新宿の狼
もう1つの作品と同時進行でいこうと思っています。
『魔法』
それは現代で当たり前になったエネルギー。
いつからかこの世界に存在していて気づけばそれは人間の一部となっていた。
それは多くの富をもたらし、
そして多くの争いをもたらした。
これは自身の正義を信じ戦った少年少女達の物語。
その序章である。
***
こんな場所に来るつもりはまるで無かったし、予想もしなかった。
何度も死にかけてギリギリ3日間身を守り、そしてコイツらを殺して生き延びた。そして今も…
「帰りたい…」
新宿-紀伊國屋書店前
少年は炎天の空の下、狼の風貌をした獣と対峙していた。
「ルガゥ!!」
雄叫びが響き、銀色の鬣が陽を浴びてギラギラと光り輝いている。その獣は鋭い牙を剥きだしにしてこちらへ襲い掛かってくる。
走って逃げようともきっとそのうち体力の限界が来て追いつかれてしまうだろう。コイツの嗅覚は鋭く、非常に利く。ならばここで倒す他ない。
「ふぅ…」
短く息を吐き、速まる鼓動を静める。
ジリジリジジジッ!
電気がショートしたような音、だが違う。
音と共に少年の雰囲気がふっと変わる。目付きは鋭くなり滲み出る狂気は迎い来る狼をも震い上がらせた。
「グルァ!?」
「今更逃げようったってそうは行かないよ、仲間を呼ばれたら面倒だし…悪いね」
少年は背中に担いでいた金属バットを抜き狼へと向けた。
振り上げた金属バットもまた陽を照り返し眩しく輝く。
バキッ!!
頭蓋の砕ける鈍い音が響き。狼はゆっくりと崩れ落ちた。
「暑い…」
それにしても酷い仕打ちだ。最近は災難が立て続けに起こっていて、やっと踏ん切り付いてきたところだったって言うのに…
「おっと、バットも折れちゃってる」
さっきの衝撃でバットは曲がってしまったようだ。こいつは何度も自分を救ってくれた相棒であり、ここで捨てるのは勿体ない上申し訳なく思えた。
少年は腕に魔力を集中させ腕力を増大させた。
「っふん!」
曲がってしまったバットを無理やり元に戻す。
悪いけどもうちょい付き合って貰うぞ相棒。
「それにしても、しんどいなぁこの世界は…」
その少年、『嘶木善華』は頭を掻きながら、狼の死体に背を向け歩き出す。
8月の異常な暑さの新宿の町には彼1人だけが歩いていた…。
今回は初投稿なので、少ないですがこれからはもっと長く一気に書こうと思います。投稿ペースはバラバラかもしれませんが…