朝凪と朝焼け
前作に続いて、お読みいただきありがとうございます。
あれから少しだけ時間の流れた主人公の、ふとした日常の一コマを切り取ってみました。相変わらずの拙い文章ではありますが、彼の心の内をそっと覗くような気持ちで読んでいただければ幸いです。
それでは、そのまま本編へどうぞ。
あの災害が起こってから何年経ったっけ……。
一人の部屋でそう振り返る僕がいた。
テレビからは騒がしいバラエティ番組の音が響く。
今日は金曜、あの日も同じ金曜だったっけな……。
君がいればどんなに幸せだったか……ずっと考えていた高校生活を振り返ると、あの頃は一つのことしか見えない、視野の狭いガキだったなと思い出す。
「金曜日かぁ……久々に徹夜でゲームでもしてみるか」と呟き、あの頃みたいにゲーム機のスイッチを入れる。隣に君がいる気がする……でも、振り向くとそこには夜の蒸し暑い風で揺れるカーテンだけだった。
「キツイなぁ……」とビールの缶をテーブルに置く。
そして、君の好きだったRPGゲームをする。
途中で寝ていたみたいだ。起きた時には朝の三時。さすがに疲れたのでシャワーを浴び、ベッドにもぐりこむ。
でも、眠れない。何かに取り憑かれたかのように、目が冴えているようだ。さすがにこれから酒を飲むと二日酔いになる。考えた末に、外を歩くことにした。
まだ日が昇る前の街を歩くなんて、何ヶ月ぶりだろう。光の無いビル、車がほぼいない車道、それは早朝散歩の特権だ。
さすがに叫ぶのは気が引けたから、一人で好きな曲の歌詞を呟いてみる。それは、僕が好きで、君も好きだった曲なのだ。
リズミカルなドラムに、ポップなギター、綺麗な歌声。あの頃の思い出の全てが蘇ってきた。
どのくらい歩いただろうか。とっくに二駅分くらい歩いていたようだ。手元の携帯電話を見ると、「四時十二分」。一時間近く歩いていたらしい。
そのうち、君のことを忘れられるくらいの新たな恋を見つけられるのか。はたまた過去という鎖に囚われ続けられるのか。
僕は、全ての行動を過去の鎖の「せい」にし続け、今日も生きていく。
こちらは、前回の続編のような感じです。
前作から時間が経ち、日常に戻ったようでいて、実は心の奥底でずっとあの夏に囚われたままの主人公を描いてみました。傷が癒えるわけではなく、痛みを抱えたまま大人になっていく姿を表現したくて、この早朝の散歩のシーンを思いつきました。
前作から続けて読んでくださった方に、主人公のその後の息遣いや切なさが少しでも伝わっていれば幸いです。
また気が向いたときに、ふと別の物語も書いていけたらなと思っています。その時は、またお付き合いいただけると嬉しいです。それでは、また。




