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『q.e.d(証明終了)』

 「q.e.d」


 ― 日常編 ―


 朝。

冬の北海道はとても寒く、布団の中でのまどろみに抗う術を知らないかのようにベッドに沈む者は多い。

小鳥のさえずりはテレビドラマなどで爽やかな朝を演出する効果として使われているが、僕にとってはその効果は期待できないらしく、むしろ朝を迎えたことをマイナスの気持ちで認識させられる。そして、小学生が近くを通ったことを表す喧騒も、それと似た意味を持っていた。そう、一般には学生及び社会人がそれぞれの行くべき場所に行く時間である。

 しかし、一般は一般であって、それに該当しない人間が例外として存在している可能性は無視できない。つまりは、学校に通わない学生も存在していてもなんら矛盾は生じないと主張したいのである。前置きは長くなったが、それがこの僕、春摘 泰斗である。読みはハルツミ タイト。そして、自慢ではないが、健康優良不登校児なのである。

 そして、大抵の人は「不登校?なぜ?」と疑問をぶつけてくることが多いが、しかしそういう相手にはむしろ僕が首を傾げることが多い。理由がある不登校は理由が取り除かれれば登校を始めるのだろうか?少なくともこちらは理由なんてものはない。それこそ、行く理由が見つかったら行く気にはなるのだが。

 

 元々、中学生の頃から学校という組織は好きでなかった(もっともこれは優しい表現で、嫌いだ、と断じてしまっても相違ないことは述べておこう)。卒業できる程度には通っていたし、成績が悪いわけではなかった。高校にも最初の一ヶ月は通っていたのだが、価値は見出せずに学校に通うぐらいなら、と2日に1回アルバイトを始めた。それで、ネット代くらいは稼げている。大抵の不登校児は親がいるので食うのに困らないのだろうが、こちらは中学時代に親は亡くしている。その理由はニュースでお馴染みの(お馴染みかはそれぞれだろうが)『無差別一家惨殺事件』というもので、犯人はまだ見つかっていない。おそらく、これからも見つからないだろう。当時はそれこそ巷を騒がす大事件であったが、せいぜいニュースや新聞のネタになっただけで犯人の手がかりは見つからなかった。

 ともかく、そんな大事件で生き残ったのは姉と僕だけだった。その姉も寝ているところを鋭い刃物で目をえぐられて失明しているからまともな生活は期待できない。ちなみに僕は肩に切り傷ができた程度で済んだ。とはいえ、混乱した姉が僕に包丁をふるった時のものだ。包丁を振るなら腕を振るってほしいと思うものの、結局料理されるのは自分なのでやめておいた。

 働き手が僕だけ、というと格好いいし、幼い頃の心の傷、といえば聞こえはいいが、そんなもの大した問題ではない。ただ単に集団生活が苦手なだけで、その事件の犯人のせいにするのは犯人に失礼だというものだろう。

 

 パソコンを立ち上げるとメールソフトのアラームが鳴る。30件ほどが程なくして受信完了したようで、普段より多い。コーヒーメイカーの音が鳴る。コーヒーはとりあえず保留しておいて、メールチェックを始める。

 ―絶句。

 31件中1件は未承諾広告だ。どうやら女の子に無料で出会えるサイトのURLが載っているようだが、こちらは学校すら行きたくない人間だ。そんな新たな出会いは必要ない。

 しかし、これはいい。その他30件は、全て同じ人物から。しかも、フリーメールではなくプロパイダ名が直接わかるアドレスだ。内容は以下を参照。

 「話がありますすぐ返事くださいおねがいします」

 「なにかありましたか住所を送ってくだされば見に行きます返事ください」

 「どうしたんですかまさか死んだりしてませんよね」 

 などなど。

 僕は箱入りに育ってきたので(皮肉表現だ)、他人に明確な感情をぶつけられるのが誇張ではなく気持ち悪くなり、吐き気がする。本当に嫌だ。倒れることだってある。コミュニケーション不全の一種なのかもしれない。

 さて、家の外に行くことが極端に少ないのでストーカーに追われる覚えなどない上に、このアドレスが知られている。

 いかにも、このアドレスは僕が運営しているサイトに使っているアドレスで、探せば誰でも手に入れることができる。しかし、サイトでの日記は社会人として書き込んでいる。それが偽情報だと見破っても、僕が誰であるかわかる情報など微々たるものだろう。せいぜい、犬を飼っていないだとか、ゴマドレッシングのサラダが好きだとか、およそ確定情報でないものだ。

 そうこうしている間にまたメールの受信が始まる。

 「申し遅れました私母主十金っていいますお元気ですか今日の放課後までに返事がなければ家に行きます」

 これは携帯電話のアドレスからだ。ツッコむべきことはたくさんあるが、とりあえずは「。」と「改行」を教えてあげたい。

 しかし、なんと読むのだろうか。ボシュトキン?ポチョムキン?

 「どうしたの?」

 驚いて後ろを振り向くと、姉の小春がコーヒーを持って立っていた。見るとパソコンラックに視覚障害者用の杖が立てかけられていた。その音すら聞こえなかったほど集中していたのだろうか。

 僕のデスクにコーヒーを置くと、ソファに座り込む。その両目は堅く閉じられたままだ。

 目が見えない生活はスリリング且つ退屈という矛盾を孕んでいるらしく、姉は小説を僕に読めとせがんでくることが多くなった。

 元々偏執的に僕を可愛がる姉だったが、目が見えないので淋しかったのだろう。最近はおとなしいものの、当初は感情の起伏が激しかった。頼まれごとを断れば泣かれるわ、帰りが遅かったら電気も点けずに待っているし(もっとも、盲目の姉にとって電気は必要ないのだが)、ともかく、寂しさを紛らわす寝付きの友としての小説を読むことが習慣化された。

 その中でも推理小説に深い興味を示したので、僕が考えた推理ゲームを出すことが我が家の定番となった。実を言うと毎日小説を読むのは辛いからなのだが、姉は喜んでいるようでこちらも喜ばしい。本当に必要なのは小説なのか、はたまた僕か。とにかく僕は姉の笑顔を見るために何度も脳内で人を殺し(あくまで文学的表現だ)、密室トリックやアリバイ崩しに挑ませた。探偵役は姉だ。

 しかし、これがどうして難しいもので、たまに自分でも答えがわからなかった本のトリックを解かせては密かに内心関心したりしているものである。

 「急ですが、推理ゲーム。引きこもりの男の子が、急に同じ人からメールを30件も受け取りました。何故でしょうか」

 「え?いきなり?えと…ネットでの友達か、引きこもる以前の知り合いか、今属している組織―あなただったら高校ね―の人、もしくは親族、あとは迷惑メールじゃない?」

 「ふむ…仮に僕のこととして考えていいよ。それはサイト用のアドレスで、サイトではまったく別の人格を騙っていて、それは現実の人が知らないとしたら?」

 「ネットでの友達か、迷惑メール?」

 「でも、僕が高校に行っていないことはバレている」

 「人違いもない、ってことね」

 「さて、誰が犯人でしょう?」

 「ええと…少し時間をちょうだい」

 そう言って小春姉はソファに横たわる。たまにうんうん唸る以外はおとなしくなったので、PCの画面を憂鬱に見やる。どうしたものか。

 そこで、ふと思い当たる。メールの送り主ではなく、『学校に行く理由』ができたんじゃないだろうか、ということ。

 少なくともこの送り主は放課後に僕の家に寄る気満々なのは拙すぎる文からも理解できた。それなら、興味程度で登校してもいいかも知れない。もしかしたら『何か』が変わるのかもしれない。

