「こんにちは。キュベール男爵のお屋敷はどちらかわかりますか?」
「あ。勇者(笑)殿。キュベール男爵ですか・・・。あちらになりますが行かない方が良いと思いますよ。」
こいつ確実に俺のこと馬鹿にしてるよな?殴っても良いんじゃないかな。やらないけどさ・・・
「どうも。」
素っ気なく言ってキュベール男爵の屋敷へ向かう。俺にはもうここしか可能性がないんだ。
向かった先の屋敷は何というか凄まじい成金趣味というか悪趣味が全開な感じだ。
これは正直やばいんじゃないかな・・・とは思うがキュベール男爵こそが最後の希望なのだ。行かないわけにはいくまい。覚悟を決めて門兵に声を掛けよう。
「こんにちは。石川周と申します。キュベール男爵にお話があるのですがお取次よろしいでしょうか?」
「あん?男爵様は忙しいんだ。帰れ。」
なんだこの門兵は。正直帰りたくなったが、我慢だ我慢。
「ギュレーヌ侯爵からキュベール男爵ならばと伺って参ったのですがお取次頂けますんか?」
余り人の名前を勝手に借りたくはないが背に腹は変えられん。嘘は言ってないしな。
「侯爵だって?ちっ。しゃあねえ。男爵様に聞いてくるから待ってろ。」
何とか門前払いは回避出来た。ここからが本当の商談だ。今度こそ最高級羽毛布団の価値を認めさせる!!
「男爵様が会って下さるとさ。さっさと入んな。」
「どうも有難うございます。」
そして侯爵のように、通された応接室で男爵は同じように娘さんを連れて待っていた。
「失礼します。」
前回から進歩の無い挨拶だが、まあ日が経ってないし致し方なかろう。
「ワシが男爵のキュベールだ。勇者殿はワシに話があるそうだが一体どんな話かな?」
良かった・・・門番があんなのだったからとんでもないのが出てくるかと思ったらまともな人のようだ。
「はい、実は男爵様なら価値が分かるだろうと侯爵様から紹介されましてある物を見ていただきたいのです。」
「ほほう・・・それは楽しみですな何を見せてくれるのか・・・。」
俺はやや緊張しながら布団を取り出して男爵に見せて説明した。
「ほうほう・・・なるほど。その色と言い、この強度と言い中々の逸品のようですな。」
おお・・・分かってくれるか。
「やめた方が・・・。」
娘さんがそう呟いた・・・と思ったその時。
「お前には聞いておらん!」
いきなり男爵が娘さんを殴りつけた。俺がいきなりの事態に戸惑っていると男爵がこう説明した。
「失礼。この奴隷は先日購入したばかりでして・・・まだ躾が済んでおらんのですよ。」
なるほど・・・奴隷か。なるほどじゃねえよ!この世界に奴隷なんて居たのか。知らなかったよ!
「おや?奴隷をご存知ではない。奴隷は良いですぞ~絶対服従で裏切れない。これほど便利な物はありませんな。奴隷となるのは主に借金で首が回らなくなった者達でしてな・・・。」
突然男爵がゲス化して奴隷の良さを俺に語ってくる。これはアカン奴だったか・・・と思ったが確かに奴隷はこの俺を嫌っている世界で唯一裏切らない存在と言えよう。
「それは素晴らしいですね。ではこうしませんか。この布団とその奴隷を交換するというのはどうでしょう?」
俺は男爵のように躾とかはしない。まだ俺の元に来る方が幸せになれるだろう。俺は木こりだけど。
俺の布団で人が救われるなら安い物だ。本当に救われるのかは分からんが。
「なるほど。悪くはない提案ですな・・・良いでしょう。ではその布団とこいつは交換しましょう。」
本当に物扱いなんだな。
「こちらが誓約書です。ほら。さっさと行かんか。今からお前の主はその人だ。」
「よ、よろしくお願いしますご主人様。」
「ああ・・・よろしく。」
こうして俺は布団と奴隷を交換して奴隷を得た。




