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守る華・守られる花  作者: ミシル
第一章 蘭

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54/113

54.敵の手中へ

今もまだ、貴愛奈の部屋を借りている。

部屋を行ったり来たりしながら、まだ痛む傷を押さえて頭の中を整理しようとする。


もし、あの伝説の話が本当なら――

妖石のことを知っていて、

私のアザのことも知っている者。

そして、誰よりも欲望を抱く者。


誰……一体、誰なんだ?


やっぱり、皇后……?

星曜を次の皇帝にしようとして、私のことも嫌っているはず。

でも、アザのことまで知っているだろうか……。


いや、あのとき、ムチで叩かれた時に服が破れて見た……?

でも、そうなら、貴愛奈と蘭明を結婚させる必要なんてないはず。


じゃあ、陛下……?

陽月国をもっと広げたいと考えているなら。

前皇后の力も把握しているはずだ。

でも、アザは……どうして知り得た?

舞のときも、腰はきちんとカバーしていた。私のアザを知るはずがない。


あとは……海尭か……。

海尭が伝説の話を知っている可能性もある。

私を皇后から救い出したとき、手当してくれたはず。

そのとき、腰のアザも目にしているはずだ。

でも、海尭は何も聞かない。アザの意味を理解しているから?


しかし、海尭の欲望は何だ?

兄弟仲良く見えて、実は時期皇帝の座を狙っている……なんてことがあるのか?

いや、そんなこと考えたくない……。


頭を振る守華。

誰だ、誰が私を狙うんだ。

妖石も持っていると思われているはず……

だったら、こっちから動くしかないのか……。


貴愛奈の部屋には、宝石が置かれていた。

妖石――そんなもの、誰も見たことはないはずだ。


ならば……

貴愛奈の宝石を手に取るしかない。


___ガシャガシャ


これだ、これでいい。

透明の中に光を宿し、まるでダイヤモンドのように輝く石。


近くにあった小さな巾着にそっと入れ、自分の腰に隠す。

貴愛奈に泥棒だと思われるのも嫌だ。だから、一言断っておこう……。


貴愛奈は「もっともらって」と笑ったけれど、守華は「気持ちだけいただきます」と返し、そそくさと部屋を後にした。

きっと貴愛奈は、自分の怪我のお詫びとしてくれたのだろう。


(これで私が妖石を持っていることが知られれば、必ず現れるはずだ。私を狙う者が……。)


部屋を出て間もなく、守華の目の前に矢文が届いた。

周囲を警戒しながら見渡すが、誰もいない。

すぐに矢から文を外し、中身を確認する。


――――――――――――――――

おまえのアザについて話がある。

子の刻にこの地図の場所で待っている。

――――――――――――――――


これだけ……?


あっちから送られてきたなら、行くしかない。

もちろん、蘭明に知られたらタダではすまなそうだけど......だが、運よく当分帰ってこないし、誰にもバレないはずだ。


貴愛奈には、「傷が痛むからゆっくり休みたいので、部屋には誰も入れないで」と頼めばいい。

そうすれば、誰にも知られずに行ける。


分かっている。罠かもしれない。

でも、ここでじっとしていても仕方ない。

騙されたふりをして、私を狙う犯人をこの目で確かめてみせる!