 変わらなくても、ただそれだけだっただけだ。

 クローゼットを引くと、そろそろ2年生だというのに真新しい制服が掛けられていた。それに着替えると、姉に手早く別れと朝食を渡し、家を後にした。

 

 一月の北海道は寒く、多少自分の格好が冬を嘗めたものであることがわかった。

それはまぁ、いいとして。

 北海道鳴希高等学校。

 それなりの就職率とそれなりの進学率、それなりにまじめな生徒がいてそれなりの不真面目な生徒がいる、中途半端な高校。街角調査ではこんな答えが返ってきそうなほど『それなり』な学校。

 僕が何組だったかはすでに忘れたが、知り合いに聞けばわかるだろう。

 しかし果たして、僕は知り合いは居ただろうか。


 ― 学校編 ―

 

 さて、皆(教師含む)に奇異の視線で見られて今は4時間目。

 昼食の組は暗黙のルールによって決まっているらしく、僕が入る余地はなさそうだった。しかし、特に問題はない。

 『母主十金』さんとやらは学校に行く理由があるから僕の家に行くのを二の次にしたのだろう。それが授業であっても不思議ではない。或いは部活、若しくはほかの理由にしろ、授業中に人探しはやりにくい。

 次に、メールを見る限りだが、彼女は少しオカシイところがある、と思う。

昔の姉の話ではないが、変質的な偏執的。これは想像なので可能性の化膿性を考慮した確率を確立しただけなのだが、要は変人ならば見つかりやすい、といった希望的観測を打ち立てただけだ。正直、女性の内面を外面から判断しようなんてできるはずがないが、希望的観測に賭ける。もし駄目なら明日も学校に行けばいいだけだ。いや、今日家に来るんだったか。

 と、ここまで考えて、足を止める。それというのも、購買に昼食を買いに行く際に使う階段で男女が非常に気まずい話(俗に言う別れ話だ)をしているのを聞いてしまった。

 迷わず迂回。こういった素の感情のぶつかりあうところは苦手だ。先ほども述べたように、誇張表現ではなく、吐き気がする。


 さて、一ヶ月通っていたとはいえ、この学校はまるで他人の家だ。確かにこういう他人の家に入るような感覚そのものは(ひきこもりな為、店に入るのも道を歩くのも新鮮だ、という意味)慣れているものの、立ち尽くしてしまう。

 「やぁ」

 後ろから少年のような高い声が僕を呼ぶ。振り返ると、精悍な顔立ちで少女のような絹肌を持った、全体に丸いシルエットの髪型をしている茶髪の背の低い男がにこにこと笑いながら、そこには居た。

 「…どうも」

 僕はどうにも注意力散漫なところがあるらしく、その少年が持っている缶コーヒーは温かそうだった。そして僕は自販機の向かいの校内図をにらんでいたのである。普通の自販機は音がすることを考えれば、僕の迂闊さも計れるものだ。

 「君は」

 にこにことする度に口元のほくろが歪む。缶コーヒーを制服の裾で包み、緩慢すぎる動作でプルタブを起こす。しかし視線は僕を射抜いたままだ。

 「大きいね」

 なんじゃそりゃ。と思ったものの、身長差は頭一つ分は違う。まぁ、僕は平均よりは背が高いかもしれないが、この少年には大抵の人が大きい物に見えることだろう。

 「…どうも」

 返事をしてみた。

 「ふふ、動くのかい?君みたいに大きい存在が自由に動き回っちゃ、物語は滅茶苦茶になってしまうよ。竜頭蛇尾になるかもしれないし、蛇頭竜尾になるのかもしれない。もしかしたら蛇も竜も存在しなくなるのかもしれない。ふふふ、君は」

 警告警報警鐘。

 なんだコイツ。少々頭のほうがよろしくないんじゃないだろうか。ってまず、身長の話じゃなかったのか。存在がなんだって?

 そこまでまくしたてて、少年は一度コーヒーを飲む。またしても緩慢な動作に時が止まったのかと狼狽せざるをえない。視線は缶コーヒーに沈んでいるが、笑みはにこにこ、から、ニヤニヤ、に変わっている。人当たりの良い笑顔から、低俗な笑みへと。

 「何を壊しに来たんだい?ああ、嫌だ嫌だ。君がここに来なければ互いに会わなかったのにね、皮肉なものだよ」

 「…どうも」

 しばらく見てないうちに、学校は変人の巣窟になってしまったようだ。真に残念な事ながら、先生方の教育法は間違っていたのだろう。

 「ふふ、どうも、か。自分の力に気付かないままでいてほしいものだね。まぁ、僕はこの通り腕力はないけれど」

 そう言って少年は缶コーヒーをきつく握るが、へこむ気配はない。

 「あらゆる手段で君を止めるよ。なぁに、腕力なんてのは『力』の名を冠ぜられるような万能なものではないことは君にはわかっているだろう?」

 「…」

 「ふふ、ふふふふふ。一番力を持つのは『情報力』さ。全くもって楽しいなぁ。楽しみだ愉しみだ。最高の悲しみであり哀しみだ。ふふふふふふふふふ」

 「…はぁ、どうも」

 早々に立ち去ろう。残念ながら今まで僕の近くにいた人で変人はあまり経験がないのでなんともいえないが、おそらく弩のつく変人だ。

 「そっちには別れ話をしてる人がいたんじゃなかったかな?それに、反対の方向に行ってもイジメの現場にかち合うだけさ。嫌いだろ?そういう」

 少年は缶コーヒーをゴミ箱に投げる。予想されていたかのように弧を描いて狭い丸の形をした缶専用の穴へと吸い込まれる。さっきの吐き気がぶり返す。いや、なお酷い。こんなに明確な憎悪をぶつけられるのは、誇張ではなく、僕は苦手だ。

 「人の気持ちがぶつかる場所はさ」

 

 *

 

