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守る華・守られる花  作者: ミシル
第一章 蘭

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16.迎えに行く勇気と、優しさの錯覚

「蘭皇、守華さまをお迎えに行きましょうか…?」

白鋭は恐る恐る口を開いた。


守華が海尭の屋敷に連れて行かれてから、もう二日が過ぎていた。

蘭明は落ち着かず、少し苛立ちを隠せない様子だ。


「迎えになんて行かん。」

「でも、蘭皇、そんなに寝てないですよね?そんなに心配なら…」

「心配!?誰のことを心配すると言うんだ?」

「守華さまを…」

「あんな女を!?この私が?自業自得だろう。心配なんてしておらん。」


白鋭が小さな声でボソッと独り言を漏らす。

「本当は海皇のところにいて、心配で仕方ないくせに…」


蘭明は白鋭を鋭く睨む。

あっと気づいた白鋭は、慌てて視線を下に落とした。


「でも、蘭皇。このまま守華さまが海皇の屋敷に居座ってしまうかもしれませんよ?」

蘭明の眉がピクリと動く。


「それに、小心も、自分のせいだと昨日からずっと泣きっぱなしです。小心を助けると思って…」

白鋭の言葉に、蘭明はしばし考え込む。


「…迎えに行くぞ。」

「はい。」

白鋭はにっこり笑い、蘭明の後を追った。


だが、いきなり蘭明が立ち止まったため、勢いよく白鋭が背中にぶつかる。

「痛っ!」

白鋭は一歩後ろに下がった。


振り返り、白鋭を指差す蘭明。

「小心のために行くんだからな。」

「はい、わかっております。」

白鋭はまた笑みを浮かべる。


蘭明は足早に先を急ぎ、八軒と白鋭は必死に追いかける。

雨上がりの濡れた石畳を踏みしめながら、三人は守華のいる場所へと向かっていった。


「蘭皇がお越しになられました。」


海尭の部屋に、蘭明が静かに足を踏み入れる。


「海皇、守華がお手数をおかけしたようで、ありがとうございます。」

「いいんだよ。昨日は熱を出していたが、今朝には下がった。ただ、背中の傷はかなりひどくて…」

「守華は今、どこに?」

「蘭明を、守華のところへ案内しなさい。」

「はい。」


海尭に仕える者が、守華のいる部屋へ案内する。

部屋の中、守華はベッドに座り、手近にあったお菓子をつまんでいた。


「二日で元気になるなんて、さすが丈夫な体ね。」

自画自賛のつぶやきをしていると、どこからか聞こえてくる気配。


この嫌な予感は――

蘭明だ!!


