30.年下の小悪魔、蘭皇翻弄!
毒蛇のときのあれも、昨日のあれも…。
いや、毒蛇のときはキスじゃない、毒を吸い出しただけ。
でも昨日のは……完全に、キス、だったよね?
普段どおりに接しているつもりなのに、思い出すと胸がザワザワして落ち着かない。
女子って、キスされたらこんなにも意識しちゃうものなの?
「はぁ~~~~」
机に突っ伏したままため息をつく守華に、横から小心がのぞきこむ。
「フリーダムが来てから、ため息ばかりですね、守華さま」
守華は机に頬をのせたまま、じとっと小心を見上げる。
「いや、フリーダムは関係ないの。ただね……」
「なにかあったんですか?」
琉璃も心配そうに肩に手を添えてくる。
「い、いや! なんでもないのよ!」
慌てて立ち上がり、顔をそむける守華。
このままじゃ気持ちが整理できない――。
「よし! 琉璃、稽古しよう!」
考えるよりも、動く!
守華は自分にそう言い聞かせるように稽古場へ向かった。
そのころ、夏翠が星曜から聞き出した“蘭明の守華への気持ち”を確かめに、蘭明のもとへ現れた。
「蘭皇、早く来てー!」
小さな手で蘭明の手をぎゅっと掴み、ぐいぐい引っ張る。
「えっ、ちょ、ちょっと夏翠、何を…?」
「いいの!大人の蘭皇には私がリードしてあげるんだから!」
周囲をキョロキョロ見渡す夏翠。蘭明は困惑顔。
「一体どこに連れて行くつもりなんだ…?」
「いた!」
夏翠が立ち止まり、小さな体をめいっぱい使って蘭明にベタベタ絡む。
「夏翠、何をする!!」
「ここは私に合わせなさいってば!」
ウィンクまで決めて、すっかり年下の小悪魔モード。
「蘭皇、まだ結婚しないの? それなら私がもらっちゃうから〜!」
チラッと守華を見てニヤリ。
守華は稽古に夢中で、完全無視。
「守華さま、夏翠公主がおみえです」
小心が報告しても、守華はチラッと一瞥しただけ。
「久々に来られましたね」
守華のクールさに、年下の夏翠、さらにムッ!
「どうなの、蘭皇? 私に夢中でしょ?」
「兄弟愛って素晴らしいですね、琉璃。さあ続けましょう」
守華は涼しい顔で稽古を続行。夏翠の怒りゲージ急上昇!
「蘭皇、甘い言葉でもひとつ言ってみてよ!」
小声でせがむ夏翠に、蘭明はうんうんと頷き、そっと手を添える。
「夏翠、私と一緒になると寝不足になるぞ。それでもいいのか?」
「もちろん喜んで!」
守華は流し目で二人をチラリと見て、涼しい顔で稽古場を去る。
「戦無敗の蘭皇でも、守華には勝てないのね〜」
小さな体で頭を振り、手を振りながら帰っていく夏翠。
残された蘭明、ぽかーん。
大人なのに年下に翻弄される姿が、なんともコミカル。




