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魔神と呼ばれた元傭兵の辺境開拓スローライフ 〜裏切られて引退したおっさん。開拓してたら魔王軍と呼ばれていた〜  作者: 犬斗
第一章

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第3話 傭兵と魔竜1

「グゴォ」


 魔竜は俺を見つめながらウインクするのだが、凶悪な顔のため恐ろしさだけが引き立つ。


「グゴォ。グゴゴォ」


 俺に向かって何かを話している。

 しかし、何を喋っているのか分からない。

 魔竜の状態では、人間の言葉を発することができないようだ。


 もう一度旋風が起こると、さっきの青年が姿を現した。


「どうだ? これで分かっただろう」

「信じられんが……、信じるしかないようだな」


 魔竜が人化できるなんて初めて知った。

 それどころか、人化して人間の言葉を話すことも知らなかった。


「では、私にトウモロコシをよこせ」

「……まあいいけどよ。もう小鳥たちが全部食っちまったよ」

「なっ! ふ、ふざけるなっ!」


 魔竜の身体が震えると、大地が揺れた。


「じ、地震!」


 まさか、この魔竜の仕業なのか?

 俺は周囲を見渡した。

 揺れているのは、この畑周辺のみのようだ。


 魔竜は拳を握りながら俺を睨んでいる。


「私はな! 貴様が野菜を作っていたから、あえて見逃していたのだ!」

「み、見逃していただと?」


 ここは魔竜領。

 魔竜の縄張りだ。


 この魔竜は、やはり俺の存在に気づいていたようだ。

 こうなっては殺されてもおかしくはない。

 もちろん俺は抵抗するが。


 しかし、俺の野菜を楽しみにしていたような言いぶりだ。

 特に危険はないような気がする。


 俺はクレイモアを地面に突き刺した。


「お前、トウモロコシが食いたいのか?」

「そう言っておるだろうが!」


 魔竜が両手を握りながら怒鳴った。

 いちいち声がデカい。


「貴様がトウモロコシを収穫するまで待っていたのだ。食わせないと言うなら貴様を殺す」


 魔竜から殺気が溢れ出た。

 殺すという言葉は、冗談ではないだろう。

 だが、目的がトウモロコシであれば問題ない。

 畑のトウモロコシは、小鳥用に残していたものだ。


「まあ、そう凄むなって。昨日収穫した野菜がある。それを食おうぜ」

「収穫した野菜? トウモロコシ以外もあるのか?」

「ああ、もちろんだ」

「それも食わせてくれるのか?」

「当たり前さ。ここはお前の土地なんだろう? つまり、俺は貸してもらってるんだ。地主様はしっかりともてなすさ」

「話が分かるな、人間よ。それより、貴様は私が怖くないのか?」

「そりゃ怖いさ。だが、こうして会話できているし、俺の野菜が楽しみなんて言われちゃ無下にはできんよ。ははは」

「人間にしては、肝が座っておるな」

「まあ傭兵なんてやっていたからな。数々の修羅場を経験したよ。ははは」


 俺はバーベキューコンロを指差した。


「さて、野菜を持ってくるから、魔竜様はそこを片付けてくれ」

「私を働かせるだと?」

「ははは、働いた後の野菜は旨いぞー」

「むっ! それならやろうではないか!」


 こいつ、魔竜のくせに扱いやすいな。


「おい、人間。その剣はもう使わないのか?」


 地面に刺したクレイモアを指差す魔竜。


「お前が襲ってこなければな」

「貴様、気が強いにも程があるだろう。まあいい。あの納屋にしまえばいいのだな?」

「ああ、助かるよ。ところで魔竜様は食えないものとかあるのか?」

「む? 特にない。何でも食うぞ。だが今日はトウモロコシだ」

「はいはい、トウモロコシ含めて、おもてなしさせていただくよ。ははは」


 俺は家のキッチンへ向かった。


 ◇◇◇


 言いつけ通り、魔竜はクレイモアを片付けようと柄を握る。


「な、なんだこれは……」


 クレイモアを持ち上げようとするも、あまりの重量に地面から引き抜くことができない。


「バ、バカな」


 驚愕の表情を浮かべる魔竜。


「あの男、これを片手で軽々と持っていたぞ? どういうことだ? 人間ごときがこれを持てるのか……」


 魔竜はクレイモアを両手で握り、全身の力を使って引き抜く。

 ようやくクレイモアを持つことができた。


「くっ! 重すぎるぞ。やはり彼奴は魔人か。それにしても異常だがな」


 ◇◇◇


 籠に食材を入れて外に出ると、片付けが終わっていた。

 それどころか、薪に火までついている。


「火までつけてくれたのか。助かるよ」

「気にするな。野菜のためだ」

「そうか。では、お待ちかねのトウモロコシだ」


 俺は籠の野菜を見せた。


「おお! これだ! 私はこれを待っておったのだ!」

「たくさんあるから、好きなだけ食っていいぞ」

「なに! いいのか!」

「もちろん限度はあるぞ?」

「分かっておる。この姿であれば、食う量は人間と同じだ。安心しろ。わははは」


 念願の野菜を目の前にしたことで、魔竜の機嫌がいい。

 本当に単純な奴だ。


 俺は網の上にトウモロコシとジャガイモを並べた。

 人間と同じ量と言いつつも、この体格ならたくさん食うだろう。


 さらに、網の空いたスペースにフライパンを乗せ、バターを引き、厚く切ったベーコンを焼く。

 強火で焼くと香ばしさが出てたまらない。


 焼いている間にパンとチーズをスライスして、ちぎったレタスをパンに乗せる。

 フライパンから、脂が弾ける音が聞こえ始めた。


「熱っ!」


 フライパンを覗いていた魔竜の顔に、脂が跳ねたようだ。


「ははは、顔を近づけすぎだ」

「つ、つい珍しくてな」

「魔竜でも熱がるのか?」

「当たり前だ。魔竜が人化すると弱体化するからな。力だって魔()と同じくらいまで落ちるのだ」

「魔()? お前も魔神と呼ばれているのか?」

「呼ばれている? 違うぞ。種族の話だ」

「なるほどね」


 種族?

 言っている意味が分からないが、どうせ大したことはないだろう。

 俺は適当に相槌を打った。


「そんなことより、ベーコンちゃんだよ」


 俺はベーコンを裏返した。

 程よく焼色がついている。


 裏面もしっかり焼いてから、ベーコンをフライパンから取り出した。

 ベーコンから滴るバターをそのままに、パンに乗せたレタスの上に置き、チーズを重ねてパンで挟む。

 それを真ん中から二等分に切れば、二人分のベーコンと野菜のチーズサンドの完成だ。


 片方を皿に乗せ、魔竜に手渡した。


「何だ、これは?」

「ベーコンと野菜のチーズサンドだ。まあ食ってみろって」


 恐る恐るサンドを口に運ぶ魔竜。

 すると、魔竜の動きが止まった。


「な、何だこれはぁぁぁぁ!」


 絶叫する魔竜。

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