慌てて食べかけのお菓子を皿に戻し、布団を体にかけて寝たふりをする守華。


「守華さまはこちらでございます。」


扉が開き、蘭明と八軒、白鋭が入ってきた。

八軒と白鋭は入り口で立ち止まり、蘭明だけがベッドまで近づく。


蘭明の目が、食べかけのお菓子に止まる。

布団で顔を隠している守華の布団をそっとめくると、口の周りにお菓子のカスをつけたまま寝ている守華の姿があった。


「勝利の女神さまとは、寝ながらでも食べられるものか。」

そう言うと、蘭明は口元のカスを指でそっと拭った。


その動作に反応し、守華はつい目を開けてしまう。


「ちょうど起きたようだな。」

不敵に笑う蘭明の顔に、守華は一瞬ドキリとする。


「はぁーい。」

元気よく手を上げる守華の声に、蘭明はわずかに目を細める。


「お菓子を食べていたのか。」

「え、あ…ちょっとだけ…」

言い訳する守華の頬が、ほんのり赤く染まる。


「お前は、どんなときも元気すぎるな。」


「元気すぎるって…褒め言葉ですよね?」

守華は少し照れくさそうに笑い、布団の中で身を縮める。


蘭明は微かに口角を上げ、すっと守華に近づく。

「無事でよかった。昨日のことは…驚いたぞ。」

守華の背中に残る傷を、そっと視線で追いながら言うその声には、ただの安堵以上の感情が混じっている。


守華は一瞬息をのむ。

「蘭明…」

思わず小さな声が漏れる。


「無事なら、それでいい。」

蘭明は優しく微笑んだ。


いつもと違う雰囲気の蘭明に戸惑いながらも布団の中で小さく頷く守華。

背中の痛みも、あの恐怖も、一瞬だけ遠くに感じられ、胸の奥にほんのり温かいものが広がっていた――のも束の間だった。


「帰るぞ。」

布団をバサッとめくられた。


目の前に現れたのは、いつもの悪魔のような蘭明。

優しいわけないか――いや、ちょっとだけドキッとした自分がバカみたい。

布団をめくられた瞬間、その錯覚は音もなく吹き飛んだ。


「あ、いたたたた…まだ、痛くて歩けないみたい。もう1日だけ海尭にお世話になるよ」

守華は背中を蘭明のほうに向け、寝たふりを装う。


「きゃっ!」

蘭明が守華を抱き上げると、守華は思わず暴れて声を上げる。


「降ろしなさいよ!」

「痛っ…」

「暴れると傷口が広がるぞ。」


渋々、大人しくなる守華。蘭明は肩に少し力を入れ、背中を気遣いながら歩く。


そのとき、海尭が走ってきた。

「守華、大丈夫か?まだ、休んでていいんだよ」


「いや、私もそうしたいんだけど…」

蘭明の視線がピシリと海尭を射る。


「ほら、小心も心配してるみたいだから。海尭、本当にありがとう。また改めてお礼にくるね。」

守華は小さく会釈し、抱えられたまま海尭の屋敷を後にする。


蘭明の屋敷までの道のり、二人は沈黙のままだった。

桜音亭に着くと、守華はそのままベッドに落とされ、

「薬を塗るから脱げ。」

「えっ!?」

「自分で背中は塗れないだろう。」


守華は少し照れくさそうに、「小心に塗ってもらうから大丈夫よ」と答えたが


「今、小心は外にでているからいない。少しでも早く塗ったほうが傷は残らないと思うが・・・まぁ、傷が残ってもいいなら好きにしろ」


薬を守華にわたし、立ち去ろうとする。

傷が残るのは嫌。

お洒落な服が着れなくなっちゃうもん。。。


「待って。」

蘭明を引き止める。


前を押さえて服を少しずつ脱ぐ。痣が見えないよう、腰はスカートで隠していた。


「いいわよ。」

蘭明に声をかけ、蘭明はゆっくりと背中に薬を塗っていく。

「痛っ」

「あっ、すまん。」

予想以上の傷の深さに、蘭明も息をのむ。


「罰が下る前に助けてあげられなくて悪かったな。」

小さな声だったが、守華にはちゃんと届く。やっぱりさっきといい、いつもと違う蘭明の優しさに、守華は少し戸惑う。


「小心から話は聞いた。私に言えばよかったのに。」

「たしかに…」


「私という存在すらなかったか。もしくは、頼りにならないか」

「そんなことないよ!ただ、あの時、カーッとなっちゃって乗り込むしか頭になくて・・・」


「一応、守華も私の屋敷に住む者だ。ここに住む以上、私が守ってやる。今度からは一人で行動せず、ちゃんと私を頼れ。」


今、私のことおまえじゃなく名前で....

でも、守華は少し疑いの目を向ける。

「なんだ、その信用ない目は…そんなに頼りないか私は。」


「私を地下牢に入れたり、塀に置き去りにした人ですからねー」


蘭明は何も言い返さなかった。

蘭明の手が顔に触れようと伸びる。二人の目が合い、時間が一瞬止まった。


「守華さまーーーー!」

勢いよく部屋に飛び込んできた小心の声と同時に、蘭明の手が守華のおでこを軽く押す。守華はベッドに倒れ込む。


「ちょっと痛いじゃない!」

蘭明はそそくさと部屋を後にする。


駆け寄る小心に守華は微笑む。

「私の体は小心の何倍も強いから大丈夫よ。」

「でも、もう無茶はやめてください。」

「私は小心を守りたいの。だって小心は何も分からない私を信じてずっと隣にいてくれてるもの…安心して。ね?」


守華に抱きつき、泣きながら叫ぶ小心。

「もう、小心は泣き虫ね。」



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