 昼。保健室にて。

 起きると僕はここにいた。

 「大丈夫?」

 保険医は艶かしい女性ではなく、初老の上品な女性だった。安堵と残念な気持ちではどちらが上だろうか。まぁ、それはいい。

 ベッドには寝かせてもらえず、ソファに寝転がる形で僕は居た。すぐそばにあったテーブルには申し訳程度の食事が置いてあった。

 「最近多いのよ、ご飯抜いて貧血になるコって。倒れているのを見た女子がここまで引きずって来てくれたのよ」

 要は食えってことだろう食事を見るとやけに腹が空いてきた。確かに朝はコーヒーだけだったし、昼は食べてなかった。胃の悲鳴が聞こえたので迷わず箸を伸ばす。

 「やけに背中、埃が付いているわね。どこで倒れたんだっけ?」

 「…自販機前です。購買近くの」

 「ああ、会議室前ね。掃除はしてるんだけど、生徒がサボッていたのかしらね…それにしても本当に酷いわ」

 真新しい制服には埃の色が目立つようで、数回叩かれた。食事は食べ終えたものの、足りないと胃が文句を言っている。早く出て購買へ行かないとならないらしい。

 と、思ったのも束の間、鐘の音が鳴り響いた。

 予鈴というやつでまだ10分の猶予はあったものの、その時間で探し人は見つからないだろう。全く、見知らぬ人に罵倒されるわ倒れるわ、今日は最悪の日だ。

 そして、やけに固まった体をほぐしつつ教室へ。

 「どこへ行っていたんだ?」

 あと10メートルほどで教室だというところで、初対面おそらくの教師がわりと重々しく話しかけてきた。いや、元々こんな話し方なのだろう。顔から判断するに、専門は地理か公民と見た。

 「…倒れて、寝てました」

 「…」

 苦々しい顔を向けてくる。そして、

 「ふざけるな」

 少し怒鳴られた。

 怒鳴られたのは何年ぶりだろうか。姉は決して怒鳴るような人ではないので、もう中学の頃にまでさかのぼるのだろうか、ってそうではなく、なぜに教師というものの怒りの沸点は低いのか。倒れて、寝る。倒れて起きていたほうがいいとでも言うのなら、今小学生が受けている国語の授業を受けるのはこの教師のほうだろう。

 「…はぁ、すいません」

 「すいません、だと?」

 この教師は何が言いたいのだろう。すいませんが駄目ならごめんなさいか、申し訳ありません、だろうか。どちらも高校生が使うには子供らしすぎる及び大人らしすぎる。帯に短し襷に長し。

 「お前がしたのか?」

 「…いいえ、何をおっしゃられてるか判りませんが、たぶん、目立ったことは何も」

 「お前が、


   ―――梅沢を、殺した、のか?」

 「…は?」

 「お前がいなくなった時間にちょうど―だったな」

 「…何を」

 「とりあえず、来なさい」

 両手首をガッチリと掴まれ、会議室へ引きずられた。人権侵害も甚だしい。

 一体、何が、どうなったって?

 

 * *

 

 「君が倒れたのは1時ほどだね?」

 先ほどの先生(ウチのクラスの担任だったらしいが、学校に来てからは一度も会っていない)と、生徒指導の先生、警察官1人と僕。たったの4人しか使っていない会議室は広く見えたが、しかし実際は教室の大きさほどだろう。

 「…ええ」

 「殺人が起きたのも1時なんだ」

 と、生徒指導の先生が聞いてくる。

 「さっきからなんですか?そのサツジン、とやらは」

 「殺人事件があったんだよ。梅沢ってヤツいたろ。3組の。多目的教室で、アイツが細い糸みたいなもので首を吊ってたんだ。しかし、たぶん自殺じゃないんだ。たぶん、というよりは絶対。蛍光灯に上手く引っ掛けて吊っていたんだが、踏み台がないんだ。それに、細い糸だから滑車がないと指に食い込んだり滑ったりして自分で吊ることもできないんだが、それもない」

 生徒指導教師は言い、次に担任が、

 「そこにお前が久しぶりに来たものだから、偶然とは思えずにな」

 と続ける。警察官がジロリと僕の顔を見やる。

 「…殺、人?」

 冗談じゃない。なぜ僕が。

 「…ひどいじゃないですか。僕がたまたま登校したら犯人扱いだなんて」

 「まぁ待て。こっちだって言い分はある」

 直後、警察の人に写真を渡してもらう。そこにはすでに意識のない肉塊だろうことが伺える生気のない手と、そこに握られた真新しい制服のボタンがあった。そんな手のアップは他の情報を入れないように精密に計算されたかのようだった。それは僕が気分を悪くしない為だろう。

 「そこにボタンがあるだろう?そして、お前の」

 と顎で腹部を指される。視線を落とすと、制服の第四ボタンが取れていた。

 「…確かに、ボタンは取れていますが、それが僕のだと決まったわけでは―」

 「見てくれ、相当新しいだろう?このボタンは安物だからか、どんなに丁寧に扱っていても暫く使えばメッキが剥げて銅の色が出てしまうんだ。今まで学校に来ていたものでは有り得ない新しさなんだよ」

 「…でも!」

 「それに、ここ最近の新規のボタン購入者は0人だ」

 「…そんな……でも、僕は1時から倒れていたって証拠があります!」

 「保健室に確認を取ったら、オマエが保健室に運ばれたのは1時35分だったんだ」

 「…え?」

 「どういうことなんだ?」

 「…待ってください、僕が倒れる前に話してた人がいるんです」

 「ほう、誰だね?」

 「名前は知りませんが、茶色で丸いシルエットの髪型の、口元にほくろのある背の低い男子…です」

 「ふむ、今すぐ調べさせる、待っていてくれ」

 

 ―数十分後―

 「…いないですって?」

 「ああ、口元にほくろのある男子は全校合わせて10人ほどいたんだがね、スキンヘッドの者、髪が明らかに黒い者、背が君より高い者…どれも君の言っていたような人はいなかったよ。もちろん、最近髪形を変えた人もいなかった」

 「そんな!」

 「正直に言ってくれないか?自白は罪が軽くなるのは知っているだろう。盲目のお姉さんがいるそうだが、少しでも早く戻ってあげたいんじゃないか?」

 「…!」

 僕はしていない。していないしていないしていない。シテイナイシテイナイ。指定外。 指定外指定外指定外。

 「む…では、昨日は5、6時間目はどこにいたんだ?」

 「…昨日?」

 「ん、そうだ。昨日、梅沢が殺されたんだ、昨日のことを聞くのは当然―」

 「…なんだ、昨日のことだったんですか。昨日はもちろん家にいました。僕は普段学校に来ないんです。昨日はバイトしてました!バイト先に電話してみてください!」

 そう言って、僕がバイトしている『レストラン和泉家』の電話番号を渡す。昨日の事件だったのか、と安堵した。

 …ならなぜ僕を疑ったのだろう?そんなことを思う暇がないぐらいに。

 「いや、アルバイト先には君に会う前に確認を取ったが、昨日はきていないとのことだ。アルバイト先を教えてくれたのはお姉さんだが…お姉さんも昨日は帰ってきていないと言っていたぞ」

 「…え?」

 「それに、噂に聞いたところ、昨日は学校に来ていたんだろ?ウチのクラスの生徒達が噂していたから、私は会ってないが君が来たことは知っているんだ」

 「先生がた、嘘をついていませんか!僕は確かに昨日バイトにも行ったし姉と話したし、今日は男子とも喋った!間違いありません!」

 「俺らが嘘を?何のために?…証言が噛み合わないのでは証拠にはならないな」

 まずい、僕を犯人だと決め付けている上に、心証を悪くしてしまった。少し口が過ぎてしまったようだ。

 とはいえ、その梅沢という男子を初めて知ったというのに、何故殺さねばならないのか。緊張の腹痛が波うち、段々酷くなってきた。

 この先生がたの明確な『猜疑』が先ほど抑えられた僕の吐き気を再度呼び起こす。しかし、ここで倒れてはすべて僕のせいになってしまいそうだ。いや、なんとしても僕が犯人にされてしまうだろう。日本の警察は無能なわけではないだろうが、国民にはそれに近い印象があるのだ。警察官の方々には申し訳ないが、有能と無能の間ぐらいにはなってほしい。

