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守る華・守られる花  作者: ミシル
第三章 サザンクロス

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100/113

100.すずらん現代に舞う

会場を仕切る田中さん。

コラボ商品ということもあり、多くのメディアが詰めかけていた。


「守華!」


慌ただしく動き回っていると、聞き覚えのある声。


「悠真!」


悠真が走って私のところに駆け寄ってくる。


「なんでここに?」

「守華こそ」

「えっ?私、サザンクロスの社員だからよ」

「サザンクロスだったのか!?花関係の会社って聞いてたけど、まさかサザンクロスとは思わなかった」


「あれ?そうだったっけ?悠真は?」

「俺も仕事だよ。アシスタントだけど、コラボ商品の撮影だ」

「撮影?」

「そう、もしかしたらうちの子会社の雑誌に載るかもな」


「神崎!」

「はい」


振り向くと、そこにはボスがいた。


「本当、俺と話してると守華のボスが邪魔してくるな」

「ハハハ」

「じゃあ、俺はいくよ。頑張れよ、守華」

「ありがとうー」


悠真に手を振っていると、いつの間にかボスが隣に立っていた。


「神崎はあの男と仲がいいんだな」

「大学のとき、いつも一緒でしたから」

「ふ〜ん」

「えっ!もしかしてボス、嫉妬してます?」

「んなわけあるか。それより、モデルは来たのか?」

「あっ、まだでした。そろそろ来ないとヤバいですね」


「ボス!大変です!」


デザイン部の社員が慌てて駆け込んできた。


「モデルが熱を出して、急遽来られないと連絡がありました」

「えー!?今?」


思わず声が大きくなる。


「中村社長!」


莉子さんも息を切らしてやってきた。

別れてからも、この二人は仕事中は「社長」と呼び合う決まりになっている。

社員たちも、その呼び方で二人の関係を察していた。


「……あー、今聞いたところだ」

「どうしよう。モデルが来られないなんて、今さら変更もできないし、メディアはすでに会場入りしてる」


空気が一気に重くなる。

このままでは、今までの努力が水の泡。

今日、どれだけメディアに告知できるかが、すべてなのに――。


「ボス!」

「なんだ、神崎?」

「私が代理でやります」

「何をだ?」

「モデルです!」


ボスをはじめ、莉子さんや社員たちが驚きの目で私を見つめる。


「神崎が?本当にできるのか?」

「はい!ずっとモデルの練習に付き合ってきました。踊りも、動きも、全部覚えています」

「大丈夫なのか?」

「はい!ボス、私を信じてください」


真剣な眼差しでボスを見つめる。


「……分かった。よし、モデルは神崎に任せる。急いで準備を手伝え」

「「はい!」」


私は急いで化粧室へ駆け込み、準備を始める。

絶対に、ボスのために、この場を成功させてみせる――。


「それでは、ただいまより株式会社サザンクロスと株式会社Reのコラボ商品発表会を始めます」


会場が暗くなり、プロモーションビデオが流れ始める。


映像が終わると、ステージ中央に守華が現れた。


赤い着物にすずらんの刺繍。大きなリボンの帯が煌めき、花魁のように少し着崩したその姿は、上品さと色気を兼ね備えている。ステージのライトに反射し、刺繍がまるで光を纏ったかのように輝いた。誰をも虜にしてしまうすずらんは、健在だった。


ステージ上で赤いシャドウ、赤いライナー、赤い口紅をつけると、まさにあの彩国踊り手ナンバー1、“すずらん”が完成していく。


背後からライトが照らされ、守華は扇子で顔を隠しながら優雅に歩を進める。まだ顔ははっきりと見えない。しかしその姿に、会場全体が息を呑む。


中央ステージに到着すると音楽が変わり舞を披露。扇子を外した瞬間、メディアのフラッシュが一斉に光る。あまりの美しさに、誰もが固まった。今ここにいるのは、本当にあの神崎守華なのか――疑いたくなるほどだ。


その瞬間、守華を見つめるボスの蓮も、視線を奪われたまま動けなくなる。扇子を外した守華が蓮を見た瞬間、心が締め付けられるように苦しくなり、香り袋のときと同じように頭を痛ませる。それでも蓮は、守華から目を離さず、静かに見守った。



ステージからバックヤードに戻った途端、空気が一気に華やいだ。

まだ舞台の光をまとったままの私に、社員たちが次々と駆け寄ってくる。


「神崎さん、すごかった!」

「トップモデルかと思った」

「綺麗すぎて、目が離せなかったよ」


熱気を帯びた声に囲まれ、まるでまだスポットライトの中に立っているような錯覚さえ覚える。


「神崎、お疲れ!危うく惚れるところだったぞ」


田中さんの冗談に、思わず笑って返した。

「もう、やめてくださいよ田中さん。そんな言葉じゃ落ちませんから」

「ははは、やっぱり神崎には通じないか」


そこへ、落ち着いた声が響く。

「神崎さん」


振り返ると、莉子さんとボスが立っていた。

「今回は助かったわ。ありがとう」

「いえ。ボスのためにやったことですから」

「……悔しいけど、私も助けられたわ」


普段は敵意のこもった目でしか見てこなかった莉子さんが、素直に頭を下げる。

その光景に、少し胸が熱くなった。

彼女はすぐに視線を逸らし、去っていった。


「神崎、よくやったな」

「ボス、私を信じて正解でしたよね?」

「そうだな。……ところで神崎、お前どこかで踊りをやってたのか?」

「やってたといえばやってたし、やってないといえばやってないし……」

「また訳のわからんことを」


ふんっと鼻で笑うボス。


「守華ーー!」

「悠真!」


舞台の余韻を壊すように、悠真が駆け寄ってくる。

「めっちゃ綺麗だったよ。似合いすぎ!これ、絶対モデル事務所から声かかるって」

「私がモデルなら、世の中みんなモデルだよ」

「でも本当に皆、守華に見惚れてた。絶対ファンになる人が出てくる!それに、明日にはテレビでも流れるんだし」


その言葉に、胸の奥で小さく震える。――本当に、私があの舞台で輝いていた?


「ここは関係者以外立入禁止だ」


私と悠真の間に割って入ったのは、もちろんボス。

「守華の友達ですけど」


悠真の眼差しには、はっきりと敵意が滲んでいた。


「あー、もう着替えないと。悠真も仲間が待ってるでしょ?そろそろ行きなよ。じゃあね!」


明るく振る舞いながら彼を押し出す。


「ボスも行きましょう。ずっとこの着物はさすがに辛いです」


ボスは不機嫌そうな顔をしながらも、私の腕を取られるがままに控室へ向かった。


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