第15話 神代の召喚士
焚き火のそばで、三人の間に静寂が訪れる。
ルーナの拗ねた不機嫌な顔とルージュの無表情な横顔。
そして、その間に挟まれたガルド。
彼はまだ、ルージュが放った言葉の重みから抜け出せずにいた。
『我らの存在意義は、主の命の下に存在する他ない』
その絶対的な忠誠が、ガルドには理解できなかった。
なぜ、この圧倒的な力を持つ存在は自分という『無能』に、そこまで絶対の忠誠を誓うのか。
そんな彼の戸惑いを感じ取ったかのように、それまで黙っていたルージュが口を開く。
彼の声は静かで、しかし、どこか深い知識に裏打ちされた響きを帯びていた。
「ガルド様は、ご自身の魔力が『無能』であると認識されているようですが、それは違います」
ルージュは、ガルドのほうへゆっくりと顔を向けた。
その紅い瞳は、焚き火の炎を受けて、かすかに揺らめいているように見える。
「あなた様の魔力は、この世界の魔法体系では測定できない特殊なものです……故に、王都の魔導士たちはそれを理解できず、無価値だと判断したに過ぎません」
その言葉を聞いて、思わずガルドは息をのんだ。
自分を無能と断じた、あの屈辱の日々――その根拠が、ただの『測定不能』だったと?
「特殊な魔力……一体、どういうことなんだ?」
ルーナは、ムッとした顔のまま、ルージュに不満げな視線を向けた。
「お兄ちゃん、そんな難しい話、急に……」
しかし、ルージュはルーナの言葉を静かに制した。
「いいえ、ルーナ。これは、主にとって知るべき真実です。ガルド様の魔力は、特定の属性や破壊力に特化したものではありません。それは、太古の神代にのみ存在したと語られる『特殊波長』の魔力……『契約』に、特化した魔力なのです」
契約に、特化?
ガルドの脳裏に、勇者パーティーで幾度となく失敗を繰り返した日々が蘇った。
どんなに頑張っても、高位の精霊や魔獣を召喚することはできなかった。
「それが、なぜ俺の魔力が……」
ルージュは、静かに言葉を続ける。
「我ら魔王は、世界の理から外れた存在。通常の召喚術では決して呼び出されることはありませんでした。しかし、ガルド様の持つその特殊な魔力が私たちの封印に干渉し、強制的に、この世界に呼び戻したのです」
ルーナが、ガルドの腕をぎゅっと掴んだ。
「だから、ご主人様なんです。私と、お兄ちゃんを、呼んでくれたのは……この世界で、ご主人様だけなんですよ?」
ルーナの言葉に、ルージュは静かにうなずく。
「その通りです。ガルド様は、無能などではありません。ただ、ご自身が持つ力がその力を正しく行使できる『場所』と『対象』を知らなかっただけ。貴殿の魔力は、破壊や創造の力ではなく私たちのような世界の理の外にある存在と、絶対的な絆を結ぶための、唯一無二の鍵だったのです」
ルージュの言葉を聞いて、ガルドは言葉を失った。
無能だと罵られた日々がある、そのすべてがこの瞬間に覆された。
自分は、間違ってなんかいなかった。
ただ、正しい場所にいなかっただけ。
正しい相手に出会えていなかっただけなのだ。
ガルドは、自分の手のひらをじっと見つめる。
この手は、勇者パーティーでは役に立たなかった。
けれど、この手があったからこそ、ルーナとルージュというかけがえのない存在と出会うことができた。
温かいような、冷たいような、複雑な感情が胸に広がる。
ルージュが、そんなガルドの心情を察したように、淡々と語りかけた。
「……ガルド様。僕は、あなた様の忠実なる剣であり、盾となることを誓います。ルーナと共に、貴殿の道を示す光となりましょう。貴殿が、この世界で最も偉大な召喚士となるその日まで」
その言葉は、まるで揺るぎない予言のようだった
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