 少しベルトを緩めようとした手にいつもと違った感触が這う。気付かれぬように手元を見やると、赤黒く変色した乾燥血糊がべったりとベルトとYシャツを染め上げている。そして、その一番酷い汚れのところには髪の毛のように細い糸が丸まってベルトに巻き付いている。取り乱さないよう注意して、見つからないようにベルトを元に戻した。いとのあるさつじん。糸のある殺人。イトノアルサツジン。意図のある殺人。

 「どうした?」

 微かな同様に気付いたのか、担任の追求が迫ってくる。

 「…その、僕の制服には血がついてないじゃないですか。派手に血が出たなら、付かないのはオカシイんじゃないですか?」

 「…」

 「…」

 「君は、なぜに被害者が『派手に血が出た』事を知ってるんだ?見せたのは手の写真で、血は写ってないハズだが」

 「…あ」

 違うんだ。ちがうチガウ違う。でも、この血だらけのYシャツを見せるわけにはいかない。これは最早、証拠だ。「僕が犯人ですよ」といった証拠。これは隠し通さねばならない。

 「…待ってください、もう少し落ち着く時間をください」

 「放課後にまた来るから、話をまとめておきなさい。先生もなにがなんだかわからなくなってきたからな」

 そう言って全員、会議室を出る。しっかりとカギをかけてあり、今は2時15分だから、あと2時間30分後に審判が下る。ここで嵌め込みの窓ガラスを突き破って逃げれたらどれだけ楽だろうか。しかし、そんなことをすれば僕は、間違いなく、なお疑われる。

 そういえば、保健室に運び込んだ人物は誰だったのか。それも大事な手がかりだと思う。それより、こんなところでぼけっとしていては駄目だ。考えすら纏まらない。犯人を定めないと冤罪で捕まってしまう。

 見ると、換気扇が大きく、人っ子一人分ぐらいなら入れそうだ。机のキャスターを固定して相当強いらしい糸で引っ掛ければ外に出れるかもしれない。しかし、その代わり無理矢理換気扇を外した事が判ったら疑いの目は避けられないだろうし、糸の存在がばれてしまう。とはいえ、黙っていては時間切れだ。


 すべきか、せざるべきか。

 

 その時、ズゴン、と大きな音がした。ドアを蹴った音を10倍大きくしたような、爽やかさに欠けた音。

 ズゴンズゴンズゴン。ガキッ。

 と擬音で表すと愉快な音に聞こえるが、実際はそうでない。

 ドアに、釘のバケモノみたいなモノとしか形容できないものが生えていた。実際はドアの向こうから打ち込んでいるのだろう。生えているところから見ても、手のひらほどの長さがあり、比例してとても太い。キャンプの際にテントを固定するための釘を鉄で作りました、みたいな。

 ズゴンの度に釘は生え、ガキッでカギの破壊に成功したことを知らせる音を鳴らす。

 それが朗報になるか訃報になるか、もしくは鬼が出るか蛇が出るかは予想はできないが、埃一つないドアの破壊跡から見つけ出したのは少女だった。

 鳴希高独特の制服に身を包み、腰には小さめのポーチ。あどけない潤んだ大きな瞳に、それなりに(過小表現。とても、と差し替えても問題はない)発育したあちこち。飲み込めない状況に流石の僕もカチコチ(押韻効果)。

 「…こんにち、は」

 「…あのさ、カッコのすぐ後に三点リーダ(…)をつけるとキャラかぶっちゃうんだけど…」

 「えっと、それ、今重要なことでした、か…?」

 「…わりと大事かな、って、なんでドア突破して入ってきてるのかな?」

 もしかして頭のどこかが弱い子で、ドアの開け方が生まれたときからこうなんだろうか。だとしたら、あまりに、なんというか、不憫だ。

 「オホン、まずは…春摘 泰斗さんで間違いないですよ、ね?」

 「…そうだけど」

 …スルーらしい。

 「私、『母主 十金』(ははぬし ずきん)っていいます。学校に来ているとは思ってなかったので、前にメールさせていただいたのですが見られてません、か?」

 「…いや、今日の僕は遅刻気味の時刻にメールチェックしたから知ってたよ…一応、今日は君を探しに来たんだけどね」

 「そ、そんな…私そういうつもりでメールしたんじゃなくて…その…でも、私が心配だったんです、ね?…嬉しいで、す。ふふふ」

 一番心配だったのは自分の身と姉の安否で、家に来られたら迷惑だとか非常に自分勝手な理由だったのだが、勝手にプラス思考が進んでいるらしい。

 どうやら、閉鎖された会議室に来たのは正義のヒーロー(ヒロイン?)ではなく、どう転んでも変人だった。

 「オホン、ともかく、あなたを救助に来まし、た。こんなドアの壊れた会議室にいて見つかったらあまり良い心象は与えないでしょう。あなたの身柄を匿いますので、ついてきてくださ、い」

 誰が壊したんだ、誰が。

 とはいえ、そのことを除けば有難い事を言ってくれているのではないか。今までがのんびり話しすぎただけだ。それに、もし捕まった場合、この女のせいにできる、というのもある。少々小汚いが、元々小綺麗な人間はひきこもらないだろう。


 * * *

 

 ―第二部室棟―

 フェルト地に手縫いで「手芸部」と丁寧に縫われている表札が掛けられているドアを開けると、小さな部屋へと繋がっていて、さらにそこには鉄製ドアがあった。元は放送室か音楽準備室だったのだろうか、壁には細かい孔が空いていて防音処理がなされている事が一目でわかる。

 鉄のドアを母主さん(実は二年生で、先輩だった。これからは敬語にしよう)がノックし、入ります、とつぶやくと同時にノブに力を込める。

 「…おお」

 思わず感嘆。そこにはキルト生地で芸術的なまでに丁寧に編まれた半纏や、敷物、また余り布だろう物を縫い付けてできた熊のぬいぐるみや、絨毯。

 その中でも一番目を引くのが、鋏と針が描かれた大きなタペストリーで、壁一面が隠れるほどの大きさだった。

 「ふふ、目に見えるのはほとんど私達が作ったんです、よ?」

 私達、というのが何人なのかによるが、10人がかりとて難しいだろう。ミシンのように正確で、それでいて母親のような優しさを称えるそれは母主さんの性格を雄弁に語っているかのようだった。

