表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/10

誰もいない町

そこにあるはずで、それはいつもそこに、ここに当たり前に存在していた。自分がそうであるように。今日一度も見なかったものがある。今も見えないものがある。


人が一人もいない


車も通らない静かな大通りに一人鈴だけが立っている状況だ。

「っ!」

鈴は近くにある店に駆け込む。

いない。

いない。

いない。

「な…んの店かわからないけどとりあえず!」

しまいにはいかがわしい店、赤の他人の家に勝手にあがりこんでいた。どれだけ探そうと人っ子一人見つかりはしなかった。

それでも鈴は探し続けた。すがるように探した…


***


探し始めて2、30分。

結論から言えばなんの因果か知らないが私はこの世界に独り取り残されてしまったらしい。

いや取り残されたかどうかは知らないが…

で現在私はパニック状態に陥っている始末である。

「どうしようどうしよう、そうだまず警察に電話して…駄目だ誰もいないんだった…や、でも警察だけ無事って可能性も」


プルルルルル…ぷちっ、『現在この電話番号は…』


110かけてこの反応は新しいな!!

なんだろうこの大変な状況で脳内に『チーン…』という音が流れたぞおかしいな。

「そうだ、まず原因を考えようそうだそうしよう…う…うう」

駄目だ心当たりはあるが馬鹿馬鹿しすぎる。そんなわけが…

「昨日のノート…いやいやいやあり得ないあり得ないよ。なあに考えてるんだわたしぃ」

昨日のノートとは、昨日テキトーにネットで見つけたサイトに載っていたおまじないの様なものである。


略して『めっちゃ異世界行きたいノート』


「でも朝はあのノートきちんと布団の上にあったし…残る可能性は」

朝あのノートに変化はなかった。

そうか、でしょうね。あんなノートで人がいなくなるわけがない。

きっと昨日の夜何かがあったのだ。この街に、いやこの世界になにかが起こっている。

普通に考えればこうなるだろう、

「街や世界を、広範囲を変革する程の魔法…」

あるのだろうか?そんな魔法。とてもじゃないけど中学生の鈴には分かりかねる。いったい魔導師がどれだけ集まれば発動出来るのだろう。やはり考えもつかない。

「って今はなんでも良い!とにかく落ち着け落ち着け」

日光を浴びだらだらと汗を垂れ流す鈴。

やべー、やばぁい、とぶつくさ言う鈴の眼に映るものがあった。夏の太陽が反射するアスファルトの上。ゆらめく陽炎かげろうの中四本の脚で大地にうごめくもの。『ソイツ』がなにかは良く見えない、が鈴にはこの状況を好機と見た。なにせ人間がいない世界なのだからそれ以外の生物もまた然り、と思っていた。


自然に鈴の足は進んでいた。夏の暑さに脳が麻痺していた。この状況に思考が働かず焦りを感じていたのかもしれない。


迂闊うかつに手を出してはいけない。それがどれだけ近道でも魅力的であっても、だ。

まずは全てを疑うべきだ。


近づいてわかったことがいくつかある。まず『ソイツ』が『ソイツら』であること。

ソイツらは銀色に光り輝いていること。


ソイツらの正体が『狼』であること。


***


『狼』


ネコ目イヌ科イヌ属に属する哺乳動物。多種多様な亜種が存在する。狼という単語を聞くとカッコいいイメージが湧く。あくまでも個人的な感想である。


***


「いったいなんでこんなところに狼が!」

ますます訳がわからねー。もうやだ帰りたい。動物園から抜け出したのか?

だけど普通じゃない、この狼。毛の色が銀色、こんな種類の狼がいるなんて知らなかった。

なんて狼なんだろうと考えている余裕はない。ひとまずコイツらから離れないと…

狼の強靭そうなあごから大粒のヨダレが滴り落ちる。


(っう)


狼たちと私の距離およそ6メートル。

向こうは気づいていない。このままそこの商店街に入ろう。10メートル離れた辺りで一気にける。


「やった!このまま…」


ドスッ


何かにつまずく。これが石とか空き缶ならこんな鈍い音はしないだろう。


なんだろう今一瞬

『\(^o^)/』

こんな感じのが頭に思い浮かんだぞ。

おそるおそるでは無く一気にバッと振り向く。




『ガルルルル…』




でたでたこういう展開。

酷いことする世界だ。


躓いた獣はやたら銀色に輝く。

至近距離で眩しいんだっつの。



とても遅くなりました。ちなみに毛が銀色の狼がいるかは知りません。多分いないと思います。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