まだ傷は完治していない。安静にしろと言われていたけれど……

もう、自分で解決するしかない。


塀を越えるくらい、もう朝飯前よ。

……でも、傷口がズキズキ痛む。

本調子じゃない体を無理やり動かしている自分に、苛立ちすら覚える。


夜道には誰もいない。

頼れるのは手に持った提灯のかすかな光だけ。

風に揺れる影が、まるで獲物を狙う何かの目のように思えて、背筋が凍る。


フリーダムのいる厩舎にそっと近づく。

声をひそめてフリーダムを呼ぶと、すぐに気づいたフリーダムが耳をピクピクさせる。

守華はフリーダムと共に地図に示された場所へ向かう。


その場所――前に来たことがある蘭明の母、前皇后のお墓。

夜の闇に包まれ、周囲の地形すら確認できないまま、守華は足を進める。


「蘭明のお母さんのお墓……やっぱり蘭明のお母さんの力と私のアザに関係が……?」

胸の奥でざわつく疑念を押さえつつ、守華は提灯を握りしめ進む。


フリーダムを木に繋ぎ、少しの間待っててねと声をかけ、守華は提灯を手にお墓の中へと進む。

夜の墓地は、静けさと不気味さが入り混じる。

足音を消すたび、影が自分を取り囲むような錯覚に襲われる。


やがて、月明かりに照らされた蘭明の母の墓が目の前に現れた。


背後の気配にまったく気づかないまま、守華は墓の前にしゃがみ込み、目を閉じて手を合わせる。


耳元に風の音だけが届く。

だがその静けさが、逆に不気味で、胸の鼓動は早まるばかり。


――ガサッ


背後から小さな物音。

守華が振り返ろうとした瞬間、何かで頭を打たれ、意識が闇に飲まれていった。


目を覚ました守華は、痛む体をゆっくりと起こした。

「誰か……私を……?」

まだ、周りに誰かいるのだろうか――不安が胸を締めつける。


立ち上がり、辺りを見回すと――お墓の中は荒らされ、宝石や金銀が散乱していた。

腰につけていた偽の妖石に手をやる。幸い、取られておらず、無事に腰に残っている。


「妖石目当てじゃない……の?」

心の中で疑問が浮かぶ。だが、考えている余裕はない。

悪い予感が全身を駆け巡り、守華は急いで出口へと向かった。


――その瞬間だった。


「ここで何をしている」


出口の先には、整列した何十人もの兵が立っていた。

その中の一人が、守華の目の前にゆっくりと歩み寄り、立ちはだかる。


守華は状況を理解できず、言葉が出ない。


「この女を捕らえろ。お前たちは中を確認してこい」


「はっ!」


気づくと、二人の兵に両腕をがっちりと掴まれ、守華は身動きが取れなくなっていた。

焦燥と恐怖が胸を締めつける――どうして......


ひざまずかされている守華の右腕からは、赤い血がじんわり滲んでいた。

力強く押さえつけられたせいで、傷口が再び開いてしまったのだ。


中の様子を確認していた兵が、慌てて走って戻ってくる。


「韓将軍、中が荒らされています」


韓将軍――?この人か。

陛下直々の兵を束ねるという、韓将軍。名前は聞いたことがあったが、会ったことはない。いや、祝賀会で舞を見ていたはずだから、私のことを知っていてもおかしくはない。


――それにしても、陛下直属の兵がどうしてここに?

この場所を知っている者は、限られているはずなのに。


韓将軍はひざまずく守華を見下ろし、鋭い声を放った。


「もう一度聞く。中で何をしていた」


「何も……していません。ただ呼び出されて、誰かに気絶させられて……気づいたら、こんな状態で」


「呼び出し?誰にだ?ここを知っている者は限られているんだぞ」


「じゃあ、その限られた人の誰かが、私を呼んだのよ」


「苦し紛れの言い訳だな。もういい、証拠もある。連れていけ」


「証拠って何よ!見せなさいよ!」


「荒らされた中から出てきたのを、ここにいる兵全員が見ていた。そして、お前の袖の中に宝石が入っている。重みで垂れているのですぐ分かる」


「え……?」


「ちょっと離せ!」


掴まれた手を振り払い、袖の中に手を突っ込む守華。すると、身に覚えのない宝石がいくつも出てきた。


「何……これ……違う!私は何も盗んでない!荒らしてもいない!」


「話はあとで聞く。連れて行け」


「はっ!」


「痛いわねー!自分で歩けるから離して」


そう言っても聞き入れてはもらえず、再び開いた右腕の傷はジンジンと痛む。


こうして、守華は二度目の牢屋へと入れられた。

蘭明のあの地下牢よりは、まだ小窓があって少しだけマシに感じたが――心の焦燥は変わらなかった。

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