 そして、ドアを閉める。

 すると、先ほどは気づかなかったが長身細身の男が椅子にかけているのが目に入った。目は閉じているが、寝ている様子はない。

 どちらかというと瞑想や黙想に近い雰囲気がある。全体に体は引き締まっていて、現在風に形容するならばインナーマッスルというものだろうか。近づきがたいその雰囲気からは母主さんと話している様子は想像できない。

 「部長、泰斗さんがお着きで、す。起きてください」

 「…」

 また三点リーダがかぶってしまった。あ、僕が使わなければいいのか。キャラ変更しよう。これが俗に言う高校デビューというやつだろうか。

 しかも、別に寝てはいないと思う。その理由に欠伸も伸びもしないし、普段からこんな人だろうことは予想できるからだ。

 「オホン、改めて」

 母主さんが向き直る。

 「鳴希高手芸部部長、裁金たちかね きょうさんで、す」

 一応頭を下げる。部長はというと、知ったこっちゃないというように目を閉じて微動だにしない。

 「そしてご存知、私が鳴希高手芸部副部長、母主 十金です。『ずきん』って呼んでください、ね」

 そして、僕より早くペコリと頭を下げる。にこにことした顔は今日話した男と異質のもので、無垢無邪気なものから出てきた笑みであると思う。ちなみに、さっき「君を探しに来た」と言ってからやけに親しい気がする。よほど嬉しかったのだろう。好かれるのは犬だろうと人だろうと苦手だが。

 部長が怪訝そうに薄目を開ける。僕にも説明が必要なのだろう。

 「僕は春摘 泰斗って言います。帰宅部―どころか学校には初めの一ヶ月しか来てなかったので肩書きはありません、考察と…ここが手芸部だからではありませんが、糸の扱いが得意でうまいと言われてきました…今回の事件とは無関係だと思いますが」

 家で針が使えるのは目が見える僕しかいないから、もある。

 「ふぅん…じゃあ入部してくれません、か?」

 事件云々の下りを一括無視してそう質問してくる母主さん。どうやら僕が犯人じゃないと信じているのかもしない。もしくは犯人を知っていたりして。

 「今の状態では決めかねますね…もしこのままだったら逮捕されますし、なんだかんだであと2時間しかありませんし」

 「あはは…ちぇー…じゃあ助けてあげるから入部してください、ね!2人しかいないから淋しいんですよ…もちろん、『趣味の合う人』がいるのは嬉しいですし、ね!」

 …何か言外に引っかかるものを感じた。なんだろう。何か…

 「2人?」

 「はい?あー…今去年から手芸部って2人だけなんです、よ」

 「2人で…これだけの作品を?」

 繊細かつ暖かい作品のそれぞれを指し示す。部長は目を瞑っている。

 「ええ、部長が布を裁って、私が縫うんで、す」

 そう言って母主さんは部長の椅子の傍らにある包みを指差す。1メートルを少し超える程度の細身な包みで、日本刀が入れてあるような細長い紫色の袋に入っている。

 「それ、鋏なんですよ。特注で、硬貨ぐらいならスパスパ切れちゃうすごい鋏なんで、す」

 見せてもらいたいとは思ったが、大事にしているように見えるのでやめておこう。

 「そこに掛かっているタペストリーの裁断も部長がその鋏でやったんです。そんな長い鋏を手足のように使いこなすんです、よ。しゅぱしゅぱーって」

 

 …沈黙。


 「オホン、ちょっとテンション上がりすぎました。…ところで、事件の話しなくてよろしいんです、か?」

 …誰が喋ってたんだ。誰が。

 「それにしても、僕が犯人だったらどうするんです?被害者を助けたつもりが、人質にされたり次の被害者になるかもしれませんよ?」

 「へ?ああ、犯人は知っていますから」

 …え?本当に知ってたのかよ。

 「ど、どういうことです?」

 ドキドキ動悸。もちろん恋ではない。

 「犯人は知ってますが、それを教えるのは私達の役目じゃないんですよ。それに、確証はないんです。なんとなくわかるだけ、で」

 …さすが変人。そういえば、さっきから変人にしか会ってないが、『類は友を呼』んでいるんじゃないだろうな。僕は普通の人だぞ。

 「は、はぁ…よくわかんないけど、『なんとなくわかるけど捜査に先入観を与えない為に黙秘』って事ですか?」

 「うーん、そこまで理屈があるわけではないんです、が、そんなところです」

 ふむ、これは困った。手の内を見せてくれない勝負はトランプでも恋愛でも難しい、とか言ったのはどの偉人だっただろうか。ともかく、今のところ情報は最低限のものしかない。

 「それ、に」

 母主さんが続ける。

 「私達を殺してしまったらあなたが犯人だって確定されるでしょう?部長だって大きい鋏であなたに反撃するか、も」

 …なるほど。

 「私だって、一応戦えるんです。さっきの釘だと、か、他にもたくさ、ん」

 そう言って腰のポーチを軽くたたく。

 「すいません、試すようなことを言ってしまいました。時間もないので手短に話します」

 

 ―手芸部室―

 残り1時間30分ほど。

 「…というわけです」

 ずきんさん(母主さん、と呼ぶ度に修正されたので、今後こう呼ぶ)はふむふむと、部長は紅茶を飲みつつ小説の文庫本を読みながら話を聞いていた。

 「なるほど、確かに話はかみ合っていないです、ね…バイトに行ったのは昨日で間違いないです、ね?」

 「もちろん。間違えようがないです。」

 ずきんさんは少し考えて、

 「でもバイト先は来ていないと言った訳です、ね…それじゃあ、あなたを信じるなら、昨日おうちに伺ったときはバイトに行ってらしたんです、ね?」

 「…え?」

 ここだ。いつもここがおかしい。

 「あれ、昨日はバイトだったんですよ、ね?メールも見られたんですよ、ね?行くことは言ってあったと思うんですけ、ど…」

 「そのメールは今朝送信されたんじゃないですか?」

 ずきんさんは大きく頭を振り、

 「いいえ、確かに昨日送りました、よ。メールサーバーのダウンも朝にはありえないでしょうし、あなたの記憶違いかと、思いま、す」

 おかしい。時系列がおかしい。どこで間違えている?僕はどこを見落としてどこを見ているんだ?

