89.永遠を誓った日
1ヶ月後――
守華と蘭明は、赤い衣装に身を包み、特別な一日を迎えていた。
守華の頭には赤いベールが柔らかくかかり、拍手に包まれながら蘭明の手を握る。
胸の奥は緊張と喜びでいっぱいだった。
そう、今日は守華と蘭明の結婚式――二人の心が永遠に結ばれる日。
以前は二人の誕生日に式を挙げようと思っていたが、血の約束を交わすなら、一刻も早く――そう心に決め、屋敷で静かに、しかし心から温かい式を行った。
親しい人々だけに見守られ、祝福と柔らかな陽光に包まれる。
そして、式と共に行われる“血の約束”。
巫女の村から運ばれた清めの水を前に、互いの指に針を刺し、一滴ずつ血を垂らす。
「本当にいいのじゃな?これを飲むと、お互い離れられなくなるぞ」
呂布の真剣な眼差しを見つめながら、守華と蘭明は互いを見つめ返す。
迷いは一切ない。
「はい」
二人は水を飲み干す。
その瞬間、まるで世界が二人だけのために静止したかのように感じられた。
離れることなんて、もう考えられない――
ずっと一緒にいることを、心から望んだから。
「私の名前は、“守まもる華はな”と書いて守華。私は蘭という花を守る宿命なの」
「枯れないように、ずっと隣にいてくれ」
赤い衣装が陽光に映え、柔らかな光に祝福されながら、二人はゆっくりと手を取り合った。
この世界に来てからの3年半――
あらゆる試練を経て、ようやく守華は心から愛する人と共に歩き始めることができた。
胸に広がるのは、言葉にできない幸福と、未来への希望。
式を終え、部屋の中で蘭明を待つ守華。
待っている時間は、やはり心臓が早鐘のように鳴る。
少し緊張している自分に、くすぐったいような笑みがこぼれる。
やがて蘭明が静かに入ってきて、守華のベールをそっと外す。
そして、柔らかく手を差し出すように促した。
守華は言われた通りに右手を差し出すと、蘭明はそこに手作りのミサンガを結んでくれた。
「蘭明、これ…作ったの?」
「うん、小心に作り方を教わりながらな」
守華の胸にじんわりと温かさが広がる。
「嬉しい…」
「指輪とかの方が良かったんじゃないか?」
「ううん、蘭明の手作りミサンガが一番嬉しい」
そう言うと、守華は思わず蘭明に抱きつき、唇を重ねる。
「私からキスしたかったのに…」
次の瞬間、蘭明が守華を優しく抱き寄せ、今度は蘭明から口づけを返す。
そのまま、守華は蘭明に優しく抱き上げられ、ベッドに横たえられた。
「願いごとは?」
「もちろん…死ぬまで蘭明と、そして来世でもずっとずっと一緒にいられるように」
夜の静けさの中、二人は互いの唇を求め合い、激しく、しかし深く愛を交わす。
蘭明は守華の首筋に優しく、そして熱を帯びたキスを重ねる。
「この匂いはもう俺のものだな」
「蘭明の匂いは、私のものよ」
窓から差し込む月明かりが二人を柔らかく照らす。
絡み合う体、重なる呼吸、指先から伝わる温もり。夜の闇は二人だけの世界を包み込み、時間はゆっくりと溶けていく。
やがて呼吸が落ち着き、互いの額を重ねながら、二人は静かに笑みを交わす。
「ずっと、こうしていられるね」
「うん、ずっと…」
月の光に照らされた二人の影が寄り添う夜。
この瞬間、守華と蘭明は、誰にも邪魔されない、永遠の安らぎと愛を手に入れたのだった。
それからの日々は、本当に穏やかで幸せに満ちていた。
ウタとは文のやり取りを続けていた。
「怒ってるかな…?」と少し心配したけれど、ウタは全く怒っておらず、何となく分かっていた、と.....子どものくせに…と思うけれど、それは私の勝手な思い込みだった。
今でもウタは季昭のもとでお世話になりながら、舞の稽古に励んでいるらしい。
季昭は相変わらず遠征が多く、忙しい日々を送っているとか......
私はというと、ずっと蘭明と一緒にいたくて、侍衛として側に置いてもらえるようお願いしたけれど、「寿命が縮むから」と言われ、大人しくしていた。
とはいえ、じっとしているのはやっぱり性に合わず、近くの子どもたちに舞を教える教室を開き、日々の楽しみとした。
夜には、月明かりに照らされながら蘭明と肩を並べ、静かに庭を歩くこともあった。
その温かさ、柔らかな風、互いに寄せる笑顔。
この幸せがずっと続くと、このときは心の底から思っていた――。