 部長がこちらをちらり、と見やる。そして、高級そうなバインダーが並ぶ本棚まで歩いてゆく。そうかと思うと、その中でも臙脂色のバインダーをこっちに投げてよこす。

 落とさなかったものの、角っこを折ってしまった。罪悪感。

 こちらをじっと見ているところを見ると、中を見ろということだろう。無言を『完全言語』と表現した小説家がいたが、確かにそうかもしれないな、と思う。

 さて、果たしてバインダーの中身は、全員の顔写真が入った鳴希高生生徒リストだった。

 …ええと。

 「部長は、『昨日話したヤツとやらを探してみろ』って言ってるんじゃないですか?」

 「でも先生が調べた以上の情報は望めないんじゃあ…あいっ!」

 そう言いかけた僕に2冊目のバインダーが刺さる。表紙には『鳴希高教師リスト』と書いてある。

 「あの、教師まで調べるんですか?」

 「…」

 「部長の言う通りにしてみてくれますか?勘の鋭さは部内で一番ですから」

 …だろうな。かたや天然ムスメ。かたや落ち着いた大人の男。2人中では1位の座は決して輝かしいものではないが、一応信用しよう。

 果たしてそこに書かれていたのは、身長、体重、血液型、バストウエストヒップ。得意科目、不得意科目、学科評定、性格嗜好。もちろん、僕のホームページのアドレスやメールアドレスもだ。

 …あんたら何者だ。

 

 梅沢臣人。享年16歳。

 やや浅黒い肌と金髪の長い髪をした、典型的な不良である。

 高校生にして喫煙、飲酒は当然で、しかしどこにでもいるような人物。

 一般人との相違点といえば、女子のように背が低い。イジメで3人学校を辞めさせるも、反省の色を見せない。辞めていないがイジメの対象になった者は10名程度。

 

 今回の被害者の名前の欄にはこう書かれていた。『享年』とあることから見るに、すぐ書き直されたことがわかる。また、女性らしい丸字の為、おそらくはずきんさんだろう。どれだけ几帳面な人なんだろう。

 ん、イジメられてた人が殺した可能性って高いはず。まずはそこから当たってみよう。


 数十分後。 

 ヴヴヴヴヴヴ。

 右ポケットの携帯電話が震える。今までそれどころじゃなかったが、引きこもりにはいらないだろう携帯電話を持っていたのだ。実際には姉とバイト先にしか使ってないのだが。

 『レストラン和泉家』と液晶パネルには表示されている。とりあえず電話に出てみる。

 『おーい、生きてるかー?』

 チーフの声が聞こえる。もし事件があったことを知っているならこのタイミングで「生きてるか」などと口に出さないだろう。いや、チーフならわからないな。

 「…どうも」

 『今日は12時から出番だったろ。どうした?もう3時過ぎだぞ』

 「…今日が出番?2日に1回だから…昨日行きましたよね?」

 半ば諦め半分で言ってみた。もう答えはわかっている。

 『おいおい、来たのは一昨日だぞ。はっはっは、寝ぼけてるんじゃないだろうなー』

 「…!」

 『まぁ今日は平日だから客少ないし、許すよ。その代わりに土曜日はフルで―』

 「…なるほど!何かがおかしいと思っていたんだ!わかってみれば可笑しいものじゃないか!はははははは!」

 『…も…もしもーし。泰斗くーん。急に大声出されちゃビックリしちゃうなー』

 「すいません、ありがとうございます!土曜日フルで仕事?日曜日も追加でいいですよ!はははははは!」

 電話の様子を見てずきんさんがちらりと僕に視線を合わせたが、日本より北の方にある国から送られてきた生ものを見るような(語註、危ないものを見るような)目をして視線を外された。

 『…よくわからないけど、そんなテンション高い泰斗は初めてだなー』

 「ありがとうございます!やることがあるので、切らせていただきますね!」

 『あー、土曜―』

 ピッ。

 さて、時系列のトリックは大方解けた。こうなれば犯人探しをしなければ。

 「…あ、の」

 ずきんさんが遠慮がちに話しかけてくる。

 「時間の辻褄が合わないトリック…って言っていいのか、な?まぁそのトリック、わかったんです、か?」

 「ええ、とりあえずはわかりました。あとは僕以外の犯人を探し出すだけです」

 「イジメられてた人の、昨日のアリバイ表…いります、か?」

 …どれだけいたれり尽くせりだよっ

 「でも、僕もわかっているんです。昨日話した男子、『お前の邪魔をする』って言ってたから、たぶんその人だと思うんです」

 「そうですか、では頑張ってください、ね…ふふふ、なんだか泰斗くん、おっきい存在です、ね」


 * * * *

 

 ―会議室―

 時刻は3時45分。ドアがハリネズミのようになっているのを如何ともしがたい感情で見守ると、室内に入り込む。

 すでに先生は中にいた。置手紙というのは真に人間の英知が作り出した原始的かつ効率的なもので、「放課後には戻ります。校内から出ることはありませんのでご安心くださいby春摘」

 という簡潔な文章で精確に感情を伝達できる。

 幸いにも保険医と担任と生徒指導部の先生がいた。こちらも、ずきんさんが付いてきてくれてはいたが、これはアリバイの出所が正確であることを証明する為である。あまり助けは期待できない。

 僕は会議室の壇上に立ち、見栄を張るようにできるだけ堂々と声を張り上げる。

 「それでは、これから推理編を始めたいと思います。読者の皆様はまだ推理したいのならページを戻ることをお勧めします」

 「…訳のわからないことはいいから、話は纏まったのかね?それと、あの扉はなんだ?」

 「扉は、僕がうかうかしているうちに巨大なハリネズミにでも襲われたんでしょうね」

 「ふざけるな!」

 「どうもすいませんね、でも解決編は僕に仕切らせていただきます」

 まずは、提出するアリバイは全て正しいものだということから説明を始める。ずきんさんはそれなりに(几帳面さとあんな生徒リストを作るぐらいだから)情報の出所としては信用されていたので助かった。つまり、先生方が黙認していると言うことはここから情報が漏れることもあるということだ。情報力…ね。誰かが言っていたような、そんな言葉。

 まずは、

 「僕は今お腹が減っています。それこそ、朝は食べていませんし、昼は保健室で少し食べた程度です」

 「それがどうしたんだ」

 生徒指導の先生が不機嫌そうに呟く。

 「しかし、いつもはそんなことはないんです。でもまるで一日何も食べていないような空腹感なんです。それで、本当に丸一日食べていないとしたらどうでしょうか」

 「?」

 皆一斉に首を傾げる。ずきんさんには言ったのにずきんさんも首を傾げる。

 僕だってこんな説明で納得してもらおうだなんて思ってない。これは前置きの前置きだ。

 「僕が倒れたまま、つまり意識がないまま一日が経過していたら、どうでしょう。倒れた際に薬物の注射なり、睡眠薬大量投与なりをして、一日経たせていたとしたら」

 「…馬鹿馬鹿しいな、それはただの妄想だよ。推理なんてものではない。証拠はあるのか?」

 「保険医さん」

 「はい、なにかしら?」

 「僕が保健室にいたとき、やけに埃がついていましたよね?」

 「はい、確かについていましたね」

 「ところが、ドアが偶然(ずきんさんが微笑んできた。怖い)空いたので見ると、僕が倒れた会議室前は埃があまり落ちていない。理由としては向かいに自販機があって生徒の行き来が激しいだけに、埃はあまり溜まらないってところでしょうか」

 「確かにここに入るときに見たけれど、溜まってはいないわね。それに、保健室までの道のりにしてはありえないほど酷い埃だったわ」

 「つまり、僕は違うところで寝ていたんじゃないでしょうか。倒れたところから運び込まれて、目立たない所―この学校には不案内ですが体育倉庫の奥や、使ってない部室などあるでしょう―で一日ほど過ごしたんです」

 「待てよ、それじゃあおかしいじゃないか」

 担任が口を挟む。

 「それじゃあ、時系列がおかしくなるじゃないか。お前の言うことを信じれば、『昨日はバイトをして、姉と過ごしていた』んだろう?でも今の話ではその時お前はどこかで寝ていたはずだ」

 「いえ、先生方が合っていたんですよ。なにせ、犯人は僕に一日勘違いさせるためにそんなことをしたんです。」

 「そんなことをして何になるっていうんだ」

 生徒指導の先生が呆れながら発言。

 「まず、僕の話の辻褄が合わず、疑われるでしょう?さっきのように。また、そんなことを思いついたとしても常人なら実行しようとはしない。それが盲点になる。そしてなにより、時間をずらせば自分のアリバイを作れるじゃないですか」

 「む…しかしだな、お前は死体が血まみれだったことをなぜか知っていたじゃないか?」

 もうその質問が来るか。語り部としては順序があったのだが。

 「それには隠していたことがありました」

 そういって制服を脱ぐと、それぞれが反応を見せる。

 「な…その血はなんだ!やっぱりお前が―」

 「落ち着いてください。ベルトに触ったときに異変に気付きましたが、犯人扱いが怖くて言い出せませんでした。」

 「し、しかし、Yシャツに血がついているということは、犯人かもしれないじゃないか!」

 「落ち着いてください。思い出していただきたいのが、僕がボタンを取られたのは制服です。つまり、僕が被害者を殺した後に制服を着たならボタンは握れませんし、殺した後に制服を脱いだなら血はつきません。犯人は策を仕掛けたのでしょうが、策に溺れたってことですね」

 「ことですね、って他人事のように…しかし、これは正論じゃないか」

 これは担任。

 「となると、誰がこんなことをしたか、かしら」

 これは保険医。

 「いいや、事件前に話していた男子とやらが見つかっていないじゃないか。つまり、キミが昨日倒れた、という証拠がない。今日の分の証拠は保険医の先生が保証するが、昨日倒れたことは誰が知っているんだね?」

 これは生徒指導。おそらくこの人は僕のことが嫌いなんだな。世知辛いもんだ。

 「それなら問題ありません。保険医さん、今日僕を運んでくれた女子の名前、わかりますか?」

 「ええと、見た目は覚えてはいるけれど、名前までは覚えてないわね」

 「この子ではありませんか?」

 僕は手芸部から持ってきた「顔写真入り生徒リスト」『泊 瞳』と記された項に指を添える。

 そこには、『茶色で丸いシルエットの髪型の、口元にほくろのある背の低い』男子ではなく、女子が微笑んで写っていた。

 「そうよ、この子!間違いないわ!」

 「そう、僕が学校に来ていなかっただけに、この人が男子の制服を着ていると『女子みたいな男子』と認識せざるを得ないんですよ」

 しかも、この人が僕のクラスにいなかった、ということは、今日自分のクラスから外に出ないか、もしくは学校を休めば僕がその子に会う前に生徒や先生に会う。そうすれば大騒ぎになり、先生方も殺人鬼候補を一般人の前には出したがらないだろう。つまり、僕がこの子に会う可能性はほぼゼロだ。

 唯一気をつけなければいけないのは、僕を目立たない場所に移す際だろう。この時ばかりは神経を使ったろうし、逆にこんなに大それたことをしたのにここだけしか危険はない。

 ついでに言うと、保健室に運んだのは俺に死なれちゃ困るからで相違ない。その際に誰かに見つかっても女子の格好ならば「倒れてる人見つけちゃって」とでも言えばそれで済む。

 「しかし、うちの男子の制服をどうやって手に入れたんだ?泊さんは男兄弟はいないはずだったが…」

 担任が細かいところに気付く。

 「あるじゃないですか。被害者である梅沢くんは相当小柄だったんでしょう?彼が僕と会った時間には殺されていたのならピッタリ辻褄が合うじゃないですか」

 Yシャツとブラウスは交換する必要もない些事なので、上だけだろう。

 「ぐ…」

 生徒指導が唸る。

 「他に反論がなければ、これで『QED』とさせていただいてもよろしいですか?」

 「お見事です、ね」

 ずきんさんが手をはたいて喜ぶ。

 それに続くように、保険医と担任が拍手を始めたが、生徒指導は苦々しげな顔を向けるだけだった。

 

 こうして、事件は解決した。

 最後まで言い逃れをしたものの、自宅の車庫に凶器である糸が見つかったために(後に知ったことだが、アラミド繊維というもの。髪の毛の細さで数トンの重さを支えられるらしい)逮捕、送検されたようだ。

 

 

 ― 解決編 ―

 

 

 「さ、て」

 ずきんさんが僕の肩を掴む。時は夕暮れ、帰り道の途中で僕と話したいことがあるとかで今は駅まで行くバスを待っているところだ。

 「私達はあなたを助けまし、た。それで、手芸部に入部してほしいのです、が」

 「ははは、僕、これからまたひきこもるんですよ、約束を反故にしたみたいで申し訳ありませんが、それはできません」

 「………」

 「だから、来期に部長がいなくなったら部活の継続は難しいでしょうが、あなたの魅力と勧誘でなんとかきりぬけていただけないかと」

 「…どうし、て」

 「いや、なんのことはないんですけれどね。うちは今、盲目の姉がいるんですが生活費としてアルバイトをしなければいけないんです」

 「…そうじゃなく、て、です」

 「えっと、質問の意図がわからないですね。ただでさえ、今日は慣れないことをして疲れているんですから、手短にお願いします」

 「…どうして、『仲間』になってもらえないのでしょう、か」

 「ええと、先程の僕の言葉を引用するならば、『盲目の姉がいるんですが生活費としてアルバイトをしなければいけな―」

 「違いま、す。なによりもアルバイト―確かスパゲッティレストランでしたよね―が優先なのか、聞いているんで、す」

 「…ええ、じゃないとうちはご飯を食っていけないですからね」

 「どうして嘘をつくんです、か?」

 「酷いなぁ。心外ですよ。僕は嘘なんかついていませんってば」

 「まずは『生活費としてアルバイトをしなければいけない』って言いまし、た?到底足りてないでしょ、う?たかだかアルバイトの給金なんて」

 まぁ、確かに足りてはいないが、それなりに働いているので馬鹿にされた気分だ。

 「いえ、馬鹿にできませんよ。645円のアルバイトでも、一ヶ月に10日、6時間。そして5日ほど8時間労働ですから―」

 64500円で、16歳と21歳が二人、一般的に言えば生活はギリギリできないが、まだ事件で亡くなった両親の生命保険を使いきれていないから十分暮らしは潤っている。

 「そうじゃないで、す。理由は『アルバイトをしなければいけない』ではなく―なんと形容していいものか迷いますが―趣味。そう、趣味。趣味の為に学校に来ないのではないですか?」

 「…さっきからなんなんですか?僕がたかだかその『趣味』ごときで一般的には義務教育と同じほどに重視されている高校生活を蔑ろにしているとでも?」

 「しているじゃないです、か。あんなに綺麗なまでのアリバイ作りと絞殺死体、私、今まで見たことすらないです、よ。それは『義務』でやらされている、というよりは、『趣味』でやっていると言われないと、納得できない程の出来で、す」

 「…何を言っているんです?さっきの事件なら、泊さん―男装女子―が犯人で、僕は冤罪だったはずですが」

 「いいえ、それは違いま、す。おかしいじゃないです、か。あなたは『被害者と加害者の制服を入れ替えた』という推理をしましたが、被害者の制服及び加害者の制服、どちらかは血塗れでなければいけないはずじゃないです、か。まさか、『全裸で殺されてた』ならさっきの場で先生がそう言うでしょ、う。そして、血塗れなのが被害者の制服―男子用詰襟学生服―ならば、殺された時には男子制服を着ていたことになるけれど、その時あなたは詰襟に身を包む泊さんを見てい、る。では、加害者の制服―女子用ブレザー―の場合を考えると、血塗れのブレザーで学校から下校することができるか?って問題なんで、す。矛盾なんです、よ」

 「…で、何が言いたいんですか?」

 「あなたが梅沢さんを殺した後に、服を着せてあげればい、い」

 「…思いつく限り都合のいい状態を考えても、難しいことこの上ないんですが…」

 「いいえ、あなたは昼休みが始まった時に廊下にでたんでしょ、う?そして、そこから次の日の13時半までアリバイはない―眠らされていたのだから、仕方がありませんが―つまり、眠ってさえいなければ、犯行は可能で、す。むしろ、あなたにしかできない。泊さんは制服がアリバイとなっているんですか、ら。いえ、もはや泊さんと会ったことすら嘘でも構わな、い」

 「…僕が眠っていなかったって?」

 「そう、事実、泊さんに会ったとしても、彼女は何もしていな、い。あなたに眠剤を投与することも、眠くなるガスを浴びせたりもしていな、い。あなたは勝手に気が遠くなったフリをして、倒れ、る。彼女がたとえ異常者でも、普通の女子は、先生を呼びに行くでしょ、う。彼女の目がないその時に立ち上がって、人を殺すなり、梅沢に服を着させるなり、検査されてもいいように自分に眠剤を投与するなり、好きに時間を潰せばい、い」

 「…」

 「その後一日経ってから、彼女の前にふらついて出て『保健室に連れて行って』とでも言えばい、い。いや、言わなくたって連れて行くでしょ、う。あなたは学校の中を知りませんでしたから、それを口実にでもし、て。あなたが犯人である可能性は限りなく低いのですが、そうでなくてはならない。なぜなら泊さんは制服がアリバイとなっていますからね」

 「…その他の人の犯行の可能性は?」

 「あなたは自ら生徒全員を徹底的に調べて、泊さんしかいない、と結論を出しましたよ、ね?その泊さんが否定された今、あなたが最有力候補で、す」

 「…ふん、言い逃れは無理か。で、何が目的なんです?」

 「ですから、うちの部活に入っていただけません、か?優遇しま、す。私の『針』―先程の大きい釘のことです―も似た目的で作られていますし、部長の『鋏』も同じ目的なんで、す。あなたの『糸』も、同じく武器なんでしょ、う?」

 「…」

 「ねぇ、『張り詰めた糸』(ハルツミ タイト)さん…私の、この名前はサークルネームで、『母主 十金』は並び替えて『毒針』をもじってつけているんです。本名は『独身 とがね』(ひとりみ とがね)って言います。先生方、今日一度も私の名前を呼んでないでしょう?部長もそのまま『裁金 夾』を横に書いて『裁ち鋏』をもじっているんです。本名は『橘 薊』(たちばな あざみ)って書くんです」

 「…」

 「部室での自己紹介の時、『考察と糸の扱いが得意』って言っていましたよね?その時、頭に閃いたんです。『絞殺と意図の扱い』とかけていたんですよね?だから、私は『趣味の合う人がいるのは嬉しいです』って返したんです」

 煩い。お喋り。不愉快極まりない。明確な『仲間意識』も迷惑だ。

 「…僕は、学校に行く価値がないと思っています。が、一時でもいいなら入部してもいいです」

 「本当?ありがとうございま、す。手伝った甲斐がありまし、た」

 彼女の寒さで赤くなった頬が、興奮でもっと赤くなった頃、バスが到着の笛を鳴らした。

 

 

 ― 後日談 ―



 「さて、推理ゲーム。今回の事件はこんな感じ。小春姉、真相がわかるかな?」

 ここは我が家の居間。テレビがニュースを読み上げる意外は静かなものだ。

 「え?ここで終わりじゃないの?」

 「ううん、言うならば『後日談』ってものが残っているのさ」

 「ええと…わからないけれど…とにかく、趣味のように人を殺すなんて、まったくあなたは大きい存在だわね…あなたは部活に通う日々が始まるのね」

 「残念、それは違うんだ」

 「あら、どうして?」

 ちょうど、テレビのニュースが話題を変える。

 […次のニュースです。北海道鳴希高校で男女が絞殺死体で見つかりました。男子は橘 薊さん(18)で、女子は独身 とがねさん(17)でした。またこの高校は一昨日も男子生徒絞殺事件があったばかりで〜…]

 「というわけでした」

 「まったく、あなたには呆れるわ。あなたが両親を殺したときにも、私の目を奪ったときにも思ったけれど、あなたは随分と糸が切れているのね」

 「違うよ、僕の糸は張り詰めているだけさ。しかし、泊さんも宣戦布告した割にはつまらなかったね。そもそも、泊さんは宣戦布告をしたんだっけな?覚えていないけどね。いちいち階段の気持ちを考える人がいないように。さて、つまらなくて、小説にもなりやしない話は終わり。今夜は何が食べたい?」

 「久しぶりに魚の鍋でも食べたいわ。魚の目玉を食べたら、目が元通りになるかも」

 「それはまたナンセンスな話だね」

 「それはお互い様じゃない」

 そう言って僕らは嘲笑った。

 やはり姉の笑顔は最高だ。苦労した甲斐がある。

 

 [q.e.d]

 

  完

約21000文字、お疲れ様でした。

正直、「わけわかんねー」とか思われるだろうな、だとか思っています。はい。


まぁずきんさんも言ってる通り、主人公の名前は「張り詰めた糸」でもあり、『泰斗』は『tight(きつく、はりつめた)』のもじりでもあります。

被害者と加害者と主人公の姉はなんとなくで名づけました。他の人はずきんさんの言うとおりです。

またこんなエセミステリ書く予定なので、よろしくおねがいいたします。


ではまた。

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― 新着の感想 ―
[一言] 本文はいいのだが、漫画やドラマのタイトルにかぶっているのが・・・
[一言] 最初の前半がやっぱり苦手だね♪ 前の見せてくれた小説も前半がグダグダだったし作品の構成としては凄く面白いけど多分作者の事を充分理解してる人じゃないと面白くないと思う。 こう言う場で小説を…
2008/04/27 22:56 沸点プリ〜ン♪
[一言]  作品を拝見させて頂きました。  私も推理系の作品を書いています。興味深く読ませて頂きました。  文章についてですが、所々言い回しに違和感を感じました(例:無差別一家惨殺事件 → 一家無…
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